『あめか』………『白い家シリーズ A その1』

やましん(テンパー)

『あめか』


 あめだろうか



 あめだろうな



 ぼとぼとと、音がするから



 ぼと、ぼと、ぼと



 あめさんに違いなし。


 深夜のあめは、すがたが みえない



 ぼと、ぼと、ぼと


 まるで、幽霊さんの ダンスのようだ


 三拍子にも、二拍子にも聞こえる


 ならば、八分の六拍子にしようね


 それは、舟歌のリズム


 粋な、運河の舟歌さ


 ああ、


 しかし、地獄舟の舟歌にも聞こえる


 たくさんの地獄舟が


 家の回りを取り囲む


 あらら、神なりさまが、ご登場らしい


 あわてて、パソコンのコードをカットする


 今は、買い換えなんかできないからね



 ゆうべ、奥様が言った


 あなたの年齢なら、みんな仕事に行っている


 だれも、としよりなんて、思わない。


 せいふさんも、働け、働け、と、言っている



 励ましてくれたのかな



 さげすんだのか



 いや、さげすまれたのだろう


 そうした、言い方だったから


 


 ぼとぼとぼとぼと…………………



 あめさんは止まらない


 足取りが、早くなる



 地獄の使者は、現れるのか


 死神ももさんが、また、狙ってくるのか、


 心臓どきどき


 あたまが、ふーらふーら


 息をひそめて、やりすごすか?



 いいや、では、この あめさんのなかを、堂々と、歩いて行こう



 どこまでも


 はるかな、向こうに



 この先には、大きな貯水地がある


 そこには、実は、女神さまがすんでいる



 やましんは、たべたくない、と、言っている


 だって、おいしくないもの、と


 だから、入ってくるな、だって



 だってさ



 しかし、さらにさかのぼると、次元の分かれ目がある。


 めったに、開かないが



 たまに、開くのだ


 次元トンネルの入口が開く場所


 商店街の中にもあるけど、最近は閉鎖されたまま


 やましんが、いちど、迷い込んでいらいは。



 ならば、叩いてみよう


 

 その先には あの永遠の 白い家があるのだから



 すべての 時間が停止した 白い家が


 

 幸せの、白い家が




        🏡



 あ、寝てしまった。



 


  



 


 

 

 

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『あめか』………『白い家シリーズ A その1』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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