第17話 甘い香りと苦味は、恋の味?その2

「光……煩いぞ」

「げっ……」


あっ、蓮斗さん!でも、まだ眠そう……。

そのせいか、ちょっと不機嫌みたい。


「蓮斗さん、おはようございます」

「あぁ、由樹おはよう。でも、また寝るけどな」


あらら、寝ちゃうんですね……残念。

やっぱり、光さんの大声で起きちゃったのかな……。


「蓮斗さん、また寝るんですか?じゃ、由樹ちゃん二人で楽しく食べよっか」

「はい、それじゃ食器とか用意しますね」


……楽しく?

お喋りしながらって事かな?

休みだし、ゆっくり話ながら食べましょうね。


「……由樹、俺のも頼む」

「あっ、分かりました」


良かった。

三人で食べれるんだ~。

あれ?でも、また部屋に戻っちゃった……。


「蓮斗さん、寝るって言ってなかった?」


うん、そう言ってましたけど……。


「気のせいだろ」


部屋に帰ったからまた寝ちゃうのかな?と思っていたのに、蓮斗さんが着替えて出てきた。


「蓮斗さん、今から出掛けるんですか?すごくかっこいいですね~」

「光、いちいち煩いぞ。それより、由樹……今日何か予定あるか?」

「いえ、特に……ありません」


急に休みになったし、ゆっくりしようとは思っていたけど。


「そうか。それなら、食事が終わったら出掛ける用意をしろ。ちょっと俺に付き合ってくれ」

「はい、わかりました」


えっ……?

出掛けるって……もしかして、デート!?

……ううん、きっと違うよね。

蓮斗さんから何も言われてないし、期待しちゃいけないよね。



「食事の後片付けは、光がやるんだぞ」

「うわっ、えぇ~?俺ですか~!?」


光さんが突然言われたから、持っていたお皿を落としそうになっていた。


「どうせ、食べたら寝るだけだろ?それなら、別に良いだろうが」

「……は~い」


あ~ぁ、可哀想。

図星だったみたいで……渋々了承してた。

でも光さんに任せるなんて、急いでるって事よね?

一体、何処に行くんだろう?


朝食を済ませた後、片付けを光さんに任せ……私は部屋へと戻っていった。



「おはよう。光、もう食べ終わったんですか?」


「おはようございます!はい、蓮斗さんも由樹ちゃんも食べ終わってますよ」


そうなんですか……。

それなのに、二人の姿が見えませんね。


「光、今日は出掛けないんですか?休みなのに、珍しいですね」


さすがの光でも、今朝までの疲れが残っているんでしょうか?

こんなにのんびりしているなんて、珍しい事ですからね。


「出掛けたいんですけど、瞳ちゃんは仕事中なので一人で暇してます。あっ、言い忘れてましたけど……由樹ちゃんは、蓮斗さんに連れていかれましたよ?」

「兄さんが?」


何かあったのでしょうか?

あの奥手の兄さんが、デートに誘うなんて出来ないでしょうし……。


「もしかして、買い出しですかね?でも……服装は、すごく格好良かったんですよ」


なるほど……。

それなら、もしかして……の可能性もありそうですね。

兄さん、頑張ってください!


さてと……。

俺はさっさと朝食をとって、彼女に会いに行くとしますか。


「……蓮斗さん、ここに用事でもあるんですか?」

「そうだ。由樹は、ここに座って待っていろ」


私がいるのは、近隣のオシャレなホテルのティーラウンジ。

装飾や絨毯を見ると、高級感が溢れています。


「どうぞ」

「ありがとうございます」


ウエイターさんが、珈琲をテーブルに置いた。


蓮斗さんが席を立つ時に私の飲み物を頼んでくれたのかな?

とても香りが良くて、リラックス出来そう。


少しお洒落をしてみたけど何だか場違いよね。

だって……周りにいる人達って、素敵な装いをしているんだもの。

そう思ったら、だんだんと心細くなってきちゃった……。

蓮斗さん……早く戻ってこないかな。

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