第205話:メンバー選出とキモい友人。


「……という訳でメンバーを決めたいと思うんだが、今回は二人しか連れていけない。それにかなり危険が伴うのも理解してほしい」


 家の中に主要メンバーを集めてシルヴァから頼まれた内容を簡単に説明する。


「一緒に行きたいけど私はやめとくね。大森林とか絶対虫だらけなんだゾ」


 絶対行くって騒ぐと思っていたティアが真っ先に離脱。

 そうか、虫の問題もあるのか。俺もあまり得意な方じゃないからなぁ……。


「まぱまぱ、あたし行きたいな」


「イリス……」


 出来ればイリスはここに残ってほしいんだけどティアが来ない事を考えると戦力的にはとても頼もしい。


 うーん、どうしたものか。


「そ、その……ランガム大森林という場所はそんなに虫が沢山いるのだろうか……?」


 アリアが眉間に皺を寄せながらそっと手を上げて呟いた。


 ママドラ、そこのところどうなんだ?

『デルドロの採掘所にいた奴ほどじゃないけど、でっかいのが居るのは間違い無いわね』

 マジかよ俺も嫌だよそんなとこ……。


「イルヴァリースが言うには、結構でかいのが居るってさ」


「うっ、そ……そうか……いや、しかし……うぅむ……」


 協力したいという気持ちは分かるんだけど、アリアも虫はあまり得意な方じゃなさそうだ。


「無理しなくていい。虫なんかに気を取られて、その一瞬の判断遅れで面倒な事になる場合もある。今回は拠点の警護を頼むよ」


「う、うむ……すまない」


 アリアはがっくりと肩を落としたが、気にする事は無い。


「アリアはダリルで大活躍だったからな。ライルの事もあるし気苦労もあっただろ。少し休んどけ」


「ミナト殿……」


「という事ならわたくしが行くしかないですわねっ!」


 突然立ち上がり胸と声を張ったのは……。


「いや、お前だけは連れてっちゃダメだろうよ……」


 名乗りをあげたのはポコナ。


「ど、どうして!? わたくしの何が気に入らないんですの!?」


「いや、気に入らないとかじゃなくてさぁ、この国の姫様がこんな所に居る事自体問題あるのにそんな危険な場所に連れていけるかよ」


「その通りです姫。あまり我儘を言ってはなりません」


 呆れ顔でロリナがポコナをなだめ、座らせる。


「むーっ! 悔しいですわ……」


「姫は戦力にならないでしょう? おとなしくここの発展に力を入れる事が一番彼の力になれると思いますよ」


 その言葉でポコナは納得してくれたようだが、ロリナの奴……多分俺と姫を一緒に行かせたくないだけだろうな。

 いつもよりもポコナに対する言葉が丁寧で優しい。きっとなんとしても言いくるめようとしている証拠だろう。

 だってこちらに向ける視線はいつも以上に凶悪だし……。



「だったら俺が行こうか? 英傑武器の修復も終わったし……」


「ジオは黙ってて! ねぇミナト、こんな奴より私を連れてってよ♪ 絶対力になるからーっ!」


 そう言って手を上げてくれたジオタリスを張り倒し俺の手を取ったのはレナだ。


「……確かにレナなら自分の身は自分で守れるだろうしな。それに……」


 レナは分身が出来る。最悪の場合目くらましにも使えるし頭数を増やすのにも使える。


「そうだな、今回はレナに頼もうか」


「ほんと!? やったーっ♪」


 レナが俺の腕に思い切りしがみ付き、でっかいアレが押し付けられる。


「おぉ……」


『ミナト君、心の声が外に漏れてるわよ?』


「ハッ!? いかんいかん……とりあえず今回のメンバーは俺、イリス、レナって事でいいな?」


「うにゃ……私の話が一切出てきませんでしたぁ……」


 ネコが不服そうな顔でこちらを見てくるが、これに関してはこいつが悪い。


「だってお前話しの序盤で寝たじゃねぇかよ。とりあえず今回はお留守番だ。こっちの事はよろしく頼むぜ」


「はぁい」


「ネコちゃんは私と一緒にのんびり旦那様を待ってようね。退く時は退いておくのがいいお嫁さんだゾ♪」


 誰がお嫁さんだ誰が。

 ティアのやつ適当な事言いやがって……。


「うにゃぁ……それもそうですよね、ごしゅじんはきっと私が居ないのが寂しくなって一人で……かわいそうに。帰ってきたらたっぷりしてあげますからねぇ?」


 ネコがニヤニヤしながらいつも通りのおバカ発言をしては周りの女子達をドン引きさせる。

 不思議そうに首を傾げているのはポコナとイリスくらいだ。


「ユイシスさん、何か忘れてない? 我慢できなくなったら……うふふ♪」


「うにゃっ!? わ、分かってますよねぇ?」


 何故かレナがネコに絡んでマウントを取りに行った。この子は時々こういう所がある。


「分かってるよ? 抜け駆けと独り占め禁止、だったよね? 勿論分かってる。分かってるけど……求められちゃった場合は……しょうがないでしょ?」


「ぐぬぬ……ごしゅじん、やっぱり私も……!」


「お留守番してなさいっ!」


「ふにゃぁ……じゃあ早く帰って来て下さいよぅ?」


 ネコが情けない顔でおろおろするのがなんだかちょっと面白かったが、こいつはこいつなりに俺を心配してくれてるんだろう。


 こいつの傍から俺とイリスの両方が居ないってのはなかなかない事だし、寂しがらないように早めに帰ってこれるようにしよう。


「……では話は決まったかね?」


「おう、てかお前今までどこに居たんだよ……全く気配感じなかったが」


 俺の背後から急にシルヴァの声がしてビクっとしたが、よく考えたらこいつはいつどこに現れてもおかしくはないもんな。


「なぁに、ずっと君の後ろに立っていたさ。話が終わるまでミナトの髪の毛の本数をじっと数えて待っていたんだよ」


「え、きもっ」


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