こむぎとくるみ
モリナガ チヨコ
第1話 くるみという存在
こむぎはいいよね
なににでもなれて。
いやいや、おれなんて地味だもの。
くるみみたいにオシャレで個性のある存在にはなれないよ。
…。私なんか、ただのお飾りよ。
正直、はじめにくるみに声をかけた時は、おれもそういう気持ちだった。
くるみの華やかさを利用すれば、人気が上がる。
実際、同じ事をしていても、くるみが顔を出してくれるだけで、需要がぐっと高くなった。おれ一人で打ち合わせに行くと「あれ? くるみちゃんは今日は?」なんて、忘れ物をしたみたいに確認されたりして。
土台は、おれが作ったものなのに、ポスターにはデカデカと「胡桃」「クルミ」「くるみ」。その文字だけで人が集まる。
ありがたい。売れ残るなんてことがなくなった。いつも、ソールドアウト!! が気分が良いし、売れれば更に話題になり儲かる。儲かれば、次の創作の動力になる。
まずは多くの人の目に触れ認めてもらえるように、おれにとって、くるみの存在は今や無くてはならないものになっている。
一緒にいる事である意味、最強タッグというわけだ。
だがしかし、、くるみの華やかさが、悩みのタネでもあるのだ。
何を作ったとしても、全てくるみが主役のようになってしまう。
おれの作品であるのにもかかわらず、まるでくるみありき。どんな新しいものを作り出したとしてもくるみ色。正直、やる気がうせる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます