第446話:反撃開始。
ママドラ、加減してる場合じゃない。カオスリーヴァの力を借りるぞ。
『……分かった。それ相応の負担がかかるけどいいのよね?』
そんなの今更だろ。
俺だけじゃ上手く引き出せないだろうから繋ぎを頼む。
『ええ、任せて。私がリーヴァの力を核から引き出してみせるから』
その言葉通り、俺の身体には力が漲っていく。
勿論カオスリーヴァの核を取り込んでから俺の力は相当に強化されていたが、それとは訳が違った。
今まではママドラが意識的に俺に負担が少ないように制御していたのかもしれない。
「最強で、最恐の竜の力……これなら」
やれるかもしれない。
マリウス、ゲオル、シルヴァの力を取り込んだギャルン相手だ。それでも油断は出来ないが、俺がこいつをここで始末しないと大変な事になる。
もう負けは許されない。
キララはともかく……ティア、すまん。
恨んでくれて構わない。
「いくぞ!」
俺はギャルンの本体、キララの身体へ一直線に飛び掛かる。
勢いよく縦回転をかけながらディーヴァを振り下ろすが、ダンテヴィエルで防がれてしまう。
しかし、手応えは感じた。
受け止めたギャルンも容易く、という訳ではない。
単なる力押しでは押し切れないが、これならやり方次第では何とかなるかもしれない。
「蒼君! サポートするよ!」
ネコの姿をした彼女が掌をこちらに向けると、ふわりと身体が軽くなる。
まるで体重なんて一切なくなってしまったかのようだ。
「ぐっ、おぉ……!?」
ディーヴァを受け止めていたギャルンが急に押し込まれ、地面にその足が埋もれる。
ギャルンは堪えきれなくなり、ダンテヴィエルを斜めにして俺の攻撃を受け流した。
ギィィィ! と金属音が響き、ディーヴァとダンテヴィエルが擦れ合う。
俺は足から魔力を噴出させて空中で無理矢理軌道を変え、その場で横回転。回し蹴りを入れる。
するとギャルンはまともに受けようとはせず、その他大勢のギャルンの群れの中へ飛びのいた。
「貴女の相手はまずこちらですよ!」
わらわらと群がるギャルン達が一斉に俺に向けて多種多様な魔法を放つ。
拘束系魔法、属性魔法、重力系魔法、精神攻撃なんかもあった。
だが、その全てが俺の目の前で霧散する。
何が起きたのかは分からない。
それはギャルンも同じだったようで、ひどく狼狽していた。
どうやらネコが何かしたらしい。
どう考えても今までのネコとは能力が違う。
アルマに手伝ってもらうとは言っていたが、だからと言って約ニ十体ものギャルンが放った魔法を全てかき消すなんて芸当ネコに出来るとは思えない。
ネコの身体を操っている何者かには聞きたい事が山ほどあるが、彼女が心強い仲間である事だけははっきりした。
俺は戸惑っているギャルン達に向けて、グリゴーレ・デュファンの空間断裂を飛ばし、纏めて始末しようとしたが、それを複数のギャルンが空間を無理矢理修正してしまう。
意図的な空間を強制的にズレさせる事で対称を切り裂くのがグリゴーレ・デュファンの得意なやり方だったが、以前戦った際に見せていた事もありギャルンは対策を用意していた。
ジャミング系で無効化したのではなく、同じく空間系の魔法を使ってズレが生じる場所を即座に元通りにしてしまうという荒業だ。
こちらの魔力の流れを見極めて完璧に対処しなければ出来ない芸当だが、それをギャルンはその大量の自分を駆使する事で可能にしてみせた。
ギャルンに対しては一番の有効打だと思っていただけに俺も焦りは隠せないが、迷っている暇は無い。物理で各個撃破する方向に切り替える。
科学者ガジェット・ガル・ガーディンの記憶から宙に浮かぶ数々の球体を魔導シューター、リン・イザヨイのスキルで具現化。
それらから一斉に熱線を放つ。
勿論これは単なる目くらましだ。
ギャルン達が障壁魔法を張って防いでいる間に暗殺者スキルの影移動を発動。
俺の身体は自分の影の中へ吸い込まれていき、一体のギャルンの影から現れる。
「なっ……!?」
「遅い」
まず背後から一撃で首を落とした後に縦に真っ二つにして一体を始末する。
するとその身体はばしゃりと形を保てなくなり、ドロリとした黒い液体に戻って消えた。
これだけの数量産していると一体あたりの強度が落ちているのかもしれない。
俺が一体を始末している間に背後から別のギャルンが鋭い鈎爪で襲い掛かってくる。
見ている訳では無いが気配で分かった。
ネコのサポート魔法とママドラ、カオスリーヴァの力により感覚が研ぎ澄まされている。
俺は振り向くことなく背後へ重力使いフェイド・リル・シッドの斥力魔法を展開。
そのギャルンを弾き飛ばしながら別のギャルンへ向けて突進。
「聖光翔凰乱舞!!」
ジュディア・G・フォルセティの聖剣技の一つ。高速の十六連撃でギャルン三体がバラバラになりそれぞれ黒い水に戻る。
足元を払ってくる気配があったので飛び上がり、空中で回転しながら自らに重力魔法をかけつつ急降下し、ギャルンの脳天にディーヴァを突き立て魔力を流し込む。
ディーヴァから発せられる魔力を含んだ特殊な音波でギャルンの身体は沸騰したように泡立って弾け飛んだ。
「……」
キララの姿をしたギャルン本体は何も語らず距離を取っている。
何を考えているか知らないが、こんな分体がいくら集まったところで今の俺は止められねぇぞ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます