12月の作家さんと編集くん

渋谷かな

第1話 作家さんと編集くん1

「メリークリスマス!」

「メリーに首ったけ!」

 作家さんと編集くんはクリスマスパーティーをして楽しんでいる。

「書けてしまうから恐ろしい。」

「スゴイ! 作家さんの実力ですね。」

 無いのは出版社とのコネだけである。

「次は何を書こう?」

「もう書くものがありませんね。」

「うんだ。」

 出版社やアニメ制作会社、スポンサー、テレビ局などの大人の事情が分かってしまうとシラケて、どんどん次の作品が書けなくなる。世に出るのはウケ狙いの作品ばかりだ。

「恋愛モノでも書きますか?」

「恋愛は通常に生活をしていて、この人いいなって思えたら、いつでも書き足せる。それが恋愛モノだ。」

 おまけのような恋愛モノ。

「なんか面白い設定はないかな?」

「日本は日常モノの繰り返しだけで同じ作品が繰り返しですからね。まあ、つまらんですね。」

 それでお金が儲かるから制作側は苦労しない。素敵なファンのおかげで楽にお金儲けができる国、それが日本だ。 

「世界は未だに正義貫徹だからな。その方が分かりやすいし。バットマンに、スパイダーマン。」

 新規? 続編?

「日本のアニメは複雑過ぎるんだよね。最後は正義貫徹でもないし。」

「でも日本で正義貫徹となると、時代劇しかないですよ。水戸黄門、大岡越前、遠山の金さんなど。」

 ということは。

「時代劇の様な、現代か、異世界ファンタジー。」

「まあ、それが一番分かりやすいですよね。」 

 やっと制作のコンセプトが決まる。


「ここからどうしよう?」

 求めているのは、作品のタイトルを変えないで、全ての話の元になる様な物語。

「全てを圧縮できるような物語。また逆に全てを解放してもつながる物語。」

 時代を超える。未来に過去に行く、時間を戻すなんかは当たり前の作品。


「天使と悪魔?」

 ああ~女神様的な?

「人間は天使と悪魔を飼っている。」

 最後は時代劇風に天使が悪魔を倒して終わるか?

「逆に悪魔が勝つか?」


 ? ばっかりだな。本当に何にも決まってない。


「悪魔が人間をモンスターに変えてしまう。」

「天使が人間に力を与える?」

 それが水戸黄門、大岡越前、遠山の金さんに値するのか?

「モンスターを倒せば、正義貫徹。」

 一件落着だな。


「ヒロインは天使エルエル!」

 語尾にエルがつけば天使なのだ。

「落ちこぼれ天使にしよう。」

 正に堕天使ならぬ、落天使。ムムッ!? 楽天使にした方が作品が有名になれば楽天がスポンサーになってくれるか?

「大人の事情を考えたり、読者ウケを考えて作品を作っていく自分が嫌い。アハッ!」

 なにはともあれ、ヒロインはできた。


「主人公をどうする?」

 基本の16才の高校1年生は確定。

「天使に取り憑かれる主人公」

 鈴木堕(こぼつ)。

「落ちる。」

「俺は落ちるじゃない!? こぼつだ!」

 どちらも残念な名前だ。


「主人公の彼女をどうする?」

 基本、16才の高校1年生。堕の幼馴染で同級生。 

「ダメな主人公を支えている女神様にしよう。」

 佐藤女神(めがみ)。

「この女神さまを名乗る偽者め!?」

「偽者!? 女神は私の名前だ!」

 良い名前でも悪いこともある。


「できた!」

 簡単に魅力的なメインキャラクター3人ができたことは、奇跡である。

「さすが! 作家さん!」

「いや~、それほどでも。」

 クレヨンしんちゃん風に謙遜する作家さん。

「ここからどうしよう?」

「主人公の家族とかは堕と女神のお父さん、お母さんですませばいい。」

 一先ず兄弟はいないとしておこう。

「いや!? ダメだ!? 兄が鬼になった妹を助けるのが流行っている!?」

 毀滅のバカ。

「ああ~、また名前問題か。」

 弟と妹に相応しい名前はなんだ?

「弟は一郎。妹は花子。」

「雑過ぎませんか?」

 残念なネーミングセンスである。

「花子はやめて、天使にしよう。エンジェルだ。」

 天使と書いてエンジェルと読む。

「弟は一郎のままでいいや。長男だし。」

 アホな姉とのギャップがウケる。

「鈴木一郎。佐藤天使。」

 あらすじを書き直したら逆だわ。鈴木が天使で、佐藤が一郎だわ。

「これで家族もできたぞ! 完璧だ!」

「さすがです! 作家さん!」

 一件落着。


「次はどうする?」

 前に進むしかない。

「今度は敵役の悪魔を考えましょう。」

「悪魔!?」

 創作に終わりはなかった。

「高橋デビル?」

 ハーフにするか?

「高橋悪魔。16才の高校1年生。」

「高橋邪神。6才の小学1年生。」

 高橋家は悪だな。

「悪役もできた! 邪神もできた!」

 まさに邪神ちゃん。

「これにて一件落着! ・・・・・・で終わりたい。」

 ちゅかれた。


「次にどうしろという?」

「もう書きますか?」

 不思議とキャラクター数を確保すればメインストーリーは書けると知っている。

「後は、どうやって堕は天使エルエルと出会うのか?」

「どのように物語を進めるのか?」

 この辺りである。

「スマホで剣や魔法って、どうなった?」

 置いてけぼりである。まあ、スマホ=カバンや持ち物と一緒の扱いだな。

 つづく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

12月の作家さんと編集くん 渋谷かな @yahoogle

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る