第16話 アリエル伝説
気を失った黒装束の男を拘束し、戻ろうとするが...
「周りにもまだいるんだよなぁ」
そう、まだ周りには数人の気配があったのだ。今倒しに行ってもいいが、あまり長い時間サシャ達のところを離れたくなかった。
といっても、本気を出せば5分あれば十分倒せる数なのだが...
「今はサシャ達が優先かな」
そして、次どう動くのかを頭に描きながらサシャ達のところに戻る。
「エルくんッ!」
「おっと...」
いきなり抱きついてきたサシャは少し震えていた。その後、詳細を手短に説明しながら次どう動きたいかも伝える。
「…うんうん、なるほど。それじゃあヘンドリック伯爵家のとこに僕もついて行こうか」
「え、でも危険ですよ?」
「それは君も同じだろ?それに子供一人で解決出来る問題じゃない。僕の権力をもってして、出来る限りの協力はするよ。サシャが狙われたんだ。動かない訳にはいかない」
「…分かりました。クラウドさんは僕が絶対護ります」
正直に言って助かる。自分でも、これは僕一人で解決出来るとは思ってなかったからだ。なぜなら、どれだけ言葉を並べようとも辺境伯家三男の言葉より伯爵家当主の言葉の方が力があるからだ。だからそれより強い権力、公爵家当主の助力を得られたのは心強い。
「これほど頼もしい護衛はいないね」
「ありがとうございます。では、他につける護衛の人達を選んだり準備をしていて下さい。そのうちに残っているやつらを一掃してきます」
「まだ残ってたのかい?」
「はい、今はクラウドさん達の方が優先なので」
「分かった。気をつけてね」
「はい!」
「エルくん、怪我とかしないでね?ちゃんと無事に帰ってきてよ!」
「うん、ありがとうサシャ。無事に帰ってくるよ」
「うん!」
〜黒装束side〜
「ちっ、
「『こちら
「想定外だ、なぜアリエル・フォン・アルバートがここにいる!? ……ふぅ、あいつは化け物だ。ひくぞ、今回の依頼は取り消しにする」
「それはどんな依頼だったんだろうね」
今回の依頼でリーダーをやることになった黒装束の男に悪寒が走った。
「(なッ、なぜここにいるんだッ!?)」
「ちなみに君以外の他の3人は既に無力化しておいたから。早めに投降するなら手荒なまねはしないけど?」
「なに!?あいつらは闇ギルドでも屈指の実力者でB2ランクなんだぞ!?それに、一人は俺と今喋っていただろうが!」
「ほ〜、闇ギルドねぇ〜」
ここで説明しておくが、冒険者ギルドにはランクというものがある。そしてそのランクは下から、G、F、E、D、Cと続き、Bランクから上は更にランク分けされて、下から、B3、B2、B1、A3、A2、A1、S3、S2、S1、となる。更に上のS0などあるらしいのだが、これは初代勇者など歴史上3人しかいないそうだ。なので実質S1ランクが最高峰となっているのだ。そして、このランク付けは闇ギルドにも当てはまるらしい。
「ッ、しくじった...」
「僕からしたらそのまま情報を提供してくれた方が嬉しいんだけど」
「ハッ、そんなことする訳ねぇだろうが!〇ね!」
「そうか、なら仕方がないね」
そう言うと、おなじみ、スキルレベルExを誇る"殺気"で一瞬にして意識を刈り取った。
「ひとまず、終わりだね。…それにしても、闇ギルドか」
──潰しちゃおっかな──
「勝手にアフレコしない」
──外れてましたか?──
「……まぁ、近からず遠からず、ってとこかな?」
──図星ですね。マスターは意外と物騒なことを考えますね──
「まあ、今はそれより先にしなくちゃならない事がある」
──ここからが本番です。どう追い詰めるか考えないとですね──
「いや、大丈夫だよ。いくらゴランでも公爵家の力があれば、為す術は無いよ」
◇ ◇ ◇
その後、クラウドさんと合流してすぐにヘンドリック伯爵家のところへ向かった。
見えてきたヘンドリック邸はとても豪華.....派手な飾り付けがたくさんあり、いかにも貴族という感じの家だ。
「全く.....横領したお金をこんなことに使うなんて」
「横領?なんでヘンドリック伯爵がそんなことをしているといいきれるんだい?」
「独自の情報網がありまして。ヘンドリック伯爵家について調べたらそれはもう、いろいろ出てきましたよ」
「…本当に君は、つくづく規格外だね」
「クラウドさんも大体の予想くらいはついているんでしょう? まぁ、今はそんなことより、ここからは警戒して下さい。何が起こるか分かりませんから」
「そうだね」
そして、門番の騎士に紋章を見せて強引に中に入っていく。かなり、慌てていたようだが気にしない。今はゴランが先だ。
「クラウドさん、ここは思いっきりドアを開けた方がいいですかね?」
「ハハッ、そうだね。演出も大事だ(笑)」
そう言うと、ドアを思いっきり開ける。
「ゴラン・フォン・ヘンドリック!話がある!今すぐに出てこい!」
メイド達が急に現れた僕達にビックリしていると...
「何事だ!」
ゴラン・フォン・ヘンドリックが出てきた。
「なッ、なぜアルバートのガキとヴァーミリオン公爵がいる!?」
「少し話をしようか」
そう言うと、顔を真っ青にしながら個室まで連れてきた。
「さて、ゴラン卿。今回の件、どう責任をとってくれる?」
「な、なんのことかさっぱり分かりませぬぞ...」
「芝居はいらん。今回のことを陛下がお聞きになられたらお前は爵位剥奪だけでは済まされないぞ?」
「ッ!では証拠を見せてみろ、証拠を!」
「ではここからは僕が」
「頼むよ」
「今から見せるものは魔法で映像を記録したものです」
そう言うと、真ん中の机の上の方に僕が精霊を通して見ていた先程のゴランの映像が流れた。
『明日か.....ならばヴァーミリオン家の使用人の弱みを握って、だすお茶に毒を盛らせろ。くれぐれも慎重に進めろ。分かったならいけ!』
『は、はい!』
「な、なんだこれは!?」
「これは先程のあなた方の会話を記録したもの。これを見せればちゃんとした証拠になるでしょう」
「ぐ.....ね、捏造したものだ、と言えばいいではないか!」
「でしたら、あなたが今までに犯してきた罪を報告すればいいだけですが?」
「そ、それこそ証拠がないだろうが!」
「証拠ならばここにあります」
そう言うと、アイテムボックスから取り出した紙束を机に置く。
「これらすべて、あなたの今までのお金の流れが全て記されているものです」
これを見れば、ゴランがいつどの程度横領したのかが一目で分かる。
「!?なぜお前がそれを!」
すると、大急ぎで部屋を出ていった。1分ほど経って戻ってきたゴランは切羽詰まった表情をしていた。
「どうやって!それを!いったいいつ!?」
「さあ、あなたが降参すれば教えてあげなくもないですけど?」
「…負けだ、俺の負けだ。認めよう」
「では、王城に連れていき──」
「だがお前を殺して道ずれだァ!!!!」
懐からナイフを取り出したゴランはこちらに向かってナイフを突き出してきた。
「エルくんッ」
「この程度大丈夫ですよ」
突き出されたナイフを避け、手首を掴みナイフを奪う。そして手を後ろまで持っていき膝を折らせる。
「くっ...クソガキがァァァ!」
「クラウドさん、意識、飛ばしていいですか?」
「あ、ああ」
殺気をゴラン1人に集中的に浴びせる。泡を拭きながら意識を失った。
「これでひと段落ですね」
「本当に君には驚かされてばかりだよ」
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お読み下さりありがとうございます!
更新、遅れました...
少し忙しくてなかなか出せませんでした。
次回も楽しんで読んでくれたら嬉しいです!
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