第403話:救出作戦。
まさか……この魔物の中に居るんじゃねぇだろうな?
「リリィ、とにかく魔物には手を出すな! こいつらは元人間だ。ここに住んでた連中だよ!」
「えーっ!? なんでこの人達人間やめちゃったんですかーっ!?」
頭の回転が悪い!
そうじゃないだろう?
「誰かがここの人達を魔物に変えたんだよ! とにかく殺すな!」
俺はリリィの腕を引き、ノインの屋敷前まで転移する。
すると、不思議な事に魔物達は居なかった。
正確には、視界に入る範囲にはそれなりに居るが屋敷に近寄ろうとはしない。
どうなってんだ……?
「おいノイン! レイラ! レイン! 無事か!? 無事なら返事しろ!」
屋敷のドアを叩くと、中からいくつもの悲鳴が聞こえた。
「中に人が居ますよー!?」
「おい! 中に誰かいるならこの屋敷の主を連れてこい! ミナトが来たと言えば分かる!」
屋敷の中に居るらしい人達に声をかけると、屋敷の中の騒がしさが数倍に跳ね上がった。
「ミナト? 本物!?」
「ミナト様が来てるの!?」
「待て、偽物かも……」
「あいつらは何言ってやがるんですー?」
中から聞こえてくる声にリリィが不思議そうな顔をした。
ああ、そう言えば元々ダリルでは英雄扱いだったところにあの本のせいで俺の事を認知してる奴等が多いんだった。
「俺はミナト・アオイだ! 生存者を助けに来た! 代表者のノインを出してくれ!」
騒ぎは更に大きくなり、「ほ、本物だぁぁぁっ!」という声が聞こえてきたが、そんな人々の声の中にノインの声が混じる。
「ミナト! 来てくれたのか!」
「ノインか! この街で何が起きた!?」
ノインが内側から扉を開けようとしたのでそれを押さえる。
「開けなくていい! なんか面倒な事になりそうだから!」
「……? あ、あぁ……それもそうだな。そうだ、それよりレイラが居ないんだ!」
「ばっ、馬鹿野郎それを早く言えっ!!」
なんてこった。こんな魔物だらけの中にレイラだけ取り残されてるってのか!?
「この屋敷の周りには魔物避けを撒いてある! まだしばらくはもつ。こちらはいいからレイラを頼む……!」
「分かった。ドアの前に連れを置いて行くから万が一のボディーガードにしてくれ!」
「ちょ、ちょっとわらわここに置いていかれるんですかー!?」
不安そうに俺の袖を引っ張るリリィがまるで幼い少女のようだった。
「大丈夫、お前は充分強い。万が一の時にはここの連中を守ってやってくれ。すぐに戻ってくるから」
「わ、分かりました! わらわにどーんと任せるといいですっ!」
俺は屋敷のドア前にリリィを残し、俺は一番可能性が高い場所へ向かう。
むしろここに居てくれなきゃ探しようがない。
俺の拠点が元々あった場所。今は新たに別宅が建てられているここだ。
玄関ドアは開け放たれており、魔物のものらしき足跡が見える。
無事で居てくれよ……。
「レイラ! 居たら返事をしろーっ!」
「み、ミナト様!? っ!? きゃーっ!!」
まずい。俺が焦って声をかけたせいで多分隠れていたレイラが魔物に発見されたんだ。
緊急事態だから許せよ……!
俺は声のした方向から二階の奥の部屋だとあたりをつけ、天井をぶち抜いた。
「ガァァァァッ!」
俺が二階へ飛び出すと、今にも魔物がレイラに鋭い爪を振り下ろす所だった。
「レイラ伏せろ!」
俺は返事を待たずに魔物を背後から蹴り飛ばした。
間に合うかどうかはギリギリだった。
咄嗟に足を竜化させ、魔力を噴出する事で超加速したのだ。
エクスの手解きを受けていなければ絶対に失敗していただろう。
悔しいがあいつには本当に感謝しなきゃいけない。
魔物は壁をぶち破り外へ落ちていったが、よろよろと逃げていったので致命傷ではないだろう。
咄嗟の事とはいえ多少加減できたようでよかった。
レイラを守る為とはいえここの住民を殺すのはさすがに心苦しい。
「レイラ、無事か!?」
「み、ミナト様ぁぁ……怖かった……私、怖かった……気が付いたら街が魔物だらけになって、家に入って来たからずっとクローゼットに隠れて……うぅぅ……」
緊張の糸が途切れたのかレイラは俺にしがみ付き泣き出してしまった。
「遅くなって悪かった。もう大丈夫だぞ。……ノイン達も無事だ。すぐに会わせてやるからな」
「ミナト様……また、助けられちゃいましたね」
「いいって事よ」
元はといえばこんな事になったのは俺のせいかもしれないんだからな。
ギャルンの野郎め……嫌がらせするにもコレはダメだろ。
俺だけじゃなく世界中を巻き込みやがって……。
これは真剣に奴等との最終決戦が近いという事かもしれない。
本格的にキララやギャルンが世界へ進攻を開始した可能性もある。
レイラを連れてノインの屋敷前へ移動すると、リリィが暇そうに体育座りで地面にひたすら【の】を書いていた。
それ本当にやる奴いたんだ……。
「あっ、ミナトぉ……わらわ心細くなってしまって何度ドアを開けて中に押し入ってやろうかと……」
俺に気付くとリリィは泣きべそかきながら立ち上がり、レイラに気付いて慌てて涙を拭う。
「ぶ、無事に助け出せたようで何よりです。勿論ここはわらわがしっかり守っておきましたよーっ! 有難く思いなさーい!」
相変わらずおもしれー女だなこいつ。
頭でも小突いてやりたい所だったが、こんな状況だったしアホな事言ってても許すと約束してしまったので我慢だ。
「あの、この女性は……?」
「ああ、リリィっていってラヴィアンの姫様だよ。今は俺の仲間だ」
「仲間……わらわが、仲間……? ふひひ」
なんだかリリィはちゃんと仲間としてカウントされているのが嬉しそうだった。
「ミナト様……今度はお姫様にまで……?」
何故だかレイラの視線が冷たい。
違うぞレイラ。こいつはただのアホの子だからそういうんじゃないし、姫様にまでとかいうのなら既にポコナが……。
『うん、君も割とダメな子だと思う』
そんな馬鹿な。
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