あしたの文化祭、予定あいてますか?
栞
プロローグ
9月9日 午後10時30分
「スマホとって帰るだけ…スマホとって帰るだけ…」
ぶつぶつとお経のように唱えながら、宮野みやこは、薄暗い渡り廊下を歩いていた。
分かっていたことだけど、夜の学校はかなり不気味だ。
月明かりで照らされたリノリウムの床は、歩くたびにぺたぺたと鈍い音を立てる。わたしの足音だけだよね、別の音とか混ざってないよね、なんて考え出したら、怖くてこれ以上進めなくなりそうだ。
うぅ帰りたい。ユッキ、やっぱり無理だよ。
心の中で叫んでみても当然誰も助けにきてくれない。
親友のユッキは、
「夜の学校探検、付き合ってあげるから。10時ごろに学校前集合だよ~」
なんて昼間は調子のいいことを言っていたくせに、さっきみやこが出掛ける直前になって家の固定電話に連絡が入り、
「ごめん! 急用が出来て今夜はいけなくなった。本当にごめん!」
と謝ってきたのだ。
「え、じゃあわたしもやめる。一人で学校に忍び込むなんて」
「それはダメ! 絶対行かなきゃダメ!」
ということでみやこは一人、うす暗い廊下をびくびくしながら歩き、誰もいない(たぶんいないと思う)職員室へ向かっていた。
別にスリルを楽しむために学校に忍び込んだ訳じゃない。
みやこの目的はただ一つ。
没収された愛用のスマホを取り戻し、幼なじみのハルちゃんからのLINEの返事を確認することなのだ。
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