第9話

 合流する。


 右側の指揮官。


「もうしわけない。通信を遮られました。中央は?」


「大丈夫だ。倒してから来た」


「ありがとうございます。釣られて中央まで逃がしたら私の責任になる」


「そう気負うなよ。これは完全に敵の作戦勝ちだ。責任と言うなら俺がいちばん判断をあやまった」


「そんなこと」


「あるよ」


 戦術戦で敗れた。どこか、相手がNPCだという油断があったのかもしれない。


『狙撃位置ついたよ』


「よし。行くぞ」


 まとまって、ぶつかる直前。


「まて」


 全隊を止める。

 敵が一瞬だけ、反転する素振りを見せた。


「くそっ。素振りだけか」


 次の瞬間には、もう撤退が始まっていた。全隊を一度止めてしまったので、動かすにはまた命令をかけなければならない。逃げられてしまうだろう。


 ただ、ひとつだけ、見えるものがあった。


「部隊最後方の中央。殿しんがりの位置にいる。やれ」

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