こむぎとくるみ

モリナガ チヨコ

第1話 くるみという存在

こむぎはいいよね

なににでもなれて。


いやいや、おれなんて地味だもの。

くるみみたいにオシャレで個性のある存在にはなれないよ。


…。私なんか、ただのお飾りよ。



正直、はじめにくるみに声をかけた時は、おれもそういう気持ちだった。

くるみの華やかさを利用すれば、人気が上がる。

実際、同じ事をしていても、くるみが顔を出してくれるだけで、需要がぐっと高くなった。おれ一人で打ち合わせに行くと「あれ? くるみちゃんは今日は?」なんて、忘れ物をしたみたいに確認されたりして。

土台は、おれが作ったものなのに、ポスターにはデカデカと「胡桃」「クルミ」「くるみ」。その文字だけで人が集まる。

ありがたい。売れ残るなんてことがなくなった。いつも、ソールドアウト!! が気分が良いし、売れれば更に話題になり儲かる。儲かれば、次の創作の動力になる。

まずは多くの人の目に触れ認めてもらえるように、おれにとって、くるみの存在は今や無くてはならないものになっている。

一緒にいる事である意味、最強タッグというわけだ。

だがしかし、、くるみの華やかさが、悩みのタネでもあるのだ。

何を作ったとしても、全てくるみが主役のようになってしまう。

おれの作品であるのにもかかわらず、まるでくるみありき。どんな新しいものを作り出したとしてもくるみ色。正直、やる気がうせる。




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