(5)眷属について
本日(2020/12/5)投稿2話目(2/2)
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アイの進化は、その能力を特に戦闘方面で大幅に伸ばすことになった。
以前もできるだけ細かい動きができるようにと頑張ってはいたのだが、せいぜいが手の関節が増えて物が作りやすかったくらいで全体の能力が伸びるなんてことはなかった。
それはそれでできることが増えて俺も含めて喜んではいたのだが、今回の進歩に比べれば大したことではないと考えてしまうくらいだ。
それではどれくらいに能力が伸びたのかといえば、エリアボスと相対しても複数の眷属と一緒に戦って何とか――しかも、あくまでも補佐することくらいだった。
それが今では、単独で倒せるくらいになったのだから大進歩どころではない。
勿論いきなりエリアボスに突っ込んで検証したのではなく、領域内に出てくる魔物を相手に徐々に格をあげていった結果、エリアボスでも大丈夫という判断がされていた。
そんなこんなであっという間にエリアボスレベルにまで達したアイだが、当人はあくまでも物づくりにこだわっている。
アイが作る罠は領域内の重要な要になっているので、俺としてもそれを止めるつもりは全くない。
アイの進化に関しては、彼女自身の能力が伸びただけではなく、生産能力にも大きな成長が見られている。
具体的にいえば、ゴーレム魔法と召喚魔法が合わさったような魔法が使えるようになっていた。
その魔法は何かを媒介にしてゴーレムを作り出す魔法で、今のところはそこら辺に落ちている木の枝を使って以前のアイをもっと簡素にしたようなゴーレムを作り出すことができる。
試しに世界樹の枝で作ってみるかと聞いてみたが、それはさすがにまだまだ手が出ないと断られてしまった。
領域を守るうえで戦力増加になるのであれば枝くらいどうということはないのだが、アイにしてみればそういう問題ではなかったらしい。
アイが今使えるその魔法はかなり低レベルのようで、下手をすれば野生動物の赤子にさえ負けるようだ。
そんなレベルで世界樹の枝を作ったところで大した戦力にはならず、むしろ無駄に足を引っ張る存在になりかねないそうだ。
それくらいなら魔法のレベルが上がるのを待ってくれと言われてしまった。
そんなアイの進化に他の眷属が焦ったりすることがあるのかと注意深く見守っていたのだが、特におかしな反応を見せる者はいなかった。
それどころか新しく眷属になったミアを除けば、むしろアイなら当然だという態度をとっている。
彼らにしてみれば、一番最初に生まれたことが確定しているアイが強くなっていくことは当然のことであるらしい。
もっといえば、これからももっと進化が進めば誰もかなわなくなるだろうとさえ考えているようだった。
そのことを不思議に思った俺は、最近知恵袋になりつつあるラックにそのことを聞いてみると少し驚いた様子になっていた。
「――ピッピ(まさか、気付いていらっしゃらないとは思いませんでした)」
「うん? どういうこと?」
「ピピピ(私たちの中では明確に序列が決まっています)」
「うん。それは何となく気付いていた……かな?」
「ピピッピ(その時点で私たちとは感覚が違うようですね)」
「あー、そうなんだ。それで、どう違うの?」
「ピピピピイ(私たちの序列は、それぞれが内包している世界樹の魔力の量によって決まっています)」
「……なるほど。つまりは、アイが持っている世界樹の魔力は、眷属の中では一番だと」
「ピピ(そうです)」
俺自身は全く気付いていなかったが、眷属たちの間ではわかり切ったことだったようで、敢えて話題にするようなことでもなかったらしい。
となれば気になることが一つある。
「最近眷属になったミアはどうなのかな?」
「ピピピ(ミアの場合は微妙ですね)」
「というと?」
「ピーピッピ(元の強さがそれなりに強かったところに、眷属になったことで世界樹の魔力が足されましたから)」
「あー。あれって足されたことになるのか」
「ぴぴ。(そうです) ピピーピ(それによってさらに強くなっているのですが、主から与えられた魔力は最低です)」
「単純な強さでは最低ではないけれど、世界樹の魔力という意味では最低だということね。なるほど、それは確かに微妙だね。それで困ったことは起きてないのかな?」
「ピピ。(問題ありません)ピッピピピ(今のことろはルフの番という立場に徹していますから)」
「いや、それって後々問題になるって言っているような気がするんだけれど?」
「ピッピ?(既に主の眷属になっているので、特に問題はないと思いますが?)」
「うん。あれ……? そうなのかな?」
既に眷属となっている以上は、
眷属になることが絶対服従になるのかはまだよくわからないところもあるが、今のところ反抗的な態度をとる様子は見せていない。
もしミアがそのような態度を見せたとしても、ルフがいるので大丈夫だろいうという安心感もある。
問題があるとすれば眷属内での争いなのだが、これもラックの言葉から問題ないことが分かっている。
眷属内での序列は、世界樹から与えられた魔力の量によって決まっているのだ。
最初から存在していた眷属はともかくとして、分体である俺が名付けたことによってなった眷属は他の六体と比べて明確な差があるそうだ。
今後すべての眷属がそうなるかはわからないが、少なくともミアを見ている限りではよほどのことがない限りは超えることがないだろうというのがラックの意見だ。
妖精として表に出ているときのほうが与える力が弱いというのは皮肉めいているが、ある意味では分かりやすいともいえる。
「――――なるほどね。とりあえず今のところは大丈夫だということはわかった……かな? でも今後を考えるとなあ……むやみに眷属を増やすのはやめた方がいいかな?」
「ピッピ?(どうでしょうか?) ピーピピピ(一つ言えるのは、そこまで心配する必要はないと思いますよ)」
「それは何故?」
「ピピピピピ(主が眷属にするということは、領域内にいるか領域に含まれた魔物でしょうから)」
「あー。少なくともラックたちより強いということはないということか」
「ピ(そうです)」
「逆にいえば、眷属に出来ないような相手が出てきたときは、領域自体が危なくなっているというわけね」
「ピピ(そうならないようにするだけです)」
「それもそうか。とりあえず納得したよ。ありがとう」
「ピ。ピピィー(いいえ。こういうことでしたらいくらでも聞いて下さい)」
ラックのお陰で眷属についての知識が増えたわけだが、知っておいて損はない内容だった。
眷属を作るときに今回の話を気にするかどうかはわからないが、よほどのことがない限りは心配ないということもわかった。
問題はそのよほどのことが起こった場合だが、そこまで気にすると領域の拡張自体できなくなる。
領域の拡張も今のところは順調に進んでいるのだが、何が起こるか分からないという意味では同じような危険なのだ。
領域の拡張がそのまま世界樹の安全と安定に繋がっていることはわかっているので、今のところ拡張を止めるつもりはない。
これ見よがしに拡張ゲーだという雰囲気を漂わせている以上は、ある程度のところまでは広げるつもりだ。
今のところ確定しているのは、(恐らく)でっかいどーの攻略が終わるまでは拡張を止めるつもりはない。
それまでにどうしても倒せないような相手が出てくることがあれば別だが、少なくとも四方を海に囲まれているということで安全圏を確保しておきたい。
話がずれてしまったが、今のところ眷属については問題がないということはわかった。
こんご眷属が増えるかどうかは不明だが、安心材料の一つであることには違いない。
戦力拡大という意味においては眷属を増やすのは大いに意味はあるのだが、それ以外の方法もきちんと見つけておくべきだろう。
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