第49話 しかし、撃たれたのは俺を庇おうと
しかし、撃たれたのは俺を庇おうと俺の前に立った茜だった。
「お父さん、止めて!!」
弾を受け、胸のあたりから血を流しながら艮鬼に訴える茜。
茜は余りのいたたまれなさに、ついに戦いの真っただ中に飛び出してきたのだ。
「はあ、お父さん?」
俺は、茜の言葉を全く理解できないでいた。そして、それは一覇も一緒だった。
しかし、艮鬼は驚愕した。
「茜、何でお前がここに居るんだ? お前も俺と同じ、何のスキルもないのに……、なんでこんなスキル頼りのバカな奴らが通う学校にいるんだ。無能呼ばわりされて、いじめられ、この町の最底辺の場所で生きるようにしかないのに……」
「お父さん。そんなことないよ。何度もそんな目に遭いそうになったけど、私、征哉先輩と一覇さんに助けられて、今、幸せだよ」
「そんなはずはない。俺を首にしたのはこの一覇の親なんだぞ。こいつだけは殺す。そして、俺をバカにした鬼都市の奴らを皆殺しにしてやるんだ!!」
足元がふらついてやっと立っている茜に向かって艮鬼が近づいてくる。
「お父さん。間違ってるよ……、それに、私、将来結婚して子供が出来るらしいの。名前は甲斐。 そして甲斐はね、征哉先輩と一覇さんの子ども、お父さんが倒そうとしている九鬼征覇さんと結婚することになっているの」
茜の口から衝撃の事実を飛び出した。
「嘘だ。そんなことはない。忌まわしい鬼都を、過去から滅ぼしてやろうと八鬼どもを従えて、あの時鬼都に攻め込んだのに……」
茜がついに膝から崩れ落ちていく。慌てて艮鬼は茜を支えた。
「お父さん。もう終わりにしよう。憎しみは次の憎しみしか生まないの。だって、征覇ちゃんは、甲斐との結婚式場で忽然と姿を消して……。お父さんの行いは、私だけでなく孫の甲斐まで不幸にしたのよ」
「そんな……、そんなはずはない」
頭を抱えた艮鬼。そんな艮鬼の胸に両手を当てる茜
「ごめんね。お父さん。錬成 破邪の剣!!」
茜が叫ぶと同時に、艮鬼の胸には剣(つるぎ)が生えていた。茜は昆鬼の体内にあった魔素を錬成し、破邪の剣に変えたのだ。
「ぐあっつ!!」
昆鬼が叫び声をあげて、茜の腕の中に崩れた。
「ごめんね、お父さん」
「……茜……」
艮鬼は、茜の腕の中で霧散して消えていった。
今、征覇は、自分が消える前の結婚式場の控室でママと二人きりで話し合ったことをすべて思い出していた。今まで、禁忌と言われている自分や他人の体内の魔素を使ったことで記憶を失っていたのだ。それが、茜の捨て身の一撃ですべてを思い出したのだ。
(そうだった。茜さんが自分のお父さん(=艮鬼)を止めたんだ。ママは他にも言っていた。お父さんと茜さんは、人の体内の魔素をスキルに使った後遺症で、その時の記憶をすべて忘れてしまっていた。だから、覚えていたのはお母さんだけ。
その時、お母さんは言ったけ。
「過去の時代に飛んでしまった征覇を私は絶対に呼び戻して見せるよ。だって、あなたが時空のはざまをさまよっていた時、私があなたを呼んだんだよ。
「事情を説明できる人、出てきなさい!!」って。
だから、私はあなたがいなくなったら、正義のヒーローを渇望するの。だって、あなたは私と征哉の子供だもの……。正真正銘、最強のヒーローだもの」
そして、私は光に包まれた。
そして、気がつけば、私の目の前には、懐かしいママの顔があった。
「征覇、お帰りなさい」
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