第434話:いざ最終決戦へ。
胸の奥に残るわだかまりに蓋をして、心の奥の方へしまい込む。
そうでもしないとキララと戦う事なんてできそうになかった。
「おいまだ着かねぇのかよ。本当にこっちで合ってるんだろうなァ?」
「さっきから同じ質問ばかりやめてくれないか。僕がこっちで合ってると言ってるんだから合っているさ。それに、もうじき目的地だよ」
巨大な竜の姿になったゲオルの背に乗り、シルヴァの案内で目的の場所を目指す。
俺も以前の場所がどこだったのかまるで記憶に無いが、シルヴァにはきちんとその場所が分かっているらしい。
「ごしゅじん……もうすぐですねぇ」
「ああ、そうだな……まさか最終決戦にお前を連れて来る事になるとは思わなかったよ。腐れ縁ってやつかもな」
「腐れ縁なんかじゃないですよぉ?」
ネコはさも当たり前のようにそう答えた。
「私とごしゅじんが出会ったのも、ここまで一緒にこられたのも全部全部運命ですから♪」
「運命ねぇ……俺そういうの信じない方なんだけど」
「ごしゅじん、別にこれが運命なんてものじゃなくたっていいんですよ」
さっきと言ってる事違うじゃねぇかよ。
「運命かどうかなんて事が大事なんじゃなくて、結局私とごしゅじんが出会って今一緒に居る事が事実なんですよぉ?」
「……何言ってんのかよく分かんねぇな」
結局運命なのかそうじゃないのかはっきりしてほしい所だが、ネコからしたら俺と出会って一緒に居るこの状況に【運命】って名前を付けただけなんだろう。
「私はごしゅじんと出会えて幸せですよって事ですぅ♪」
「……ああ、そりゃどうも。初めてお前と会った時には本当にどうしようもねぇ奴だと思ってたけどよ、ここまで一緒に来る事になった以上、頼りにしてるぜ」
「はいっ♪」
「イチャイチャしている所申し訳ないが到着だ。先ほどゲートを開く装置の軌道は遠隔で済ませておいた」
遠隔でって……あらかじめ何か細工をしておいたんだろうが、相変わらず抜け目が無い。
「光が来ましたよーっ!」
リリィがシルヴァにしがみ付いたままぴょんぴょんと飛び跳ねているが俺にはまだその光は見えていない。
視力ではなく何か別の感覚器官でも持ってるのかと疑うくらい感度がいい。
『女の子に対して感度がいいとか……』
ここまで来て馬鹿な事言わないでくれる?
そもそも女の子、って年齢かよこいつ。
『は? 女性はいつまでだって女の子ですけど?』
なんでママドラがキレるんだよ……。
そんなやり取りを脳内でしている間に、物凄い勢いで頭上を光が駆け抜けていった。
そしてすぐ先で各方面から伸びてきた光が衝突し、空に小さな穴があく。
カオスリーヴァの時はあの巨体が出てこれるようになるまで穴が広がるのに時間がかかったようだが、俺達はそこまで無理をする必要は無い。
ゲオルが人型に戻りさえすれば小さな穴でも突入する事が出来る。
後の問題は向こう側に行った後すぐにキララ達の居場所を突き止める事が出来るかどうかだが……。
それについてはリリィの索敵能力があればなんとかなるだろう。
それ次第でもう一度ゲオルに乗って移動するかそのまま行くかが変わる。
出来れば目立ちたくないのでそのまま移動できる距離だといいのだが……。
ゲオルが人型になると同時にシルヴァが全員を泡のような物で包み込む。
すると不思議な事にそのままふわりと浮かんで自由に移動できるようになった。
スピードは出ないが便利な魔法もあるもんである。
それぞれ空の亀裂から次元の狭間へと乗り込んでいき、最後に俺が通り抜けると……そこは形容しがたい空間だった。
黒、紫、白……そんな感じの色をパレットの上にぶちまけてぐちゃぐちゃに混ぜたような色が延々と続いている。
「リリィ、魔力の大きい場所を探ってもらえるか?」
「もうやってますーちょっと待って下さい」
俺が言うまでもなくリリィは自分の仕事を理解している。
そして数秒でその場所を感知、俺達を誘導し始めた。
「距離はそんなにないですよー」
俺はシルヴァに「どうする?」と視線で合図を送ると、「このまま進もう」と俺の意を汲んだ返事が返ってきた。
ゆっくりとだが、リリィが指し示す方向へ進んでいく。
このまま気付かれずに乗り込めれば一番なのだが。
「おいおいありゃあ……」
ゲオルが何かを見つけ、驚いている。
いや、驚いているのはシルヴァも同じだ。
『アレは……魔王城じゃない』
「魔王城だって? 先代の魔王が居城に使ってたやつか?」
見るからにボロボロな城が異次元空間に浮いていた。
「おそらくカオスリーヴァがこの城ごと自身を異次元へ封印したのだろうな」
「中に大きな魔力反応があります。でも……数は少ないですよー?」
ここにはそこまでの戦力が無い……?
「……となると、やはり僕らがこちらに来るタイミングを狙って向こう側で暴れるつもりだろうね。どちらにせよ魔王とギャルンさえこちらに居るのなら僕らのやる事は変わらないさ」
残してきた皆が心配だが……いや、きっとあいつらならどんな敵が相手だってうまくやってくれるはずだ。
信じて自分のやるべき事をやろう。
そしてすぐにみんなの元へ帰るんだ。
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