第32話 森の喫茶店、存続危機!?その2
「……琉斗さん?」
琉斗さんは話終えると、悲しそうな顔をしていました。
このお話は……琉斗さん兄弟の事なのですか?
「由樹ちゃん、琉斗さんがね……由樹ちゃんには話しておかないとって言っていたんだ。だけど、なかなか機会がなくて。でも、嫌な予感がするからって言っててさ」
やっぱり……。
ということは、蓮斗さんと琉斗さんは2人きりの兄弟だと思っていたけど、本当は琉斗さんには2人お兄さんがいるって事?
「由樹さん、この先……何があっても兄さんを信じてあげてください」
もう1つ、琉斗さんと光さんが話してくれた……。
あの永瀬さんが、ただの見合い相手ではないかもしれないと……。
「ずっとね、変だなって思ってたんだ。だって見合い相手だって言いながら、蓮斗さんにアピールとかしていないし、由樹ちゃんとも険悪にならないでしょ?」
確かに……。
普通だったら、自分の恋敵が同じ家にいたら……嫌な顔とかされそう。
「更にもう1つ不信な点があるんです。この旅館のパンフレット……。こんなに遠い場所から案内が来たのなら、郵便で来る筈ですよね?それなのに、切手も消印も無いただの白い封筒でした。だから、直接投函されたか、用意しておいたものを新聞に紛れ込ませたか……だと思ったんです」
「あっ……」
そうか、確かに……その通りかも。
表書きも、喫茶店宛になっていただけだったし……。
「たぶん、僕の兄が関わっている……かもしれないんです。きっと……蓮斗兄さんも、気付いています。もしかしたら、由樹さんにも危害が及ぶかもしれない。蓮斗兄さんの大事な人だからこそ、余計に心配なんです……」
そっか、だから……蓮斗さんもこの旅館のパンフレットをじっと見ていたんだ。
琉斗さんも蓮斗さんも、疑いつつも……そうじゃないって、信じたかったからここに来たのかもしれない……。
「由樹ちゃん、もし……何かあったとしても、俺達から離れちゃダメだよ?また黙って行ったりしないでね?」
……光さん。
「由樹さん、僕……いや、俺が蓮斗兄さんの大切な貴女を守るから」
……琉斗さん。
「お2人とも、ありがとうございます。私は、蓮斗さんを信じていますから。だから、大丈夫です。もし、私が皆さんも離れる時が来たとしても……ずっと友達でいてもらえると嬉しい……です」
こんなお別れみたいな言葉、何故出てきたのか分からないけど、多分……近い未来、そんな時が来る気がしてしまった。
「勿論だよ、俺達は……ずっと友達だし、仲間だもん。何があっても、何処にいても、これは変わらないからね」
「由樹さん、俺はね……貴女が好きでした。でも、俺の大切な蓮斗兄さんが愛した人、幸せになって欲しいから諦められたんだ。だからさ、由樹さんが蓮斗兄さんを愛してくれている限り、ずっと側にいてあげて」
永瀬さんがいるなら、私の居場所が無くなるんじゃないかって覚悟していたのに……。
それなのに、2人がくれた言葉がとてもあたたかくて、すごく胸が苦しくなった。
視界も涙でぼやけてしまい、2人が良く見えない……。
「光さん、琉斗さん……ありがとうございます。大好きです」
2人は笑っていた。
今の言葉聞かれたら、蓮斗さんにヤキモチ妬かれるよって……。
「さてと、そろそろ逆上せちゃうから出ようかな。由樹ちゃん、廊下で待っていてくれる?一緒に蓮斗さんの部屋に行こう」
「じゃ、由樹さん……。すぐに行くから待っててね」
「はい、わかりました」
私はその場から立ち上がると、女湯の方から廊下に出て、椅子に座って2人を待った。
光さん達は私が出るのを確認すると、お湯から出て……男湯の脱衣所へと行きました。
「……これは、困りましたね。あの御方に報告しなくては」
3人の会話を岩の陰で聞いていた人物は、ため息を吐きつつ……どうしたら良いかと思案していたのでした。
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