冒険者

石海

「彼女」

 空を飛ぶということについて深く考えるべきだと思っている。「彼女」の背に跨ってどんなところにでもひとっ飛びで行けることについて、もっと深く考えてもっと深く感謝すべきだと。


 もっとも、それを他者から羨ましいと言われたことはないし、「彼女」もそれについて特に何も感じてはいないだろう。


 きっと「彼女」の背に乗れるのはせいぜい二人が限界だ。冒険者の徒党パーティは四から六人が基本だから、羨ましいと言われないのはそれが理由だろう。




 「彼女」の背に跨って空を飛ぶのは本当に安全で、気を付けるような事はあまりない。


「彼女」は他の魔物と比べれば遥かに賢く、気がきくのだ。地図で現在地と行き先を示せば、何もせずとも連れて行ってくれる。


 だから、せいぜい落ちないように気を付けていれば何もする必要はないのだ。




 取り留めもなくぼんやりと何事かを考えながら「彼女」の背に乗って空を飛ぶのが好きだ。


 時折、たてがみの生えた頭や首元を撫でると「彼女」も気持ちよさそうにしているから、少なくとも「彼女」も嫌いではないのだろう。

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