ベンデラヘン童話「湖での釣り」
ねお
ベンデラヘン童話「湖での釣り」
「こんにちは、私キクコって言うの。あなた、こんな森の湖で何してるの?」
「やあ、こんにちは。僕はツリスキン。今僕は釣りをしてるんだよ」
「ふーん、そうなんだ。釣りって何?」
「糸の先に餌を付けた釣り竿で、魚を釣ることだよ」
「ふーん、そうなんだ。この湖はお魚が釣れるの?」
「うん。隣の家のおじさんが、この湖は魚がいっぱい釣れるって言ってたよ」
「ふーん、そうなんだ。あなたは釣れたの?」
「まだ、釣れてないんだ。でも、そろそろ釣れるんじゃないかな?」
☆
森の湖の中では色々な魚達が泳いでいます。
魚達だけでなく、魔物までいます。
そんな湖の中に、おいしそうな食べ物がポチャン、と水の上から落ちてきました。
魚達はそのごちそうに群がってきます。
・・・
「わーい、おいしそうな食べ物が降ってきたぞ~」
「私が先に見つけたのよ!私が食べるわ!」
「俺が先だ!腹ペコなんだから俺に食わせろ!」
湖の中の小魚・・・コザ達は突然降ってきたごちそうに、我先に近づいていきます。
最初にたどり着いたコザだけがごちそうを食べられます。
みんな必死に競争しました。
「僕が一番だ!いただきまーす」
そうして、1匹のコザが口を開けた時です。
3匹の魚・・・サカ達が、ごちそうの近くにいたコザの群れに向かってきたのです。
「うわー、サカだー!みんな逃げろー」
「キャーこわーい」
向かってくるサカ達に気づいたコザ達は、一目散に逃げ出しました。
・・・
コザ達に逃げられてしまった3匹のサカ達は、残念そうです。
「あー、せっかくたくさんコザがいたのに、逃げられちゃったなぁ」
「ざんねーん」
「あいつら逃げ足はえーんだよな」
すると、その内の1匹のサカが、おいしそうなごちそうを発見しました。
「あ、こんなところにごちそうがある!いただきまーす!」
そうして、ごちそうに近づいた1匹のサカが口を開けた時です。
1匹の大きな魚の魔物・・・デビルフィッシュがサカ達に近づいてきたのです。
「うわー、デビルフィッシュだー、逃げろー」
「こわーい」
「マジやべー」
向かってくるデビルフィッシュに気づいたサカ達は、一目散に逃げ出しました。
・・・
サカ達に逃げられてしまったデビルフィッシュは、残念そうです。
「ぬ、サカ達に逃げられてしまった。不覚」
すると、近くにごちそうを発見しました。
「これは僥倖。さっそくいただくでござる」
そうして、デビルフィッシュが口を開けた時です。
1匹の大きな魔物・・・シーサーペントが向かってきます。
シーサーペントは、体長5mもある大きな海蛇です。
シーサーペントは海に住む魔物ですが、なぜこの湖にいるのかは知りません。
「ぬ、これは危ない。退散するとしよう」
向かってくるシーサーペントに気づいたデビルフィッシュは、一目散に逃げ出しました。
・・・
デビルフィッシュに逃げられてしまったシーサーペントは、残念そうです。
「あら、逃げられちゃったわ。残念ね」
すると、近くにごちそうを発見しました。
「あら、おいしそう。小さいけど、お菓子にはちょうどいいわね」
そうして、シーサーペントが口を開けた、その時です。
1匹の非常に大きな魔物・・・クラーケンの触手が向かってきました。
クラーケンは、体長50mもある、大きな魔物です。
クラーケンは深海に住む伝説の魔物なのですが、なぜこの湖にいるのかは知りません。
この湖の主です。
「キャー、クラーケンが来たわ!食べられないように逃げなくちゃー」
向かってくるクラーケンの触手に気づいたシーサーペントは、一目散に逃げ出しました。
・・・
シーサーペントに逃げられてしまったクラーケンは、残念そうです。
「ぬうう、逃げられてしもうたわい」
すると、伸ばした触手の近くにあったごちそうを発見しました。
「かなり小さいが、うまそうじゃし、いただくとしよう」
そうして、クラーケンが触手を伸ばした、その時です。
小さなごちそうは、スルスルと水の中をのぼっていき、ついには水から姿を消してしまいました。
☆
「全然釣れないわね」
「うん、そうだね。もう今日は釣りをやめるよ。・・・よいしょっと」
「それがいいわ。こんなつまらないことしてないで、私と森で遊びましょうよ」
「うん、いいよ。でもちょっと待ってね。うんこしたくなっちゃったから湖に出すよ」
「あら、私もうんちしたくなっちゃったから、あなたの隣でブリることにするわ」
☆
小さなごちそうを失い、残念そうにするクラーケン。
しかし、湖の中にボチャン、ボチャンと二つの茶色い物が水の上から落ちてきました。
「ぬう、小さなごちそうを逃したかわりに、これを貰うとするかのう」
そうして、クラーケンは茶色い物体2つを、触手で持ち帰るのでした。
「うむ、うまいのう」
そして、それを食べて満足そうに微笑むのでした。
☆
そして、10年の時が経ちました。
ツリスキンとキクコは、結婚していました。
あれから毎日2人で遊ぶようになり、仲良くなったからです。
ツリスキンとキクコはたくさん子供をつくって、家族仲良く幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。
ベンデラヘン童話「湖での釣り」 ねお @neo1108
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます