第40話 Web会議(5)

 世界線のズレ――とは良い逃げ方だなと思う。だって誰にも証明出来ないし、それを証明しようとも出来ない。悪魔の証明とは言うが、まさにそれを言うのだと思う。

 ……なんて思っていたら、謎の音楽が向こうから聞こえて来た。いや、この音楽聞いたことがある……、バレエ・メカニック?


『えー、何で知っているんですか? バレエ・メカニックは結構マイナーだと思っていましたが……。もしかしてエウレカとか見るんですか?』


 ぼくじゃなくて城崎が見るんだよ。あいつ、ロボットアニメが大好きでね……。エヴァンゲリオンもあいつは好きらしいからな。ええと、確か数年前のテレビ版序を見てハマったんだっけ? 家族に言ったらそれならテレビ版も見たら良いよ、って悪魔の囁きをされて、当時ビデオに録画してあったテレビ版を見たらしい。そして第二十六話を見た――テレビ版最終話は第二十六話で、当時はとんでもないことになったらしい――後に家族に抑え切れない気持ちを暴露したらしい。そりゃあ、謎が良く分からんまま学園エヴァやおめでとうエンドをやられたらな。何が全てのチルドレンにおめでとうなんだ、と。


『まあ、言いたいことは分かりますけれどねー。わたしも当時リアタイ視聴していましたけれど、アレはおかしいですからねえ。でもまあ、劇場版が公開されることになって少しは溜飲しましたよ。だってサードインパクトの真実が明らかになる……って言うんですから』


 でもその公開された劇場版は、蓋を開けてみると前半がダイジェスト、後半は何とか新規映像だったけれど打ち切りエンドみたいになっていたんだっけ? エヴァシリーズ、完成していたの……? で流れる魂のルフランはどう考えても未完成エンドに見えるけれど。


『それでも当時は良かったんですよ……。確かに元々は一本で最終話をリメイクし、もう一本で新作が出るはずでした。しかしながら、それはなくなってしまい……、結果的に二本の映画で完結することになった訳ですけれど……』


 アレ、完結したと言えるのだろうか。見たことがある人なら分かるだろうけれど、狂気のストーリーかつ演出だったと思うぞ……。まさか当時見ていたオタク達も自分達が銀幕デビューするなんて思いもしなかっただろうし……。でも何で『気持ち悪い』で終わらせたんだ?


『それは、声優の実体験らしいですねー。後は監督が声優に「こういうキャラが居たらなんて言う?」という質問に対して放った一言らしいですよ。……そりゃあ、アスカにあんなことしたシンジは気持ち悪いと言われても仕方ないですよねー。結果、他人が居ても良いじゃんみたいなラストだったのと、続きを作りたくないから全部ぶっ壊したなんて言っていたのに、その十年後にリビルドした新劇場版を始めた訳ですからね……。ただ、破までは単純なエンタメとして面白かったと思いますよ、これってほんとうにエヴァなの? と言われてもおかしくないぐらいには』


 城崎は旧劇――新劇場版が発表されてから便宜上こう言っているらしい――を見てさらにハマったらしいからな。Qを見た時は『これこそエヴァだよなぁ!』なんて言っていたらしいけれど……。賛否両論なストーリーだったのは間違いないよな。しかしそれから八年も待つことになろうとは……。


「あれ……、でも城崎さんって二〇〇四年生まれでしたよね? その映画が公開されたのって……」

『Qが公開されたのは二〇一二年でしたっけねー……。となると八歳ですかー、英才教育ですねえ』


 年齢は良く知らないが、まあその年齢からエヴァを見るのは普通ではないような気がしないでもない……。確かそれからロボットアニメにハマってエウレカも見るようになったらしい。今度やる映画はハイエボリューションの完結編だったっけ?


『いやー、ハイエボリューション一作目はただのリミックスぐらいに思っていましたけれど、二作目は驚きましたねー……。まさかああいう風に世界を再構築するなんて。三作目がどうなる! ってところで一年以上音沙汰がなかったんですよ。で、年末が近づいて来たら公開日がさらっと二〇二一年に延期になってましたね。いやー、ハードル上げるだけ上げて延期したんで、ファンとしては楽しみで仕方がありませんが』


 なんやかんや昨年は感染症でゴタゴタがあったからな、それはエンタメも例外ではない……。映画館なんて風前の灯だったのが十月に公開された映画が爆発的に売り上げちゃったもんだから大変なことになったらしい。ええと、四百億は行ったんだっけ?


『えーと、確かギリギリ行かなかったと思いますよ。それでも新記録であることには変わりないですけれどねー……、記録更新直前にリバイバル上映の分加算してきたのはちょっと面白かったですけれど』


 逆に言ってしまうと、リバイバル上映で八億円も稼いだのかよ――ってなるんだよな。だって八億なんてなかなか稼げないぞ。もし去年妖怪の映画がやっていたらどうなっていたのだろう……。


『子供向けは直ぐ廃れますからねー……、それを考えるとポケモンは凄いとは思いますよ。確か今年二十五周年で色々企画しているらしいですよね。二十五周年なら当時遊んでいた小学生は三十路……、時代の流れは残酷ですね』


 確かに二十年以上子供から圧倒的な支持を受けているのは、凄いと思う。だって、他の子供向けも人気はあるけれど、大体が既に何十年も愛されていた訳で……、そこに食い込んできたのは凄いよな。でもポケモンは多過ぎて覚えられない……、もう千種類は超えたかな?


『ところが未だ千は行っていないんですよねー。あと、HD開発になったからか、全部のポケモンが収録されていないんですよ。いやー、まさかあれだけ酷評されたウルトラサンムーンが「全てのポケモンが登場する」ってだけで高評価になるなんてね……、思いもしませんでしたよー。ところで、二〇〇四年生まれなら初めて遊んだポケモンはブラックホワイト辺りですか?』


 残念、初めて遊んだゲーム機は3DSだよ……。だから初めて遊んだポケモンも二〇一三年のXYだったかな。


『え……。ということは、2Dのポケモンに触れたことがないと……! うわー、若いわー、若いって良いなぁ……』


 おい、最後明らかに違う感情が混ざっていたぞ。そこに関しては良いのか?


「……ところで、電話は大丈夫なのですか?」


 そういや、バレエ・メカニックのところで随分と盛り上がってしまった……。もしかして、大事な電話だったりしたのだろうか?


『いや、目覚ましですよ?』


 何でこんな時間に。


『わたし、夜型なんですよ……。仕事柄、別に昼間働かなくても良いので……。だから、この仕事を選んだのですけれどね! 夜には好きなVTuberの配信が見られますし!』


 それが本音かよ……。因みに好きなVTuberも聞いておいた方が良いか?


『名前は言えないのですけれど……、面白いVTuberは居ます。ヨーロッパ企画のゲームをプレイしたり、クリオネを食べたり、洗濯機の前で中腰になって配信していたり……、面白いところがありますよ。会いに行けるアイドルっていう肩書きで昔AKBが流行ったじゃないですか、あれと似たような感覚だと思うのですよねー、VTuberって。確か昔あるソシャゲの生放送にも出ていたようですが……』


 それ、誰だか特定出来ると思うのだけれど。ってかクリオネって食えるのかよ。


「VTuberって、アイドルと同じなんですか?」


 大体同じようなものだと思う。配信頻度は人によって違うらしいけれど、流石に毎日配信しているVTuberは居ない……だろう、多分。何かVTuberも大手事務所があってパワーバランスは芸能界と変わらないらしいけれど?


『ああ……、それは多分同じだと思いますね。特にここ一年大きく盛り上がってきていますから。ライブ会場でホログラム演出をするのは最早定番だったりしますし、意外と歌が上手いVTuberも多いのですよー。とうとう去年はCDも出していましたね。カップリングがラムのラブソングとか完全に客層理解している気がしますけれど』

 

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