第16話 再びの再会
「どうしても赤の国ブレッディ王国を通らないといけない…。まぁいつもみたいに変身して大人しくしていれば大丈夫だと思う」
とトラヴィスは言ったけど、私は不安だった。
赤の国にはあのヒロインのシャーロットもいるだろう。彼女はゲームの設定上、特殊な力を持っていた。
入れ替わり魔法には気付かなかったようだけど…変身魔法を見ただけで見破る能力を持っている。この事を知ってるのは転生者でゲームをプレイした事のある私とあのヒロインだけだろう。
でも彼女は赤の第一王子クリフォード・ハドリー・アダム・ブリントンと良い仲になっている筈…トラヴィスのこともあっさり捨てたようだし大丈夫だよね?
トラヴィスは私が考え込んでいるので
「シャーロットの事か?あれにはもう感心がないと言ったろ?俺はもう…マティルダしか感心はない」
と真顔で言うから恥ずかしい!
「いや、トラヴィスが無くても向こうはどうだろうねぇ?」
一応彼女はトラヴィスが推しだったはず。トラヴィスが手を出さなかったから流れで赤の王子クリフォードに行ったのかな?まぁ会わないに越した事はない。今まで通り目立たなければいいし、それに奴等はお城にいるでしょ?流石に。と思い直しさっさと赤の国を通過しようと思っていた。
しかし…。
赤の国のリコーピドの街…王都から少し離れた小さな温泉街が通り道で避けられなかった為に寄るとなんと!宿で受け付けてるとクリフォードとあのシャーロットが腕を組み歩いていた!!
私達は影から見かけただけでまだバレていない!!急いで宿を変えた。
「び、ビックリした!!」
「ああ、まさかいるなんて思わなかった!どんな遭遇率だ!」
とトラヴィスは驚いているが私は何となく強制力的なものかと考えた。ゲーム本編は終わっているが主要キャラが集まるとはね。ヒロインなんか引力でも持ってるの?トラヴィスはシャーロットの推しだからか?
「はぁ…ともかく変装してまた少し薬を買ってくる。猫になるヤツも必要だから…」
とトラヴィスは少し照れながら言う。
そうかやはり旅をしてるとストック切れるもんね…。
「わ、私も行くわ今回は!」
と付いていこうとするが、いや、この宿にも温泉はあるし出かけてる間ゆっくり入ってていいんだぞ?疲れないか?」
「大丈夫!!もしシャーロットに出くわしたら大変だし。あの子は変装を見破る能力がある!」
「え??……そうなのか?何故知ってる?」
と聞かれてギクリとする。どう応えよう。
「ま、前に私が変身魔法使ったことがあって…見破られて…」
と誤魔化す。もちろんそんな事実はない。これはゲームで紫の王子編で使う能力に必要だからヒロインが持ってるだけだ。
「でも…本当に休まなくても?」
「トラヴィス!私だってそんなに弱くないわよ!」
「こないだ熱を出したよな」
ううっ!
「温泉街は足湯もあるんでしょ?疲れたらそっちに浸かろう!」
とどうしても付いていくと聞かない私にトラヴィスは折れた。ふっ、惚れられた弱みかしら?私って悪女ね。……。
ともかくいつものお婆さんと弟子スタイルで歩く。髪は赤く瞳はピンクという特徴の赤の民を装った。薬屋を見つけて何とか目的のものを買い込み、次は食料だ。何故か日持ちする缶詰が売られている。
ピンと来た。ヒロインが提案したんだ!
缶詰を見たことがないトラヴィスは
「へぇ…こんなのがあるなら旅に便利だな。少し買ってこう。おお、いろんなのがある…へぇ」
と興味津々である。
赤の国…確かに現代日本に近いものも売られてる気がする。経済も潤ってるみたい。やはりシャーロットが…。
と考えていると視線に気付いた。
見るとシャーロットが通りの向こうから浴衣を着て見ている。赤の王子はいない。
不味い!見つかった!!
「トラヴィス!い、行こうもう!」
「うん、この果物の缶詰もいいな、マティルダこれ好きだろう?」
いや、休日のショッピングする夫じゃないんだから!!
シャーロットがこちらに全速力で向かってきた!!ぎゃあ!!
「ちょっと!貴方達!!こんな所で何してるの!?」
シャーロットの声に流石にトラヴィスは反応して缶詰を落とした。足元に落ちた缶詰をシャーロットが拾いトラヴィスに近付いた。
「トラヴィス様…お久しぶりですわ!」
ブワリと香水のキツイ香りがした。それにトラヴィスは顔をしかめ鼻と口を覆った。
「………?誰でしょう?」
トラヴィスは白を切った。見た目にはダサい格好の弟子で私はお婆さんだ。しかし
「どうしたシャーロット!急にいなくなるから心臓が張り裂けそうなくらい心配したじゃないか!俺から離れるなとあれ程言ったろう?誰かに拐われたらどうするんだ?君がいないと夜も眠れない!愛してるよシャーロット!!」
と恥ずかしげも無く人前でベタベタとシャーロットに絡みつく赤の王子クリフォード。私達は飽きれたがシャーロットは
「クリフォード様!こちら、変装なさったあの青の国の手配書の元侯爵令嬢マティルダさんと第一王子のトラヴィス様よ?」
と言い、正体を暴かれ私達の魔法がさぁっと溶けてしまい、周囲がざわついた。直ぐに憲兵がやってきた。
「クリフォード様!犯罪者のマティルダ様を牢獄へ!今度は逃げないよう魔法封じの鎖に変えて!トラヴィス様は丁重に扱いなさい、ブルメシアに連絡して差し上げましょう!」
と私達に迫る憲兵にトラヴィスは剣を抜いた。
「辞めろ!近づくな!シャーロット!!貴様!よくも俺を騙したな!」
「え?何のこと?もしやまだこの魔女マティルダ様に妙な魔法を?媚薬でも盛られたのかしら?トラヴィス様お可哀想!」
と言う。それはお前だろおおおおと私とトラヴィスは思ってる。
「魔女を捕らえろ!トラヴィス王子もだ!」
とクリフォードが命令するが、トラヴィスは剣で憲兵と闘っている。憲兵はバタバタと倒れる。
すると赤の王子が剣を抜いた。
「シャーロットの心にはまだお前がいるようだな!強制送還する前に俺とシャーロットをかけて戦え!」
となんと決闘を申し込まれるトラヴィスだが
「バカらしい!その女にかける意味などない!哀れな赤の王子よ!そいつは媚薬香水の力でお前を虜にしているとも気付かないか!?」
と言うがクリフォードはもはや手遅れだ。
「ふっ!そんなこと!関係ない!俺はシャーロットを溺愛している!お前には渡さん!」
と剣を向けてトラヴィスに向かう。
剣先同士がぶつかり合う闘いになる。
「だから…シャーロットには俺は興味がないと言ってるだろ!」
「うるさい!彼女の心にお前がまだいる!目障りだ!消えろぉおおお!」
と赤の王子は炎を剣に纏い攻撃する!
ギャラリーが歓声を上げた。
しかしトラヴィスは冷静だった。剣を構えて炎を水の剣で相殺してみせた。ジュワッと激しい水蒸気がぶつかり合った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます