かみさまシリーズ
Rui
かみさまのげぼく
「……ふん。くだらんな。
一笑するのにすら値せん。
貴様はそんな下らんものに命を賭けようというのか?
………あまりにも浅薄よ。
のう、
「はい、
女と、傍らに影のようにぴたりと付いている男の子。
まだ小学生…低学年に見える。
ブレザーを着ていることから学生…
かつあの校章はここいらで有名な金持ち学校。
対して女は…すげぇイイ身体だった。
出るトコ出て、背はすらっと、肩までの黒髪ストレート。
モデルみたいな体型と美貌。
でも口調が偉そうな爺さんみたいだから、すごい不自然だ。
二人は、似つかわしくない組み合わせだった。
大学の定期試験を迎える朝。
俺は遅刻しそうだったので、
バイクで学校に行こうとしていた所。
確かに徒歩よりは危険だけれど、通い慣れた道だし
運転に不安はない。
……しかも、急に後ろから声をかけられてそう言われても。
まず自己紹介なりをしてほしい。
「…あの?」
「ふん、気分が悪い。…円」
「はい」
男の子は頷いて乗りかけていたバイクを、
思いきり蹴飛ばした。
「なっ……いて!」
男の子の蹴りか蹴った場所か分からないが、
バイクがすんなり倒れる。
急な出来事だったので、危うくバイクと一緒に倒れるとこだった。
慌てて座席から離れたが、手をハンドルにぶつけた。
「てめっ…何すんだよ!」
明らかに俺に向けられた攻撃。
子供とはいえ、理不尽だ。
俺は男の子に思い切り食ってかかった。
しかし、彼は全然たじろがない。
「我等が主、縷々崎様に向かってその様な態度とは…
片翼とはいえ、…貴様、気は確かか?」
女を庇うように立つ『円』と呼ばれた男の子。
すごい目付きで睨んでいる。
まるで俺が親の仇みたいだ。
その後ろで微動だにせず、
仁王立ちしている『縷々崎』という女。
……誰だ?
てかこの立ち振舞い、どこかの令嬢か?
ピチピチのチューブトップに革スカートなんて、
抜群すぎる体型が強調されて令嬢には見えない。
「…下がれ、円。
さて…貴様は今、『
「お、俺の名前…っ?」
当然のように言い当てて見せる、縷々崎という女。
その瞳に、何故か迫力を感じた。
人知を越えた…なんかすごいモノ。
「おま、え……何者なんだ…?」
圧される。
二人の雰囲気に。縷々崎の笑みに。
…なんだ?
何で俺に、この二人は俺の前に
当たり前のように立っている?
こんな二人に、声をかけられているんだ?
…全然知らない。見たことも。
それなのに、
——どうして俺は
この女から立ち去れない…?!
固まる俺に、縷々崎という女はたっぷり沈黙してから
笑うのを止めた。
そして、形のいい唇が動く。
「貴様は私の下僕だ」
理由になってない。
反論しようとするが、
頭のどこかで『納得』した自分がいる。
…いやいや、いや。
「い・意味が、分からん。
俺はお前なんか知らねぇぞ!」
「知らなくても、そうなのだ。
全く何処をほっつき歩いていると思ったら……下らぬ。
——鈴虎、私と来い。
そんな人間の受ける…テストとやらに執着せずともよい」
「っな…なんで知って…!」
俺がいちいち驚くのに腹が立つのか、
縷々崎…の横にいた円と呼ばれた男の子が舌打ちする。
こ、こぇえ…何なのあの子。
そんな怒りを買うような発言してるの俺。
「まぁとりあえず着いて来い。
忘れているなら、貴様に教えてやろう」
「何を?」
全く尊大な態度を変えない縷々崎は、くるりと背を向ける。
何故か慌てて…縷々崎を追いかけた。
——何でだ?
「どこ行くんだよ?」
歩く縷々崎に、黙ってついていく円。
二人を追いかけながら、俺は首を傾げる。
俺の問いに、縷々崎がこちらを横目で見ながら答えた。
「何処って…私の世界だが?」
当然のように、
堂々と言い放つ縷々崎は、まるで
———神様のようだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます