第185話:閉幕と出国。
「ユイシス様ぁぁぁ!! 寂しかったですぅぅぅ!! 親父共とのお留守番は地獄でしたぁぁぁぁっ!!」
「うにゃぁ……おーよしよしごめんねぇ?」
俺達は一度拠点に帰ってきたのだが……帰るなりこれだ。
置いてけぼりにされていたかむろがネコに飛びついてわんわん大泣き。
飯の最中だというのに騒がしい事この上ない。
親父共呼ばわりされたオッサとおっちゃんはなんだかしょんぼりしている。
ただ、シルヴァの配慮なのかここにも映像は映し出されていたらしいので俺達の動向はある程度理解できていたらしい。
ジオタリスは大分留守にしてしまったからという理由で一度自分の街へ戻っているが、しばらくしたらまたここへ来るとの事。
何故かはよく分からない。
ロリナはポコナの世話役兼護衛として城に戻った。彼女の元の姿はなんというか中性的な雰囲気のお姉さんだった。男装の麗人、みたいな感じ。ただ目付きはかなり悪く、犬コロだった頃の方がまだマシなくらいだった。
で、だ。
「お前はなんでここまで付いて来たんだ……?」
「だってミナトの家なんでしょ!? 来てみたかったんだもん……迷惑だった?」
ディグレもとい、レナ。こいつは俺達と一緒にこの拠点まで付いてきた。
で、やたらと密着してくるので俺はたじたじである。
「ミナトってばデレデレしちゃってさーぷんぷん!」
「お前もなんでこんなとこに居るんだよ……」
ほっぺたを膨らませて俺をからかってるのはティアだ。
「だって私帰る場所ないもーん。ここに住むーっ♪ オッサさんの料理美味しいしね♪」
なにやらティアとオッサは目を合わせて「「ねー♪」」とかやってる。
ティアがコミュ力お化け過ぎてついていけない。さっき会ったばかりだぞこいつら……。
「やっと終わったな。ミナト殿もお疲れ様」
皆で食事を食べ終わった頃、アリアがオッサの入れたお茶を持ってきてくれて俺の目の前に置く。
「ああ、でもアリアにはこのあと一緒について来てもらうからな? 残念ながら俺にはまだやる事があるんだ」
「……む? そうなのか? 私はまったく構わないしむしろ行動を共に出来るのは嬉しいが……あのシルヴァという男と話していた事だろうか?」
俺はあの時シルヴァと話した事を簡単にアリアに説明する。
「ふむ、なるほど……では一度ダリルに戻り和平を結ばせるのが次のミッションという事なのだな?」
「ああ。それで今回はあまりぞろぞろ大人数で動いてもしょうがないから最小限の人数で行こうと思う。アリアは勿論来てもらうからそのつもりでな」
「あ、あぁ分かった。ミナト殿と……うへへ」
だらしない顔をしやがって……そんなにダリルに戻るのが嬉しいのかね。
『ばーか』
最近ママドラ俺に対して冷たくね?
『大体君が悪い』
へいへいそーですか。そりゃすいませんでしたね。
『君こそ最近私への態度が雑じゃない?』
大体ママドラが悪い。
『ふーんだこの朴念仁! 精神ミイラ!』
なんだよその悪口……。
『君なんて女心まったく分からないからっからに枯れたジジイのミイラみたいなもんでしょ! ふーんだ!』
よく分からない罵声を浴びせてママドラはだんまりを決め込んでしまった。
女心なんて分かんねぇよ。
なんで好きになった相手を包丁で刺し殺すんだ? しかも内臓少し食べたとか言ってただろキララは……いや、キキララか。
あの事件のせいかどうか分からないが俺には女心なんてまったくわからんし、深く知るのが怖い。
どこで愛情が裏返るか分からないんだもんなぁ。
勿論あいつが特殊なだけで世の中の女性があんなんじゃないのは分かってるんだけどさ。
帝都での一件の後、ポコナは泣きながら俺に行かないでくれと縋りついて来たが、さすがにずっと一緒にいてやる事は出来ないし、俺がポコナにしてやれる事はもうそんなに多く無い。
シルヴァに頼まれている事もあるしまた必ず会いに来ると告げ、別れてきたのだが……少し俺に依存しすぎな気がする。
王もシルヴァも近くに居るから滅多な事はしないと思うが、あいつもこれから忙しくなるのだから俺の事なんか考えてる暇なんかないぞ。
少し心配だが、あまり突き放し過ぎても暴走しそうなのがポコナという姫なので何かあったらいつでもシルヴァに言えと言っておいた。
そうすれば奴の魔法で俺と通信出来る。
それを知って少し落ち着いたようなので良かったが、あんなに引き留められるとちょっと寂しさを感じてしまうのが俺の弱い所だ。
……可愛かったしな。
『ミナト君がミナト君でちょっと安心したわ』
お、やっと出て来たか。
『ふーんだ!』
何しに出て来たんだよ……。
俺をからかいたいだけだろ……。
なんだかママドラとティアって結構似てる気がする。
俺の周りにも厄介な連中が増えたものだ。
その後二日ほどゆっくり体を休ませてから、出発の日。
結局今回は俺とネコ、イリス、アリアの四人で行く事にした。懐かしいメンツである。
相変わらずお留守番のかむろが大騒ぎしたが、アルマが出てきて一喝したら一瞬で大人しくなった。
丁度出発の日、ジオタリスも拠点に合流し、ジオタリス、レナ、ティアが拠点の拡張、及び警護をしてくれる事になった。
勿論獣人達との環境改善にも尽力してもらう。
あまり当てにならないがゲオルもいるし、これだけの面子がいれば魔物が襲ってきても大丈夫だろう。
ちなみにリリア帝国の警備網は凄い事になっていて、魔物が襲ってきたらシルヴァが直ちに各地の英傑に通信を入れ、即座に必要なだけの人員を転送できる体制が整っている。
とりあえずエクスを放り込んでおけば大体解決する気もするが。
ダリルに居た頃にチェックとホールが使えていれば今頃すぐにあちらへ行けたのだが、一度自力で行くしかない。
転送魔法なんか使えるのなら俺達をダリルに飛ばしてくれとシルヴァお願いしたものの、距離が離れすぎていて疲れるとの事で却下された。
おっちゃんに馬車を操縦してもらい、久しぶりに以前の面子でのんびり馬車の旅としゃれこみたい所だが……。
俺達の旅だからきっとそんなにうまくはいかないだろう。
出来る限り面倒が起きない事を祈る。
「ねぇねぇごしゅじんごしゅじん」
馬車に乗り込もうという時、ネコが小さく耳元で囁いた。
「あまり我慢はダメですよぉ? 辛くなったらいつでも言って下さいね?」
「お前……おう、ありがとな」
俺は素直に感動していた。
俺がいろいろあって疲れてると思い、そんな事を言ってくれたのだと。
しかし、感動して損した。
「いつでも抜いてあげますからねぇ♪」
そう言ってしゅっしゅっと手を動かすネコの脳天にげんこつをぶち込み、いざ俺達の旅は再始動する。
やっぱり俺の旅はいつだって前途多難である。
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お読み頂きありがとうございます!
かなり長くなってしまいましたがこれにてリリア帝国編終了です!
次の舞台は再びダリル王国。久しぶりに戻るダリルではどんなトラブルが待っているのでしょうか?
是非今後ともお付き合い頂けますようよろしくお願いします♪
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