第140話:新たな目的地、新たな面子。


「どうしたもんか……もうこのメンツで行っちまうか?」


 みんな忙しそうだしネコもイリスも出てこないし。


「わたくしとミナト様とジオで……ですか?」


 ぽんぽこはジオタリスにジト目を向ける。


「姫、俺は頼りになるぜ? これでもきちんと英傑の一人だからな。ガハハ!」

「ジオは……なんというかわたくしの中で子供の頃のイメージが更新されてないんですの」


 そう言えばぽんぽこはジオタリスと再会した時にやけに親しそうだったな。英傑だから、以上の繋がりのようなものがあるのだろうか?


「お前らは昔からの知り合いなのか?」

「あー、俺がまだガキの頃にな、姫の遊び相手をしてた時期があったんだよ」

「ほんとにジオは昔からろくでもない男でしたわ」


 二人ともやれやれ、といったポーズを取る。意外といいコンビなのでは?


「姫は昔からやんちゃが過ぎていつも振り回されていたよ……何か問題を起こすたびに全部俺のせいにするし……」


 それは容易に想像がつくな。

 でも俺の空想の中のぽんぽこは小さなタヌキ少女だけれど。

 本来は可愛らしい少女なのだろう。ジキルも外見はいいと言ってたし。


「ぽんぽこって人の姿の頃はどんなんだったんだ? 俺の中では完全に今の姿のイメージしかないからなぁ」


「言ってやりなさいジオ!」


 ぽんぽこからの勅命により、ジオタリスはため息をつきながら棒読みで彼女を讃えた。


「そりゃもう見目麗しい美少女だよ。黙ってれば」

「一言……多いッ!」

「いでーっ!!」


 ジオタリスの脇腹をぽんぽこが容赦なくつねって捻り上げる。

 この二人のパワーバランスは今ので何となく分かった。


 ぽんぽこからしたら気楽に接する事が出来るという意味で割と貴重な相手なのかもしれない。

 ……いや、彼女の場合誰に対しても割とフリーダムだし態度を変えたりしないのでいつでもどこでも誰にでも自分を変えたりしないかもしれないが。


「と、とにかく! 俺を連れて行くなら役に立つぞ。ジキルの所じゃ出番も無かったからな、今度こそ!」


「そうですわね。あの時役に立った事と言えばジキルに話を付けて中に入る段取りをつけただけですものね」

「そんな言い方ないだろ」

「事実ですわ!」


 まぁあの時は中に入れた事が重要だったからジオタリスの貢献度は高いんだけどな。

 それを言うと付け上がるしぽんぽこの機嫌が悪くなるので言う必要は無いだろう。


「まぁいいさ。じゃあこの三人で行くか」


 俺達は家の外に出て、ホールを開く。

 すると……。


「おー、ミナトじゃねぇか。これから出発か? 俺も暇だから連れてけ。そろそろ暴れねぇと身体がなまっちまうぜ」


 うわー。あまり一緒に行動したくない奴に見つかってしまった。

『断りなさいッ! 今すぐ!』


「ゲオル殿が来て下さるなら百人力ですわね♪ ジオなんかよりよっぽど頼りになりますわ」

「おう、タヌキの嬢ちゃんよく分かってんじゃねぇか! 任せとけっての! ギャハハ!!」


「むぅ、ゲオル殿が相手では否定もできん。是非戦闘でお手並みを拝見したいものだ」


 ……なんか完全に付いて来る流れが出来てしまったな。

『えぇ……今から適当にいちゃもん付けて断りなさいよ!』

 無茶言うなよ……。


『うーっ! だったら私は今回ノータッチだから! ミナト君でなんとかしてっ!』

 そんな駄々っ子みたいに……。おい、おいってば!


 マジかよ本当に無視決め込みやがった……。


「分かった。じゃあこの四人で行こう。とりあえずガルパラ前まで行ってクイーンに預けてる馬車を回収しないとな」


 ガルパラの中じゃなくて前にチェックしておいてよかった。

 ゲオルやジオタリスなんかを連れてガルパラ内に入ったら軽く騒ぎが起きちまうぜ。



 皆をホールに放り込み、最後に俺が通ろうとした時、事態に気付いたロリナが鬼の形相でこちらに走ってくるのが見えた。


「貴様ッ! また姫を連れまわす気かぁぁっ!!」

「やべっ」


 急いでホールに飛び込み、ガルパラ前に出るのと同時に解除。


「……今何か声が聞こえた気がしますわ」

「お前帰ったら多分怒られるぞ。……俺もだと思うが」

「ミナト様と一緒なら怖くありませんわ♪」


 その妙な信頼はどこからくるのかねぇ。

 というかどちらかと言うとただからかっているだけにも聞こえるが。



 俺とぽんぽこでガルパラ内へ入りクイーンから馬車を受け取る。

 クイーンも一緒に行くと騒いでいたが、ぽんぽこに注意されてしまう。


「ガルパラの英傑は貴女なんですのよ? そう簡単に留守にしてはいけませんわ」


 個人的には頼りになるので付いて来てもらっても構わないのだが。


 結局、それでも行くと言っていたのだが、男の同行者があと二人いると伝えると、「……やっぱ行かない。私にはここを守るという重要な任務があるからな!」と胸を張っていた。


 物は言いようといったところか。

 馬車のような狭い空間内で男と長時間一緒に居なきゃいけないような状態にクイーンが耐えきれるはずがなかった。


 この自分に正直に生きているところはかなり好感が持てる。やはり人間そうでなくては。


 ……大抵こういう卑屈な事を考えているとママドラが茶化してくるんだが、今回は本当にノータッチを貫くつもりらしい。


 突っ込み入れたくてうずうずしてる癖に。


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