第160話:ミナトVSディグレ。
「……ハッ、俺は……し、試合はどうなった!?」
ジオタリスがシーツを跳ね除け飛び起きる。
「こ、ここは……医務室か?」
「おう、目が覚めたかジオタリス」
今はクイーンとティリスティアが戦っている頃合いだろう。
俺は念のためにジオタリスの様子を見に来たのだが、この分だと心配は要らないだろう。
「勝負は、試合の結果はどうなった!?」
「……引き分け、だよ。お疲れ様、よく頑張ったな」
「引き分け……じゃあ、勝ち残るのは?」
「残念だがどっちも失格だ。さっきファナシスも目が覚めて悔しがっていたがお前の事を褒めていたよ。来年は負けない、だってさ」
「失格……そうか。残念だけどしょうがないな。俺も来年までにもっと強くならないと……。今回はミナトちゃんに託すぜ! 英傑王になった所を俺に見せてくれよな」
……それは安易に約束したくないなぁ。
「とにかく、元気になったならクイーンの試合でも見に行こうぜ。相手はあのティリスティアだからな……」
「そいつはヤバい。早く見に行こう!」
ベッドから飛び降りると、怪我なんて無かったかのように医務室を飛び出していった。
俺もそれを追い、会場まで出たところで……。
「強い強い強いぃぃぃ! 圧倒的! 特別参加ティリスティアを一体誰が止められるって言うんだぁぁぁっ!?」
勝負がついてしまっていた。
「ふぅ、完敗だ。ティリスティアと言ったな? 君はとても強い。ミナトとの試合が楽しみだよ」
「あら、ありがと♪ 貴女もなかなか強かったわ。さっきのジャン……なんだっけ? あの人よりよっぽど楽しかったもの」
間に合わなかったか……出来ればティリスティアの戦いは見ておきたかったが、まぁしょうがない。
そんな事よりクイーンが無事な事に安堵した。
「それは光栄だ。と言っても貴女は実力の欠片も見せていないように思えたがな。随分と手加減をしてくれたのだろう? 私が五体満足なのがその証拠だ」
「私は頑張る女の子が好きだから。怪我させたくなかったのよ♪ 一応私からのアドバイスだけど、あの肘から魔力を噴射して加速した拳はとても良かった。アレをもっと自在にどこからでも出せるようになると高速移動に磨きがかかって戦いの幅が増すわよ。ついでにちょっと難しいかもだけれど、インパクトの瞬間に拳からも魔力を放出できるようになれば火力も上がるわよ」
「……! アドバイスまでもらえるとは。心に刻んでおくとしよう。痛み入る」
「じゃあ健闘を讃えて握手♪」
「う、うむ……」
なんだか二人は結構仲良くなったようで舞台の上で握手を交わし、にこやかに戦いの場を降りていった。
「あ、もう次俺の番じゃないか。まぁサクっと終わらしてくるわ」
ジオタリスに手を振って舞台に上がる。
「……随分余裕じゃないか。サクっと終わるのがどちらか見ものだな」
いつの間にかディグレも舞台上に立っていた。
気配を消すのが上手いな……。
「先程の戦いでは全力を出していなかった。お前とは全力で戦えそうだ」
「そりゃどうも。言っておくがサクっと終わらせると言ったらサクっと終わらせるぞ」
ディグレが目を血走らせて俺を睨む。
だがロリナの眼光に比べればどうと言う事はない。あいつはほんと怖いからな……。
「ごしゅじーん! 頑張って下さいねー」
「まぱまぱーっ! ぶっころだよーっ!」
ぶっ殺しはしませんよ多分。
「おぉっとぉーっ!? 二人とも既にやる気十分だ! 二回戦第二試合が終わったばかりだがこのまま第三試合行ってみよう! では準備はいいかー? いいな? オーケー、始めっ!!」
開始と同時にディグレの姿がどんどん分裂していく。
忍者かお前は。
「ふふ……どれが本物かな? なんてつまらん事は言わない。全てが本物だ。この人数からの攻撃を受け切れるかな?」
「問題無いからはよ来いや」
質量を持った残像だと!? とか言ってやれば良かったかな。
総勢十二人のディグレが一斉に俺に飛び掛かって来たが、ちょっと強めに障壁を張り巡らしたので身体までダメージは通らない。
のだが、気が付いたら一人数が足りない。
ごぼっ。
突然俺の足元から一人現れた。地中を通ってきたのか?
確かに自分の身体を全て覆った訳ではなく地面から円を描く感じの障壁だったのでこれはいい対処法だ。
「驚いたか!? これが俺の実力ぶはぁっ!!」
ディグレの顔面を踏みつける。
「一応言っておくと地中を通ってきたのはいい判断だ。でもな、俺くらいになると地面越しにも何か通ってくるのが見えるんだよ。お前は地面に潜っている間も気配を殺すべきだった。それとな……いきなりワンピースの中に出て来るんじゃねぇよ!」
俺だって羞恥心くらいあるんだぞ!? それにな、男だから余計女物の下着履いてるの見られるの辛いんだぞっ!
「わかってんのかてめぇコラっ!!」
再びディグレの頭を踏みつけ、その頭部を横からサッカーボールのように蹴る。
しかしこれも分身の一つだったようで残り十一体は止まらない。
「お前らはもう許さんからな。次に俺に飛び掛かってきた一体の身体は引きちぎる。これは実行に移すからな。全部本物ならやめとけ。もし分身体が死んでも平気ならかかってこい」
「まだまだぁっ!」
お構いなしにディグレが飛び掛かってきたので問答無用でその顔面を鷲掴みにして握りつぶす。
会場からは悲鳴が聞こえたが俺はちゃんと言っておいたからな。
そのまま首元を持って身体を二つに引きちぎり、両手でそれぞれ足を掴んでディグレの身体を武器に残りのディグレを張り倒していく。
「き、貴様……なんという狂気じみた事を……!」
「やるって言ったらやるんだよ! その上で向かってくるなら自己責任だろうがボケェ!!」
ディグレの半身に魔力を通して硬質化させ、ディグレ棍棒としてどんどんディグレを撲殺していく。
「死んだら困る一体とかがあるなら俺に近付くなよ。近付いた奴から潰す」
さらにお構いなしにどんどん俺に突っ込んでくるので遠慮なく撲殺。頭を潰し腹を潰し手足をへし折りその首を飛ばしていく。
あっという間に舞台の上は血塗れの惨劇。
残り一体がじりじりと俺から距離を取った。
「まだやるならお前も潰すぞ。五秒やるから降参しろ」
「ご、ごご、ごめんなさい……!」
ガクガク震えたディグレがその場に崩れ落ちる。
「ごー、よーん、さーん」
「ま、待ってくれ! もうやめてくれ!」
「……俺は降参しろって言ったんだが? にー、いーち」
「参りましたーっ!!」
ディグレは頭を舞台にこすりつけて土下座した。
「……最初からそーすりゃいーんだよばかやろーが」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます