(6)領域
本日(2020/11/23)投稿2話目(2/3)
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初の侵入者を倒した後は、魔石だけを回収してもらってから本体がある場所へと戻った。
ちなみに本体というのは幹がある場所のことで、地下に幅広く張っている根のことは考慮に入れていない。
本体傍にまで戻ってからは、眷属たちに好きにしているように言いつけて、一度本体の中に帰った。
その際に魔石の持ち込みができるか一応確認したのだが、どういう理屈なのか持ったまま中に帰ることができた。
魔石を持ったまま本体の中に入ったタイミングで、例によってシステムの警告音が流れたので、すぐさまログの確認をしてみた。
(おお。知らないところでログが色々と増えているな)
分体ではないので声を音として出すことができないので、脳内補正で声にしている。
ざっとログを確認してみると、主にオークの侵入から戦闘結果、本体に魔石を持ち込んだところまでが記載されているようだ。
外で起こったこととログに残っている内容をまとめると次のようになる。
・転生先は世界樹。
・六人の眷属がいる。
・転生体は世界樹の精霊。
・世界樹には領域というものがあり、分体で行ける範囲は領域内のみ
・領域内で魔物と戦闘を行うと経験値が入る。(領域外で要検証)
・経験値がたまるとレベルアップする?(ログからの考察)
・分体で得たものを本体の中に取り込むことができる。(魔石のみ?)
・経験値は戦いに関係した眷属全員に入る。(レベルアップもあり?)
細かいところはまだまだありそうだが、大雑把にまとめるとこのようになった。
そもそも分体で戦闘が行えるかどうかもわからないままだが、少なくとも自分自身で戦闘を行わなくても経験値を得ることができることがわかった。
あとは、オーク程度の相手だと眷属たちにとっては遊びにしかならないといったところか。
世界樹の周辺にいる魔物がすべてオーク程度であればいいのだが、それ以上の相手がいることを想定した上で今後の予定を立てる必要がある。
それから一度分体で『外』に出るという経験をしたおかげなのか、外の状況がある程度把握できるようになっていることに気が付いた。
勿論把握できるといっても目で見た情報のようにはっきりと見えるというわけではなく、自分の位置から眷属たちの様子がなんとなく感じ取れるようになっていた。
これはあくまでも推測だが、分体になっていた時の様子から侵入者があった場合もその位置を把握することができるはずだ。
少なくとも分体だった時には把握することができていた。
これらのことをまとめた上で、次にすべきことを考える。
まず周辺状況の確認は、継続して行うことになる。
分体での移動は制限があるが、眷属たちには制限がない。
あくまでも感覚だよりにはなってしまうが、出来る限り周辺の状況は確認したうえで共有しておく必要があるだろう。
それに付随するのが、領域外で魔物を倒したときに経験値がどうなるかだ。
最悪俺自身には入らなくても、戦闘を行った眷属には入ってほしいところだ。
それがなければ領域内にまで魔物が入ってくるのを待っていなければならない。
そうなると積極的に外に出て倒すよりもレベルアップが遅くなってしまう。
勿論、領域外から魔物を釣ってもらって領域内で倒すという方法もあるが、どう考えても限度がある。
続いて自分自身のことだが、検証することがいくつか出てきた。
……のだが、これは自分ひとりだけでもできることなので、まずは領域内の調査を眷属たちにお願いすることにした。
もっともお願いといっても分体で体の外に出て、言葉で指示を出すだけなのだが。
幸いにして眷属たちは、その指示を快く聞いてくれた。
基本的に食事をとる必要がない眷属たちは、俺からの指示がなければすることがなく世界樹の周辺で休息をしているくらいしかすることがない。
眷属としての性質がそうなっているのかは不明だが、俺からの指示があったほうが彼らにとってはうれしいことだそうだ。
ただし周辺調査については快く引き受けてくれたが、俺自身が本体の中にいる場合は本体、分体になっているときには分体の護衛は絶対に外せないと力説された。
言葉を話せるのはシルクとクインの二人だけなのだが、その他の眷属たちからも物理的な力があるんじゃないかと錯覚するくらいの圧力のようなものを感じるくらいだった。
いずれにしても、周辺調査と経験値稼ぎは継続して行うようにお願いしておいた。
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眷属たちに指示を出したあとは、再び本体に戻って検証を行う。
まずは魔力操作の検証だが、これは例の『塊』がすでに魔力だと確定しているので暇さえあれば訓練を行うことにする。
スキルにレベルがあるかはわからないが、やっておいてそんはないだろう。
そして次に試したかったことが、魔力の塊を移動したうえでの分体生成だ。
先ほど行った分体生成では、本体の幹の部分で分体生成を行っていた。
これを枝の先や根の端っこで行うとどうなるかを試すのである。
結論から先に行ってしまえば、この試みは目論見通りになった。
具体的に言えば、枝の先で分体生成をすれば枝の先に、根の端っこで行えばその場所で精霊の体を作ることができたのである。
そして根の端っこで分体生成を行ったときに、とあることがシルクのお陰で判明した。
「次はこちらで実験ですの?」
「うん。今度は根っこで試してみた」
すでに眷属たちには分体生成の検証を行っていることが知られているので、幹のある部分から大分離れた場所に出現した俺を見てシルクが驚いていた。
ちなみにシルクが何故この場所に出現するのか分かったのかといえば、これも何度目かの分体生成の検証でわかったことなのだが、俺が魔力の塊を体内で移動しているときにはその動きが眷属たちにも伝わっているらしい。
これが眷属たちだけなのか、別の存在(例えば魔物など)にも通用するのかはわからないが、ある意味では弱点になりかねないので注意が必要だろう。
そのことについてはすでに眷属たちとも共有していて――というよりも眷属たちの方が危機感を持っているようで、俺が魔力の塊を移動させるたびに必ず誰かがついているようにしているようだった。
今回の実験でわかったのはそのことではなく、別のことでシルクがふと気が付いたように言ってきたのだ。
「……あら? 見覚えがあると思えば、こちらは前の境界だった場所ではありませんか?」
「境界……って、もしかして領域のこと?」
「そうですわ。以前は確かこの辺りで途切れていたはずですわ」
「なるほどね。ということは、もしかすると以前の領域は根が届いている範囲だった可能性があるかな?」
「そうですの?」
「恐らく、だけれどね。――というわけで、それの確認のためにももう一回行ってみようか」
「あ。ちょっと……! ……って、もう行ってしまわれましたね。次の場所がわたくしの記憶にある場所かどうかわかりませんのに。……仕方ありません。他の方にもついてきてもらいましょう」
分体生成を終えて本体に戻っていた俺には、シルクの最後の言葉は聞こえていなかった。
そんなこんなでいくつかの根の端っこで分体生成をした結果、予想通りに拡張するまえの領域は根の端っこだったことがわかった。
現在の領域は根に関係ないところまで広がっているのであまり意味はないかもしれないが、もしかしたら初めは根の端っこだったことが重要な意味を持つかもしれない。
そんな結論を得て、分体生成についての調査をある程度終わらせた。
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