日暮れ古本屋
楠木静梨
序章
閃光——————視界を埋め尽くす光は、僕らの瞳を焼くように輝き、己の存在を一般人から隠さんとする。
僕は慌てて他の家族も乗る車から降りて、光の発生源に駆ける。
「遅いよ、待ちくたびれてミイラになるところだった」
樋地旗は言う。
文句に対しての返事を考えていると、僕の頭部付近を凄まじい速度で岩が通り過ぎる。
「お出ましですね、場所を変えますか」
「ああ、アイツと遣り合うにはここじゃ目立ち過ぎるからね。
「賛成だよ」
瞬間、視点が切り替わる。
「
樋地旗が言うと、端蔵と呼ばれた男は反応する様に言い返す。
「今から殺すんだ。
「最後ぐらいは他人の目が無いところで戦いたい。
「君もそう思うだろう、少年」
同意を求められた僕は己の信念を、仲間の思いを言葉に込める。
「人目につかない方がいいのは同意見だ。
「食い違うのはただ一つ、死ぬのは僕らじゃない、お前だ端蔵」
瞬間、端蔵は空高く跳ね上がる。
「
轟くは雷が如く、その実は雷に限りなく似せた端蔵の妖力だ。
本物よりも少しばかり速度が劣る雷を躱しながら端蔵に向かい駆ける。
「
僕は自分にだけ聞こえるように呟く。
瞬間、端蔵に向けた掌から白い龍が生える。
名は体を表すと言う言葉通りの名前を持つ技を放ち、勢いよく龍を端蔵に飛ばす。
それと並行する様に駆けるのは樋地旗だ。
一族に伝わる狐火という火の玉を端蔵に向かいの飛ばしながら、自慢の愛刀、殺生石を存分に振るう。
「先生、弟子に向かって一撃必殺を何度も振るうのは如何なものかと」
端蔵はそう訴えるが、樋地旗はそれに耳を傾ける様子もなく愛刀を振るい続ける。
「樋地旗さん、援護します」
僕はそう言って端蔵の後方に回り込む。
「火吹きの
技の名を呼ぶと、左腕が炎を纏う。
「一の指、火遊び」
握りしめた左の拳から親指だけを突き立て、横に一閃する。
すると、親指の通った箇所から火の玉が五発飛ぶ。
それを見た端蔵は手早く手龍を消滅させ、火の玉を回避する。
「援護なら静かに回り込んでくれないもんかね」
「コソコソ動いても端蔵はどうせ気付いてますよ」
一言交わして、次の攻撃の為に体制を整える。
「二の指、緩火」
瞬間、端蔵の着ている服の袖が一つ、火がついた状態で宙を舞う。
「着火速度が上がったね、少年」
「それに反応してから言ったらただの嫌味だよ、端蔵」
僕が言い返すと、端蔵はつれないやつだとでも言いたげな表情で僕を見る。
「そんな君にプレゼントだ。
「ありがたがってくれよ」
瞬間、端蔵は何処からともなくだした鏡を僕に向ける。
「
次の瞬間、僕の意識はプツリと途絶えた。
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