第431話:フラグ解体士兼特殊フラグ建築士。


 しかし……あと何人だ? ネコは今回パスって言ってたからもう大体終わったような気がするけど。


『まだ大事な子を忘れてるんじゃない?』


 ん? 別にラムの事忘れてる訳じゃないさ。

 でもラムがわざわざ来るかなぁ?

 儂はいいのじゃっ! とか言って来ないような……。


「ミナト、入ってもよいかのう?」


『来たじゃないの』

 う、うん。まぁでもラムなら妙な空気になる事はないだろう。


『へー』


「おーい、入れてもらえんのか?」


「あっ、ごめんごめん。大丈夫だよ」


「まったく……ドアの前で待ちぼうけさせる

 とはレディに恥をかかせおって……」


 ほっぺたを膨らませたラムがドアを開けて自らの足で部屋に入ってくる。


 改めてその光景に感動すら覚えた。


「な、なんじゃ……? そんなにじろじろ見るでない。恥ずかしいではないか」


 ほんのりと顔を赤らめて目を逸らすラム。

 なんというかとても微笑ましい。


「な、何か言ったらどうなんじゃっ!」


 ラムはすたすたと俺の隣まで来てぽかぽかと叩き始める。

 やはりとても微笑ましい。


「むーっ!? そのニヤニヤはなんなんじゃその顔をやめいっ!」


「ごめんごめん。ラムちゃんが自分の足で歩いてるのが嬉しくってさ」


「なっ……お主、まだそんな事を気にしとったのか?」


「そりゃそうだよ。あの時は俺のせいでラムちゃんが……」


 ぽかりと頭を叩かれる。

 ラムはそのまま俺の隣にぴょんと座り、こちらに体重を預けてきた。


「儂は気にしておらんし、むしろミナトがいなかったら儂はあの場で死んでおったじゃろう。感謝はすれど恨むような事はないのじゃ」


「ラムちゃんは優しいからさ、俺が気にしないようにずっと弱音を吐かなかったよな」


「……っ」


 ラムは一瞬だけ眉をしかめてから、ゆっくりとため息を吐く。


「なんじゃ、バレっとったんか」


「そりゃね。だって自分の足が動かなくなった、なんて気にならないはずないもんな。ラムちゃんが魔法で不便なく暮らせるとしてもさ、やっぱり足が動かないのは辛いはずだよ」


 ラムは力なく笑いながら、頭をこつんと俺の腕に当てる。


「ダメじゃのう……それを気付かれてしまうようでは余計気を使わせてしまうというのに。これでも上手くやれてるつもりだったんじゃが」


「でも本当によかった……ラムちゃんの足が治ってさ。やっぱり種の影響だったんだろうな」


「うむ、おそらくそうじゃろう。リリィの理不尽な力には脱帽もんじゃよ。そりゃ儂がついていかなくても……」


 ラムは肩を落とし、こちらに残る事を残念がっているようだ。


「ラムちゃん、勘違いしないでくれよ? 俺は六竜を連れて最終決戦に行くだけだ。メンバーは既に決まってたようなもんさ」


「しかし……儂が居ずとも問題ないのは本当じゃろう」


 リリィのとんでも能力を目の当たりにしてラムは自信を無くしてるのか?


「俺はラムちゃんを誰よりも信用してるし頼りにしてるよ。俺達が居ない間この世界を守るのはラムちゃん、君だ」


 戦力だけならエクスだって相当なもんだが、この世界に残った戦力を的確に振り分けたり指示したりできる事まで考えたら誰よりも頼りになるのがラムだ。


「……鵜呑みにしていいもんかのう」


「当たり前だろ? ラムちゃんが一緒に来てくれたら俺は相当心強く感じるし、逆にラムちゃんが居ないこっちの世界が心配になるからな」


「ふむ……買いかぶられたもんじゃ」


「正しい評価、だよ。まぁ俺は例えラムちゃんが魔法なんか使えなくたって尊敬してるけどな」


 ラムは片眉を吊り上げ、訝し気な表情。俺の言葉を信じてないらしい。


「俺はさ、ラムちゃんと同じ年代の頃本当にどうしようもないクソガキだった。多分俺だけじゃなくてみんなそうだと思うぜ」


「なんじゃぁ……? 儂の精神が老けとるといいたいのか?」


 なんでこの子はそうマイナス方面に受け取るかなぁ。


「違うよ。ラムちゃんはさ、そんな年齢で、俺なんかよりもよっぽどしっかりしてるし、何より自分をしっかり持ってる。ランガム教に対してだってそうだ。過酷な環境でも前を見続け行動してただろう? そういう所を俺は尊敬してるんだ。魔法が凄いからとかはおまけだな」


「むぅ……どこで口を挟もうか悩むくらい一気に語りおって……照れるではないか」


「お、照れてる照れてる。可愛い奴め」


 からかうようにラムのおでこをツンと突くと、彼女は額を押さえて顔を真っ赤にした。


「なっ、なな、何を……」


 意外な反応だった。

 てっきり「何馬鹿な事言っとるんじゃ」とかクールな返しがくると思ってたのに。


「この女たらしめ……!」


「俺が女たらしだって……? 俺にそんな甲斐性があるかよ。みんな六竜の力に憧れたりして勘違いしてるだけだって」


「……ミナト、それは違うのじゃ」


 急に真顔になったラムが静かにそう言った。


「お主先ほど儂が魔法使えなくても尊敬してると言ったじゃろう?」


「お、おう」


「それと同じじゃよ。お主に思いを寄せる皆はお主が六竜でなくとも同じように想いを馳せたじゃろう」


「いや、それはさすがに買い被りすぎだろ……いてっ」


 突然ラムが俺の脇腹に肘打ちを入れてきた。


「本当の事を言ったまでじゃ。少なくとも……儂はそうじゃよ」


「ら、ラムちゃん……?」


『いけーっ! いけーっ! 抱けーっ!』

 やかましい黙ってろ!!


「お主は自分を過小評価しすぎておる。そんなんじゃお主の事を好きな連中が可哀想じゃぞ」


 ……以前アリアにも同じような事を言われた気がする。

 あれはいつだったか……とにかく、いくら俺が自分に自信がないからって俺を好きでいてくれる人の気持ちまで勝手に嘘にしちゃいけなかったんだ。


「悪い……ラムちゃんの言う通りだな」


「ふん、分かればよいのじゃ分かれば」


 ラムはぴょんとベッドから飛び降り、服をぱんぱんと叩いてドアへと向かう。


「お主を想う気持ちは、皆も、儂も同じじゃからな。それを忘れるでないぞ」


「えっ、それって……」


「は、話はここまでじゃっ! 次はお主が無事に帰ってからじゃ!」


 ラムはバン! と乱暴にドアを閉めて出て行ってしまった。


『ほんと君って自分のチャンスをことごとく潰していくタイプよね』


 ……はは、そんでキララみたいな奴に対してのフラグだけはきっちりおったてちまうんだよなぁ。




――――――――――――――――――――――――


投稿:2022/1/1


読者の皆様あけましておめでとうございます。

今更新中のツーショットタイム編が終わったら今度こそ最終戦へと向かっていきます。

1~2月中くらいには完結を迎える事になると思いますのでどうぞこのままお付き合いくださいませ。

2022年もよろしくお願い致します♪

monaka.

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る