悪役令嬢は断罪後青猫王子と国外逃亡してモフモフスローライフします
黒月白華
第1話 入れ替わりの復讐
私はマティルダ・ジョーダン・ムーアヘッド侯爵令嬢。ジャラリと自分の手首と足に付けられた鎖を見る。綺麗なドレスは取り上げられてボロ布を着せられて汚いベッドに蓋のないトイレ付きの牢獄に入れられて3日目。
お風呂にも入っていない。長かった自慢の手入れされた髪の毛は牢獄に入れられた時に切られたのだ。
そう、3日前に私はこの国の王子に断罪されたのだ。ヒロインを虐めたと言う有りもしない罪をでっち上げられた。
「私はこうならないようヒロインとは接触を避けてきた。でも途中からヒロインも転生者と気付いた。向こうもだ。何としても私を牢屋に入れて処刑させないと王子と結ばれないものね」
そう、私は転生者。
前世の乙女ゲーム「七色王子の姫君は」のプレイヤーであった。ゲームでは最初に七色の王子の誰かを攻略対象に選び進めていく。私は青の国ブルメシア王国のトラヴィス・ピーター・ブラッドフォード・マケルハイニー第一王子の婚約者で悪役令嬢と言う立ち位置であった。
私と王子は政略結婚という婚約がなされていた。ゲームではマティルダは王子に本気で恋をしていたようだけど、今の私は違う。むしろ王子が嫌いなタイプだった。
転生したと判ったのは物心ついた頃で既に婚約はなされていたが特に王子に興味はなかった。しかも王子より頭がいいから嫌われていた。私も嫌いだったからお互い関わらないように生きてきて、王子は学院でヒロインに会い恋をする。
そして私はでっち上げの証拠を突きつけられ断罪されたのだ。
「ムーアヘッド侯爵令嬢は風魔法を使い、俺の大切なシャーロット・ジェニファー・クライトンを階段上から突き飛ばし怪我を負わせた!!彼女の精霊が力を貸さねば死んでいた!よってここに断罪する!貴様は処刑だ!」
誰かが映像魔法を捏造してさも私になりすましてヒロインのシャーロットを風魔法で突き飛ばす場面が映された。
私は何も言えず、捕まり牢屋に入れられたというわけだ。
しかしこのままでは終わらない。私はこうなることをいつか予想していた。もしヒロインも転生してくるなら悪役令嬢の私を陥れることなんて造作ないだろうと。
だから転生者と自覚した頃からある計画を練ってもう勉強したのだ。あいつらただでは済まさない。
もちろん逃げることだって考えたが腕の立つ騎士に捕まるのがオチ。逃げられないなら…。
「王子と入れ替わるしかない!!」
くくくと笑う私。
そこに臭い飯が運ばれてきた。
兵士がガシャンと器を置いて私を舐めるように見ている。…また犯す気?
しかしカツカツと階段から足音が聞こえた。兵士は灯りを持ち照らすとそこに現れたのはトラヴィス王子だった。
「王子!このような所に護衛も付けずに!」
「上に待たせてある。話がしたい。お前も行け」
「はっ!」
と兵士は階段を上がって行く。
威圧的な目で見下ろす整った顔立ちの青髪で空色の瞳の王子がその場で不適な目を向けた。
私もこの国出身なので同じ青髪と空色の瞳だ。もちろん他の国同士で結婚すると髪も瞳も違う子供が産まれるだろうけど、うちの両親は母国の貴族同士で結婚した。だからどちらも青い髪に空色の瞳をしている。
「気分はどうだ?マティルダ?君の処刑が決まった。明日だよ!最後にその惨めな顔を見にきてあげたよ!君と婚約破棄出来て最高の気分だ!死んでくれてありがとう!」
と言う。私も負けずに
「最後の晩餐ならもっと豪華なものにしたらいいのに?お可哀想に」
と笑う。
王子は気に食わなかったらしく
「は?処刑前に随分強気だな?この庶民が!」
と器をひっくり返された。
私は
「あーあ…勿体ない」
と嘆いた。それを見て王子は笑う。
「そんなに勿体ないなら床を舐めればいい」
「あら、それはいい考えですね!是非そうしてください!…レキータ・ヴェル・イシュヴァハート!!」
と唱えると私と王子は膝をついて気を失った。しばらくして立ち上がる。長い指を見た。
そして目の前に倒れている私の体も見た。
「くく、成功だわ!入れ替わった!!」
と王子の身体を手に入れた私は笑った。
少しすると頭を抑えた王子、私の身体をした王子が真っ青になり見た。
「なん、だこれは??どういうことだ!?」
「見て解るでしょう?トラヴィス様。いえ、今は私が…トラヴィスね!」
「き、貴様!!」
「ふふふ、明日処刑されるのはトラヴィス…貴方よ!?この為に勉強してきたの!入れ替わりの魔法をね!!」
と私が言うと王子は震えた。
「元に戻せ!!」
「嫌よ。そしたら私死んじゃうもの!私はこのままトラヴィスとして生きていくわ。ふふ、シャーロットもそのうち暗殺しとくわ」
「や、やめろこの悪魔!!頼むから戻してくれ!なんでもするから!!」
私は必死で頼むトラヴィスに
「…まぁ、私の身体が死ぬのは見たくないから特別に貴方を生かしてこき遣ってやるわ!!いい気味ねトラヴィス様!その身体に入ってる間、私がされたこと…確かめるといいわ!」
「な、何だと!?」
私の声をして私の姿をして困惑している中身のトラヴィス。
「入れ替わりの魔法は私が一人で研究して何年もかかり完成させたものよ。だから誰も知らないの。もちろん元に戻る魔法も開発してあるわ。私だけが知ってる。魔法の研究資料はここに入れられる前に全て焼いたから探しても無駄。訴えても頭がおかしくなったと思われるだけよ」
「マティルダ…愚かな女!絶対に許さないからな!!」
「抵抗してごらんなさい。私を傷付けるということは自分自身を傷付けると同じこと。もし貴方が私の身体を死なせたとしても私はトラヴィスとして生きていく」
「ふざけるなっ!絶対に俺は元に戻ってやるっ!」
私の姿をしたトラヴィスは叫んで睨んでいる。
私はようやく長年の苦しみが終わったのだと思った。
これから楽しくなりそうだわ。
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