第306話:パンツ覗き魔。
「あの野郎舐めやがって……!」
俺達はすぐにリザインの家に向かった。
ドアを蹴り破り中へ乗り込むと……。
「なんだこりゃあ!?」
そこは完全に別の場所だった。
リザインの家の中は、まるで巨大な魔物の体内のようなピンク色のぶにぶにで囲まれた空間に様変わりしている。
「これは……玄関を起点に強制転移……? いや、少し違うのじゃ。これはリザインの家の中に新たな空間を作り上げておるのう」
転移で別の場所に移動したのではなく、ここはあくまでもリザイン宅の中に用意された空間……?
玄関を通るとその特殊空間に繋がるって事か?
「それなら話は早い。一度外に出て玄関以外から乗り込めば……って畜生!」
既に俺達が入ってきた入り口は塞がっていて、おまけに一人足りない。
「ネコの奴……外に取り残されたか」
これがティアやラムだったのなら外から何かしてくれるかもしれないという期待を持てるが、ネコじゃあてにならん。
いきなり俺達が消えてわたわたしてるだけだろう。
運が良ければアルマが何かしてくれるかもしれないが……。
まったく今回は全く役に立たねぇなあいつは!
「これ進むしかなさそうなんだゾ?」
「うむ、それに宿舎からでは気付かなかったがゲイリーもシャイナもこちら側に居るようじゃ。これは誘いに乗るしかないやもしれんのう」
これが奴の用意した罠って訳かよ。
「いいぜ、それならこんな空間内側からぶち壊してやる」
「ミナト、やめた方がいいのじゃ。無理矢理内側から破壊したらどうなるかわからん。シャイナの安全を考えるのなら罠に乗ってゲイリーを倒すのが一番じゃ」
めんどくせぇ事ばっかりしやがって……。
人をおちょくるのが本当に上手いなあいつ。
俺達をここに閉じ込めるんじゃなくておびき出したって事はそれなりに対策をしてあるんだろう。
「一応二人とも気をつけてくれよ。何かあってからじゃ遅いからな」
……二人からの返事はない。
「……?」
振り返ってみれば、そこには誰もいなかった。
「おいおい……どういう事だよ」
ママドラ、この状況を簡単に説明してくれ。
……。
「おい、マジか?」
冗談だろ……? いつからだ?
しばらくママドラと会話してなかったが、いつからこんな事になっていたのかまったく気付かなかった。
もしかしたらここに入ったせいかもしれないが確認のしようがない。
シルヴァの奴が対策を考えておくとは言っていたがこんなに短いスパンで同じような事をしかけられるとは……。
これだけの事をあいつ一人で出来るのか?
いくら精神支配系の魔法に長けていたとしてもママドラを封印するなんて事が出来るだろうか?
……いや、逆かもしれない。
ママドラが封じられているんじゃなくて、俺の方に何か小細工をしてママドラの声が認識できなくなっている可能性もある。
とにかくここからは一人の戦いになりそうだ。
いつぞやのようにはならんぞ……。
ティアとラムの二人も心配だが、恐らく邪魔だからここから追い出されただけだろう。
つまりそれだけの事が出来る相手という事だ。
完全に奴に都合のいい空間でママドラを封じられた状態で戦う。
こんな事ならリザインとルークの二人は宿舎に置いてくるんだったな……万が一俺に何かあったらあの二人は一生出られないんじゃないか?
……って何を弱気になってやがる。
俺が負けるなんて事があっちゃならん。
まだイリスだって取り返してないんだ。こんな所でたかが人間一人に負ける訳にはいかない。
少々焦りを感じながらもぶよぶよの通路を進む。
途中小部屋のような物もあったが特に中に何かがあるようには見えなかった。
閉じ込められる可能性も考慮して覗くだけにして奥へ。
「そんなに心配しなくてもただの物置だっての。早く奥へ来てくれよ」
どこからともなくゲイリーの声が響く。
俺の様子もどこかで見ているのか?
「この空間は俺その物なんだよ。あんたがどこに居たってこの壁全てが俺の目だ。すぐに分かるさ。遊んでないでさっさと俺の所まできてくれ」
「……この壁が全部お前の目だと……?」
俺はふと嫌な予感がして足元を見る。
「見てんのかテメェ」
「可愛らしい服を着ているからなんとなく想像はしていたけれどやっぱり下着も可愛い系なんだな」
「ぶっ殺す」
決めた。もうダメだこいつは絶対に殺す。
今更隠そうとしたって壁全部が目だっていうなら無駄だ。
そんな事に気を取られている場合じゃない。
いくら下着を覗き見されたところでこいつをぶっ殺してしまえばそれで終わりだ。
「せいぜい今のうちに目に焼き付けとくんだな。あの世への土産にしやがれ」
「許可が出たならのんびり見させてもらう事にしようか。やっぱりゆっくり来ていいぞ」
「言ってる事が変わったな」
「ふふ、俺は前言撤回が好きな男だからな」
そんなに俺のスカートの中を覗き込むのが楽しいのか変態め。
男としてはその気持ち分らなくないぞ。でも覗かれてるのが俺ってのが気持ち悪い。
「おおっ」
「……なんだよ」
「いや、別に、なんでも」
ゲイリーは含みのある言い方をして「くっくっく」と笑った。
「おい、何が見えた?」
「え、言っちゃっていいの?」
「覚悟しとけよ……絶対にぶっ殺してやるからな……!」
俺は全身に走る悪寒に耐えながら更に殺意を高めていくのだった。
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