第417話:カオスリーヴァの最期。
「な、なによそれ……どういう意味?」
「苦労をかけて、すまない……頼む」
「い、嫌よ……そんなの嫌!」
自分が自分でいられるうちに滅ぼしてほしい……そんな事をママドラに願うなんて。
関係の無い俺でも、そんな酷な話があるかと憤ってしまう。
かといって、他の誰かに頼む事も出来ないのだろう。
それをママドラが黙って受け入れるとは思えない。
だからこれはママドラがやるしかないのだ。
「我、は……死する訳ではない」
「……え?」
「我の、身体を滅し、核を……」
「そ、それよ! マリウスと同じように時間をかければ……!」
本来であればマリウスの核は時間をかけて身体を修復し、復活できるはずだった。
どこかのアホが吸収してしまったせいでその機会は失われてしまったが。
「違う」
ママドラの希望をカオスリーヴァはあっさりと否定する。
「ど、どういう事……?」
「無理なのだ。闇雲に時間をかけたところで……もう我という存在の大半は消え失せてしまった。我が我でなくなる前に、核を取り込め」
「い、嫌……」
「頼む、我であるうちに、リース……お前と、一つに」
「嫌よっ!!」
ママドラは耳を塞ぎ、カオスリーヴァの願いを拒絶する。
でも、ママドラだって分かってるはずなのだ。
でもそれは、簡単に思いきれる事でもないし割り切れる物でもない。
そこへ、シルヴァが背中を後押しするように語る。
「リース、リーヴァの最後の頼みだ。聞いてやれ。それに……リースと同化して魔力を循環させた方がリーヴァの自我を取り戻すのが早くなるかもしれない」
「どういう事……?」
「君はもう一人ではない。ミナトが居るだろう?」
ママドラはシルヴァの言葉の意味を理解するのに時間が必要なようだった。
俺も何を言ってるのか分からない。
俺にカオスリーヴァの代わりなんて務まらないぞ。
「リーヴァの中から失われた半身……魔王が占めていた部分をミナトに埋めてもらうのだ。そうすれば……もしかしたら」
魔王とカオスリーヴァは滅びかけていて、お互いが一つになる事でそれぞれの存在を繋ぎとめていた。
魔王の意識は消滅してしまったが、魔王そのものがカオスリーヴァの半身として機能していたのは間違いない。
それを引き抜かれた事でぽっかりと空白が出来てしまっている。
それを俺が埋めるだって……?
「今のミナトは既に六竜に等しい。可能性に賭けてみてもいいのではないか?」
「……そう、ね。それが……一番可能性が高いのね?」
シルヴァは無言で頷く。
「シヴァルド……すまないな」
「なぁに、構わんさ」
果たしてシルヴァの語った可能性はどこまで本当の事なのか、そしてカオスリーヴァの「すまないな」はどういう意味で使われた言葉だったのか。
俺もママドラも不安や疑念を抱えたままだったが、それでも受け入れるしかないのだ。
僅かでも可能性を示唆されたのであればそれに縋るしかない。
「……リーヴァ、必ずまた、会いましょう?」
「ふふ、我はいつでもお前達と共にある」
ママドラはそっとカオスリーヴァの身体に手を触れる。
すると、カオスリーヴァの身体がポロポロと瓦礫のように崩れ落ちていき、最後にママドラの手に光り輝く水晶のような物が残った。
「リーヴァ……」
ママドラはそれを見つめ、ゆっくりと目を閉じ、歯を食いしばる。
「ミナト君、力を貸して」
「好きにしろよ。俺はお前なんだからさ」
「……ありがとう」
ママドラは……イルヴァリースは、手に残ったカオスリーヴァの核をそっと胸に押し当てた。
すると不思議な事に、それはするりと身体の中に溶けていく。
これで俺は六竜二体と同化した人間って事になるのか。
……というか俺自体もうとっくに人間じゃなくなっちまってるからなんとも言えないけれども。
そして……。
完全に俺の中にカオスリーヴァの核が解けて混ざり終えたような感覚が広がって……。
そこで急に。
急にだ。
俺は頭の中で爆弾でも爆発したんじゃないかと錯覚するような激しい衝撃に襲われ、一瞬で意識が吹き飛んでしまった。
こんなの、聞いてねぇぞ……。
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