第7話 それでも勇者は道化を殺す!
大神官を殺した俺はついに、教会を初めて出る事が出来た。今までは何処に魔族の刺客がいるか分からないからと、教会の敷地から出る事が許されなかった。
だが今日は止める者は誰もいない……教会の中には誰もいなかった。いや違う、生きている人間は誰もいなかった。
ナカムラは何故身内である神父や神官たちを皆殺しにしたのか……その謎は町に出た時に理解した。
ナカムラの手の者であろうか、教会が魔族に襲撃され神父や神官が皆殺しにされたとふれ回る者たちが、市民達の避難誘導を行っていた。
そしてその中の一人が言った。
「勇者だ、勇者さまが現れたぞ!」
「勇者さまが私達を救ってくれる!」
「勇者が魔族を必ず滅ぼしてくれるぞ!!」
俺の前に溢れていた市民達は道の両側に避けると
この世界の事実がどこにあるのか分からない俺には、コイツらが全てあのゲス大神官ナカムラに操られているかの様に見えるからだ。
早くここから離れたい!
そんな俺の前に魔族が現れた……いや、えっと何コイツ。巨大な棍棒を持ち、全身を緑色に塗って飾り物の角を付けた二メートル近い巨漢の……。
「バカな人間だ」
「誰が人間だぁ! 俺はお前を倒し、そして魔族も滅ぼす。そうすれば富も名誉も思いのままだぁ!!」
大声を上げて吠えるバカを見て、『魔族だ、魔族が現れた!』と叫んでいるサクラがいる。それを信じてバカに恐れをなした人々が慌てて逃げまどう。
明らかにナカムラの仕込みだ。
俺を民衆に印象付けるつもりでいたのだろうか。ナカムラが彼らの意識をコントロールするのに必要な事だったのかも知れない。
「何を呆けてやがる小僧。俺様に恐れを成したかぁ。ふははは……!」
考え事をしていたのをそう取るか……。
「殺意を感知!」
「俺の名はヴァーカー。お前を殺し、世界を救う男……だ……」
「やっぱりバカじゃねぇか」
俺が感じるよりも先にソウルブレイカーが動いていた。バカが言葉を発した時にはヤツの右脇をすり抜けその腹を切り裂いていた。
ヴァーカーは切られた傷口から泡を吹き出して溶けて消えた。それを見た民衆から歓声が上がる。
「クソッ! 全てナカムラの思惑通りなのか。胸糞悪い。」
俺は歓声を上げる民衆を尻目に走り出した。この気持ち悪さを
あれから三時間……。
「ここどこ?」
薄暗い森の中で完全に迷子になっていた。
思わず呟く【勇者】17歳、秋の夕暮れ時だった。
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