第233話:ランガム教の中枢へ。
さて、糞長い階段を登りなおしてまた大神殿の地上部分まで上がって来たわけだけれど、ここの更に奥に司教と大司教しか入れない区域があるって話だったな。
最初に来た時は気付かなかったが、奥にアホみたいにデカい扉がある。
なんでそんな物に気付かなかったのかと言えば、デカすぎて扉だと認識してなかったから。
「こんなの普通壁だと思うだろ……」
「激しく同意なのじゃ」
神殿を突き当りまで進むと壁にぶち当たる。
ガングが言うにはこの壁が扉なんだそうだ。
不思議な事に、司教や大司教が触れると自然に開閉するんだとか。
「……どうやって開けるんだこれ」
「無理矢理穴開けて押し通るのがいいのじゃ」
ラムはいざって時にはかなり思い切りがいい。
俺も見習うべき部分があるかもしれない。
彼女は特に警戒もせず大扉に手を触れた。
バチッ!
目の前が真っ白にフラッシュ。まばゆい光に目が眩んだが別に痛みは無い。
「ラムちゃん、大丈夫か?」
「う、うむ……大丈夫なのじゃ。少し驚いたが……む? ミナト……姿が」
姿?
自分の身体を見ると、どうやら元の姿に戻ってしまっているらしい。
ラムちゃんを見れば彼女も可愛らしい姿に戻っている。
「……侵入者避け、って所か? 多分連中にはバレただろうな」
「なぁに、バレたらバレたで後はこそこそする必要が無くて楽なのじゃ」
やっぱり思い切りがいい。
あまり考えて無いだけかもしれないが、こういう時どうしようとあれこれ悩んでしまう自分としてはこの決断力を羨ましく思う。
「じゃあ、扉ぶち抜いて行くか」
「なのじゃ♪」
俺は右腕を竜化させ、扉を思い切りぶん殴る。
教徒達がほとんど地下に居るのなら、周りにさほど気を遣う必要はないだろう。
思った以上にあっさりと扉に風穴があき、向こう側への道が出来る。
「奥はまだ続いておるようじゃのう」
「よし、とにかく進もうぜ。ここから先はいつ魔物に襲われるか分からないから注意しろよ」
扉に空いた穴をくぐり、向こう側へ出ると長い廊下が続いていた。
特に変わった事もなく廊下の奥まで進み、突き当りにある扉を開けると……。
「ラムちゃん、居るぞ」
「分かっておるのじゃ……ひー、ふぅ……五人じゃな」
気配を読む事も出来るなんて優秀だ。
「貴様、誰の許可を得てこんな所に居る?」
特に存在を隠そうともせずに奥から白いローブが五人現れた。
随分余裕だなこいつら……情報共有ちゃんとされてるか?
「ランガム教をぶっ潰しに来たんだよ。ちなみに誰の許可も得てないからよろしくな」
「ふざけた事を。侵入者には死あるのみ。死を与えよ!」
「死を与えよ」
「死を与えよ」
「死を与えよ」
「死を与えよ」
「うるせぇよ」
こんな時まで宗教染みた事言ってるこいつらが妙に気味悪くて、一気に距離を詰めその一人をぶん殴った。
どうやらそいつの正体はぶくぶくと太ったカエルのような魔物だったらしく、一瞬で魔物の姿に戻ったが既に頭は後方で柱にぶつかり砕け散っている。
ゆっくりと倒れるカエルの身体を見て他の司教どもが慌て出す。
「き、貴様……何者だ!?」
「こんな人間が……?」
「残念だけど人間じゃねぇよ」
取り乱している間にもう一人に回し蹴り。
あっさりと身体がひしゃげて息絶える。
残り三体。
「だ、大司教様に報告を……!」
「させんのじゃ! ミストスパーク!」
ラムが魔法を唱えると、司教三人を水蒸気のような靄が包み込み、その内部で電撃が炸裂。
少々靄の外にまで電撃を巻き散らしながら、一気に三体を灰にした。
「どんなもんなのじゃっ!」
「さすがだラムちゃん」
しかしあまりにも歯ごたえが無さすぎる。
皆言葉を話せるだけの知能はあるが、それに実力が伴っていなかった。
ただの雑魚に毛が生えた程度だと思う。
俺とラムだから相手が弱く感じるだけかもしれないが……。
俺が砦で戦った大司教と比べるとカスみたいな奴等だった。
ただ魔物、というだけ。
こいつら一匹ならおそらくガングのような部隊長が囲めば倒せるだろう。
そこまでする覚悟が出来ればの話だが。
「ミナト、この奥から妙な感じがするのじゃ」
『確かにね……何かヴェッセルがあるわよ』
ヴェッセルだと……? こんな場所に?
周りに警戒しつつ進むと、光を放つ小部屋を見つけた。
「おいおい……こういう事かよ」
まるでアドルフたちを追いかけていった遺跡のようだ。
そこにあったのは、以前見たのと同じタイプの転移用ヴェッセル。
「これは何かのう?」
「転移ヴェッセルだよ。魔力を流せば起動する……覚悟はいいか? どこに繋がってるか分からないからな」
「そんな物があるのかヴェッセルというのもいろいろなんじゃのう。無論この先がどこだろうと答えは一つじゃ!」
ラムは怖がる様子すらない。
俺は以前の事を思い出して軽くブルってるっていうのに。
「ラムちゃんは強いな。……じゃあ、いっちょ教祖様をぶっ殺しに行こうか」
「れっつごーなのじゃっ♪」
ラムは俺の様子に気付いたのか、気合を入れる為に背中をばちんと叩いた。
ただ、ラムの身長が低すぎるので背中というよりもどちらかというとお尻をぶっ叩かれたのに近かった。
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