第192話 ちょっと女神! お願いします

 不満解消につきあってください!


「んー、情けないのう」


 だって、心の中が片付かないんだもの!


「だったらいいよ」


 父の事なんです。


「うん」


 彼がどう思っていようがわたくしの知ったことではないのですが、自分はなにもやったことがないくせにわたくしが油絵を描くと「下描きがなっとらん」とか、デジ画をやると「写真を撮ってそれをなぞってかけ」とかもう余計なことをバシバシ言ってくるんです! うっぷんがたまりますー!


「うっぷんかあ」


 父はわたくしの学費を一切出さなかったうえに、受験費用は文句に文句を重ねて母から支払い以上の金額をせしめたんですよ? はっきりいって、わたくしのパトロンでもなんでもないのに、どうして父の命令で絵を描かねばならないか! ということなんだよ。


「頭くるでしょうね」


 すっごく!!!


 だいたいね、言っても聞かないんです。


 油絵の下絵はしゃぶしゃぶ描きといって、アンバーかビリジアンをオイルで薄めに薄めて下塗りを施すものなんです。


 なのに! なんで完成してない絵を見て「おまえの絵はわけわからん。これはこんな色じゃないだろう」と言って、こき下ろすわけ? わかってないのはおまえだろ!!!!! 絵には過程があるわけだよ。


 それなのに、描き終えた絵を見て「お父さんがおまえを叱ってやったおかげだぞ」と自分の手柄にする。


「自殺よ!!!」


 頼むから口を閉じててくれよ! 父!!!!!


 正月には家に来て、壁に貼っていたスコちゃんのデジ画を見てなにを思ったか「背景を描きなさい。その辺の写真を撮ってなぞって描け」とかいう!!! デジ画にはデジ画の書き方があるんだよ! おまえの出る幕ではないわ、たわけ!!!


「そしたら?」


 最初は説明してわかってもらおうとしたんだけれども、何回言っても「でも、この色はちょっとなあ。おかしいだろう」とくる。


 だから、下絵は後からにじまないアンバーとグリーンにしないと仕上がりがおかしくなるんだよー!!!!!!


「ちがうわね」


 ?


「おまえはカッカしてるのは、芸術家だからよ。不満がどうとかじゃない」


 じゃあ、どうすれば解決するの?


「芸術家やめればいい」


 すきで芸術家なんじゃないし、どうやってなったかも知らないのに!?!?


「でも、嫌だと思ったらやめた方がいい」


 めっちゃいや!!!!!


「やめるしかない」


 うん。

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