はじまりのはじまり
橘 賢 Ken Tachibana
第1話
昔からボクは
気がついたら
ボクは
「夕やけ、小やけの・・・」
ボクはなにを
「ケンちゃん、大きく息を吸って!」
宮本先生の声に合わせて
「終わり良ければすべて良し、大成功よ!」
喜んだ母がハンバーグステーキをご
ところが高校2年の春、心理状態が
「おっはよう!」
朝一番、吉野桃子に声をかけられた次の瞬間、ボクの顔が真っ赤になり、全身の筋肉がフリーズ状態、
「片思いの恋わずらい、
友人
「このままだと行き着く先はストーカーか?ストーカーは犯罪だぞ。」
ボクは、はるか遠くから吉野桃子の姿を眺め、彼女への想いを
「桃ちゃん、桃ちゃん!」
岡田が吉野桃子を呼ぶと、続いてどっと笑い声があがる。人気者の吉野桃子がきらきらと輝くような笑顔を振りまいている。彼女の周りでは笑い声が
岡田と塩崎がうらやましい。岡田はイケメンで、インターハイにも出場しているアスリート、しかも生徒会長だ。いつも女子生徒達にモテまくっている。一方、塩崎は高校に首席で入学した秀才だ。しかしガリ勉ではない。もともと頭の出来が違うのだろう。塩崎は
「わからないことがあったら塩崎に聞け!」
担任の
夏休み直前の土曜日、相談したいことがあると言われて岡田の家を訪ねた。家が
「この部屋は昔、暗室にしていたところだ。デジタルになったので、今はパソコンとプリンターがあれば写真が楽しめる。」
岡田が説明していると、一眼レフカメラを持った塩崎が現れ、ボクにレンズを向けてバシャ、バシャとシャッターを切る。シャッターに同調したフラッシュがめまぐるしく光る。
「フォトサークルを作ろうと思う。どうだ、いいアイディアだろう?」
岡田も
「ケンは今もフイルムで写真を撮っているよね。あのカメラで参加してほしい。」
あのカメラとはクラシックな二眼レフ。<写真の勉強がしたいのなら、中古だがいいカメラがある。
「桃ちゃんも
そう言われると断れない。塩崎の説によると、ポートレート写真(
被写体希望者は、吉野桃子をはじめ、昼休みに岡田と塩崎を囲み、おしゃべりをしているお
夏休みの期間中、予行演習をかねて撮影会を実施した。撮影現場では岡田が被写体になってくれる女子生徒達に、ポーズや表情の作り方などについて
岡田も塩崎もデジタル一眼レフ。バシャ、バシャ、バシャと
ボクは驚いた。カメラには不思議な力がある。カメラを
夏休み
「ケン君のカメラ、ステキね。」
吉野桃子の声がした。驚いた。
「ふーん、そうやってフイルムを入れ替えるの?」
吉野桃子が見ているので失敗は許されない。
「1本のフイルムで何枚撮れるの?」
「12枚」
「たった12枚?貴重なフイルムを使わせて
なんと、吉野桃子からの
「はい、吉野さん、喜んで!」
ボクは
フイルムの現像はいつも大型カメラ店に依頼していたが、現像の
数日後、岡田の家に被写体のメンバー5名も
夏が過ぎて秋になった。ボク達は修学旅行で京都にいた。自由行動第1日目、午前9時メンバー全員で
吉野桃子とボクはタクシーで
「ケン君、お茶のお道具屋さんがあるわ。路地を左に入ると
お母さんが
「ここが
「吉野さん、いいですか?撮りますよ。はーい、撮りました!」
ボクは自信をもってシャッターを切り、フイルムを巻き上げる。やっぱり京都は素晴らしい。カメラを右に向けても左に向けても絵になる。あっという間に12枚撮影してフイルム交換。
「不審庵が建てられたのは1594年。
吉野桃子の説明を聞きながら、小川通を裏千家今日庵まで移動して、その間シャッターを切り続けた。気がついた時には、最後の1枚を残すのみとなっていた。
「フイルムがなくなったの?でもいいわよ。今日庵の前で写真も撮れたし、大満足!さっき
フイルムがなくなった。カメラが使えない。金棒を失った鬼の心境だ。そのことを意識した
「お香がたかれているわ。」
想像をはるかに超えた厳かな雰囲気に
「最初にお菓子をいただいて、それからお茶をいただくの。」
お抹茶をいただくのも初めての体験。色鮮やかな生菓子、その
「ケン君、ドジね!」
静寂を破ってキャッキャと吉野桃子が笑い出した。
「ほんとに、ほんとにおかしい!」
はた目も気にせず、吉野桃子は大声でじゃべりながら笑い転げる。
「大丈夫?ケン君!」
鼻の中が痛くて声も出ない。大丈夫じゃないよと涙目で訴えた。
「バカね、ケンちゃん!泣いてるの?でもケンちゃんて最高よ!」
「ケンちゃん!ケンちゃん!」
吉野桃子の声に応えて、ボクは尊敬の気持ちも込めて「桃子さん」と呼んでいる。カメラがなくても赤面しなくなった。彼女の目を見て、平常心で話ができるようになった。これがはじまりのはじまり。
おわり
はじまりのはじまり 橘 賢 Ken Tachibana @kamegamori
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