世界の終わり 神話の始まり
アラジン
第1話 発光体
「なぁ、あれ何だ? UFOじゃね?」
俺は優太に声をかける。
学校の昼休み。
俺達は屋上で昼飯を食べた後、そのまま無駄な時間を過ごしていた。
優太は弁当を食ってすぐに、タブレット越しにMMOへ旅立ってしまっていたし、俺はただ、秋の澄み渡った空を見上げて感傷に浸っていた。
16歳、それは思い通りにならないことばかりだ。
そして心のどこかで、何かしなければならない大事な事があるような、そんな焦りを抱く。
勉強や部活やゲーム、そういった日々の物事ではなくて、もっと根源的な、人生の意味を問いただすような、そんなはっきりとしない想いが、ここ最近の俺の中に燻っていた。
『俺は何のためにここにいて、何を成すべきなのか』
そんな人間の、永遠の哲学とも言うべき問いが何度繰り返されただろう。
誰でもない、『俺』を成すために俺はいる。
それは俺にしか出来ないことだから……。
『僕が僕であるために』
その曲が歌うように、世界中にいる人間と意見が分かれたとしても、自分が存在する意味は、自分であり続けることだけだ。
ただ誰かに従うだけの者になってしまえば、それはもう、俺である意味を失くしてしまうのだから……。
それは思春期というのかもしれないし、中二病というのかもしれない。
アスファルトの地面やコンクリートの建物、服も家具も乗り物も、全て人間が造った物に囲まれて生まれ、箱庭の世界が人生の全てだ。
それが、ひどく、滑稽に思えるんだ。
まるで、大きな偽りの世界に包まれているような、大切なことを忘れさせられているような、そんな気分にさせる。
空から落ちて行くその発光体を見つけて、俺は、ただただ興奮したんだ。
世界の秘密に触れたような、本来の人生の糸口を見つけたような、そんな興奮。
けれど、内心では解ってもいる。
UFOだ何だと騒いでみても、実際は隕石とかそんなところだろうと。
先週のニュースでもやっていた。空に光る火球が目撃されました、と。
『火球』――科学的な感じで、さもあり得ますよ? みたいに言われれば、そういうものかと日々の生活の中で過ぎ去っていく、そんなものだ。
高校生活のほんの一日、昼休みのほんのひと時、興奮できる時間を過ごせれば、また今日をやり過ごして進める。
ただ、それだけのことだった。
「あれね、ロケットの残骸。天井に当たって落ちてきたんだよ」
顔を上げた優太が、そう言うまでは――。
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