(4)現状の確認
本日(2020/11/22)投稿3話目(3/3)
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というわけで早速周辺探索をお願い……しようとしたのだが、ここで問題点が浮かび上がってきた。
まず一つ目だが、眷属たちは俺が分体生成できるようになる直前に生まれたわけではない。
聞くところによると一番に誕生した
それか自然なのか意図的なのかはわからないが、その枝が落ちて正式に(?)木人となったようだ。
問題なのは、普通の枝だった時に何度も世界樹の魔力が通るのを感じていたらしい。
これはどう考えも俺が魔力操作で自身の体の調査を行っていた時のことだと思われる。
そこから他の眷属たちが生まれてくるわけだが、アイが木人になってから時間をかけて誕生している。
ではアイが出来てから俺の分体ができるまでにどれくらいの時間がかかっているかということだが、どうやら数か月以上は経っているようだった。
そもそもこの世界での暦がどうなっているのか分からないのでその単位があっているのかは不明だが、少なくとも太陽の出てきた回数は百回以上だということだ。
眷属たちの誰も日付を記録するという習慣を持ち合わせていないので、残念ながら正確な日数は不明だ。
こればかりは仕方のないことなので、俺が分体生成で外界に出たときからの日数を記録していくことにした。
さらに問題点その二だが、この世界というか俺たちがいる場所には正確な距離を測る道具がないことである。
測量機がないのは当然のこととして小さな定規すら手元にあるわけではない。
というわけで、いつまでの無いものねだりをしていても仕方ないので、当面は俺が「これくらいが一メートル」とした大雑把な基準で距離を算出することにした。
ミリ単位どころかセンチ単位で誤差が出ていそうだが、こればかりはどうしようもない。
いずれは正確に距離を測ることができるように、定規なりメジャーなりを作るしかないだろう。
そして日付と距離の問題をどうにか解決しつつ、これまでの話で気になったことを聞いてみることにした。
ちなみに今のところ俺と正確に話ができるのは、人型としての口を持っているアラクネのシルクと魔蜂人のクインだけである。
「――ということは、世界樹の魔力が満ちているところには限界があるってことで間違いない?」
「ええ。その通りです。皆で協力して確認したところちょうど円形になっているようでした」
「距離はどれくらいかわか……るわけないよね。一応の基準を決めたのもたった今だし。あ、わざわざそんなことで謝る必要はないから」
俺の言葉を聞いて申し訳なさそうな表情になったシルクとクインに、慌ててそう付け加えた。
眷属たちは、何かあるたびに謝罪をしてきて話が中断されるので注意が必要だ。
「ちなみに、その範囲に魔物とかは?」
「今のところ確認できておりません。野生の動物は入り込んだりするようですが……駆除しますか?」
「うーん……。食べる必要があるならそうするけれど、必要ないんだったらそのままでいいや。いずれは狩ることもあるかもしれないけれど」
「狩るのですか?」
「うん。栄養源としての食事は必要ないかもしれないけれど、嗜好品としては食べられるかもしれないからね」
「そういうことですか。畏まりました」
精霊の体に食事が必要かどうかはわからないが、少なくとも木として過ごしているときには食事は必要ないことが分かっている。
植物の本能(?)として光合成したり地下から栄養を補給したりしているのだろう。
それは便利なのでいいとして、こうして体を持った以上は食事もしてみたい。
前世ではそれほど食事にこだわるタイプではなかったのだが、全くしないのも寂しいと思ってしまうのだ。
「とりあえず食事に関しては保留でいいや。特に急ぐ必要もないみたいだしね。あと魔力の範囲内に魔物が入ってくるようだったら基本的に駆除する方向で。話がしたそうだったら俺のところまで知らせて」
「はい」
「取りあえずはこんなところかな。あとは今後の予定だけれど……まずは魔力範囲外の状況を知りたいかな。まだそこまでは調べていないんだよね?」
「各自で散歩程度の確認はしていますが、詳細まではしておりません」
「その詳細ってのがどのくらいか気になるけれど……今はまだいいか。とにかくまずは、その魔力の範囲というのを見に行ってみようか」
「全員でですか?」
「そうだね。みんなの認識が一緒かどうかも確認したいし」
「かしこまりました」
クインがそう言って頭を下げると、他の眷属たちも各々体を伸ばしたり立ち上がったりして出発の準備(?)を始めていた。
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世界樹の魔力の範囲とやらを確認するために、皆でぞろぞろと移動を開始する。
ちなみに精霊の小さい体になっている俺自身は、ルフの背の上に乗せてもらっている。
最初は恐る恐るだったのだが、数分も経ったころには完全に慣れている。
俺がルフの背に乗ると決めたときには、なぜか他の面々がうらやましそうな感じを出していたのだが、敢えてそれは無言のまま無視をした。
言葉に出せば何やらひと悶着おきそうだと、雰囲気で察したためである。
道中の環境は松やミズナラなどの木が生えていて、ごく一般的な森林といった感じだ。
もっとも俺自身はそこまで植物に詳しいというわけではないので、何か元の世界と違っている点があったかもしれないが、少なくとも気づくことはなかった。
そんなこんなで周囲の観察をしつつ目的地に着いたわけだが――、
「ここまでが魔力の範囲内?」
「はい。そうで……って、主様!?」
ルフの背から降りて……というか浮き上がって先に進もうとしたのだが、見えない壁のようなものにぶつかって思わず「いてっ……!」と声を上げてしまった。
「大丈夫大丈夫。いや、大丈夫なんだけれど大丈夫じゃないというか……なんだろう? 壁がある? 皆はこの先も進めるんだよね?」
「は、はい。私たちは特に何もありませんが……」
「うーん。ということは、俺にだけ作用している何かがあるという……って、ここでか」
クインと話をしていると、三度目となるシステム的な効果音が頭の中で流れてきた。
『ピンポーン。領域の確認が初めて行われました。これにより領域のさらなる拡張とレベルの表示が行われます』
「領域の拡張とレベルの表示、ね」
早速ステータスを確認してみたが、種族と職業の欄にそれぞれ『LV1』が追加されていた。
領域とやらを確認したことで、ようやくゲームとしてスタートとしたということでいいのかな?
ついでに領域の拡張というアナウンスもあったので確認してみたが、先ほどまで壁のようなものがあって進めなかったのが見事に進めるようになっていた。
そんな俺の様子を確認していた眷属たちが不思議そうな顔になっていたが、ゲーム的な内容をどう説明するかで悩んだ挙句、細かい説明をするのは諦めた。
しかしこの領域なるものがあるということは、このゲーム(らしきもの)は領地取り的な要素があるということだろうか。
今はまだ単純に広がっただけのようだが、いずれは敵対的な領域が出てくるかもしれない。
それにそもそも領域とやらがどんな空間かもわかっていないので、細かく調べる必要がある。
それにはまず、広がった領域とやらを確認する必要があるだろう。
そんなことを考えていると当然のように黙り込んでしまい、周囲にいた眷属たちから不思議そうな、それでいて心配するような視線を向けられるのであった。
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本日の投稿はこれにて終了。
明日も同じ時間の投稿になります。
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