第254話:ドラゴン討伐クエスト。
「ラム、本当に転移でそこまで行けるのか?」
「うむ、このくらいなら大丈夫じゃよ♪」
そうか、ラムの場合スキルの集中で増幅をかければ転移の距離も伸ばせるのか。
それにしばらく休めば消費した魔力も回復する……。
あらためて考えると常軌を逸しているな。
距離と方角がきちんと分かればどこでも行けるってのは強みだよなぁ。
俺のチェックとホールよりよほど使い勝手がいいし優秀だ。
「全員連れていくとなるとかなり疲れるのでな、儂は戦わんぞ? その間に休ませてもらうがよいかのう?」
「勿論戦うのは私に任せてくれていいんだゾ♪ むしろこの子と私だけならサクっと行ってサクっと帰ってこれるんじゃない?」
ラムはティアの提案に「お主、ストレージにドラゴン入れられるのじゃ?」と少しだけ首を傾げた。
「う、そう言われるとちょっと自信ないなぁ」
「だったら俺がラムちゃんと二人で行ってこようか?」
俺とラムならドラゴン相手でも大丈夫だろう。大神殿の時のような失態はもう絶対にしない。
「儂は構わんぞ♪」
「だめだめーっ! ミナトは私が守るんだゾ!」
ティアが俺とラムの間に手を広げて割り込んできた。
めんどくせぇ奴だなぁ……。
「だったら三人で……」
そう口にした時、ずっと大人しくしていたネコと目があってしまった。
めにうっすら涙が浮かんでいる。
「ごしゅじぃん……私だけお留守番は嫌ですぅ……」
「わ、分かった分かったから! じゃあ全員で行こう、な? それでいいよな!? ラムちゃん行けるか?」
「無論じゃ♪ 儂を誰だと思っとるんじゃ?」
そんな俺達のやり取りを見ていたニームやその他大勢の野郎共は引きつった笑いのまま固まっていた。
転移で即座に移動しようとしている事、ドラゴン相手に二人だけで行こうとした事、なんやかんやで結局全員で行く事になった事などいろんな意味で反応に困る流れだったんだろう。
でも俺達はいつもこんなノリなんだから仕方ない。
半信半疑の皆に囲まれながらラムが集中する事約二分。
「よし、じゃあ出発なのじゃーっ! あたっくあんどですとろい!」
そんな物騒な言葉で俺達の初ミッションはスタートした。
というかこの距離を二分程度の集中で移動できるのか。つくづくスキルの恩恵ってのは凄い。
俺ももっと使えるスキルを沢山取得したいもんだ。
『君の場合はいろんな自分のスキルを駆使できるんだから同じようなもんじゃない』
それは俺の力じゃないような気がしてなんだか複雑なんだよ。
『めんどくさいお年頃なのね』
いつまたママドラ封じみたいなのが来るか分からないから慎重になるのは当然だろうが。
「うわー、おっきいですぅ!」
……転移は成功したようだ。
というか成功しすぎて目の前にドラゴンが居るんだけど?
一瞬で目的地の森に移動したのはいいけど、どこにいるか探す手間すら省けるあたり話が早すぎる。
「魔力が一番大きい所に照準を合わせたからこれも必然じゃのう」
スキルの心の目で魔力感知的な事が出来るのは分かってたけどこれだけ距離が離れててもどんぴしゃってのがおそろしい。
「ねぇねぇ、私やっていい? いいよね? やるね?」
ティアがドラゴンを目にして息を荒くし、目がちょっとイっちゃってる。
完全にバーサーカーじゃんよ。
俺が返事する間もなくティアはドラゴンに襲い掛かり、不意を突かれたドラゴンは大層ご立腹なようで涎をダラダラと垂らしながら吠えた。
ママドラ、一応聞いておくがお仲間じゃないよな?
『知らないわよあんな頭悪そうなドラゴン』
あっそ……。ラムが言う所の辺境のしょっぽいドラゴンってやつだろうか?
確かに人語も喋れないドラゴンと六竜を一緒にするのは申し訳ないな。
『あれはクレイジードラゴンっていってね、頭はすっごく悪いくせに狂暴なので有名だったやつよ。まだ生き残りがいたのねー。ゲオルが一時期こいつの肉にハマっちゃって……絶滅したかと思ってたわ』
ああ……ゲオルなら気に入った種を食い尽くすくらいやりかねねぇな。
凄まじい咆哮をあげ、ドラゴンがブレスを吐く。
俺を守るとか言ってたくせにティアはあっさりとかわしてしまい、ブレスがこっちに飛んでくる。
俺の障壁魔法でも防げる程度だったから別にいいけどさぁ……。
「おい、俺を守るんじゃなかったのかよ!」
「あっ、ごめんそっち飛んでった!」
ティアの叫び声が聞こえて、てっきりさっきのブレスかと思ったらぶっとい腕がぐるんぐるん回転しながらこっちに飛んできた。
どうやらティアがぶった切ったのが飛んで来たらしい。
しかも、その軌道はネコに直撃コースだった。
「ネコ!」
どがぁぁぁん!!
衝撃と轟音で砂煙があがる。俺もラムもあの程度なんともないから油断していた。
「ネコ、無事か!?」
「うにゃ? へーきですよぅ?」
……心配はどうやら無駄だったようだ。
つい以前のへっぽこ脳味噌真っピンクネコのつもりでいたが、こいつももう俺と同じで六竜をその身に宿しているんだった。
……脳味噌真っピンクなのは今も変わらねぇけど。
ネコは飛んできたドラゴンの腕を片手で受け止めていた。衝撃で地面に足が少しめり込んでいたけど、まったくの無傷。
「でもびっくりしましたぁ~」
こいつも呑気なもんだ。
さっさと片をつけろとティアに言おうとして振り向いたら、もう終わっていた。
「あぁぁぁぁ~っ! ドラゴンを切り刻む感覚……さいっこーっ!!」
……やっぱりバーサーカーだこいつ。
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