エピソードSEVEN

「もう!!イトナさん、早くしてくださいよお!」


「ごめんなさい」


マネージャーと一緒に、今、空港にいる。



「あ、いとこさんいらっしゃってますよ」


言われて振り返ると、1週間前に泣いていたあの香月が、笑顔で手を振っていた。



「見送ってくれるのか」


「うん。だって姉さんと顔合わせるの最後だし」


思えば色々あった。いじめられてばっかりの私を、香月が声優オーディションに無理やり応募して、陽の当たるところにいけ、なんて言ってくれたっけ。だから、声優になれたのも、こうしてお仕事をもらえてるのも、香月のおかげなのだ。


「姉さん、こっち向いて」


香月に顔を向けた。途端に、香月にメガネを奪われてしまった。


「え、ちょっと!」


「えへへ。ごめんね姉さん。でも、この方がいいよ。可愛い」


「へ/////」


香月が私に鏡を向けた。


「ね?おめめパッチリだし、口もプルプル。姉さんは、どの女の子よりも可愛いの。自信持って」


香月は私の頭をくしゃっと撫でた。


「・・・ありがと、香月」


私は香月の手を握った。誰よりも大好きで、大切な、私のたった1人の家族。



「イトナさーん!早く行きましょう」


「はい」


そして、香月を振り返った。



「またね、香月!」


「うん!またね、姉さん!」



そして私は、飛行機に乗り込んだ。

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