第68話:諸々の後始末その1。


 ぴろりろりん♪


 なんだか久しぶりにその音を聞いた気がした。

 キララと戦った後はレベルのあがり具合がかなり緩やかだったので、自分が今レベルいくつなのかあまり意識する事はなくなったのだが……。


 ステータスを表示してみると


 レベル:64

 種族:不明

 職業:リベンジャー

 通常スキル:剣技レベル6

 上位スキル:隠蔽工作

 特殊スキル:復讐


 ……なんだこりゃ?


 ママドラ、ちょっと聞きたい事があるんだが……。

『いや、わかんないわよ』

 まだなんも聞いてないんだが……。


『だってどうせ職業と特殊スキルの事よね?』

 まぁ、そうだけど……。


 職業リベンジャー? 特殊スキル復讐……?

 どっちも聞いた事がない。

 種族不明はまぁまだ分かるとして、この職業とスキルはどういう意味があって何が出来るんだろう……。


『復讐を果たしたからリベンジャーになったんじゃないかしら?』

 お前適当に言ってるだろ? だったらスキルの復讐ってなんだよ。


『私に聞かれても困るって。そのうち分かるでしょ?』

 はぁ……。こんな物騒な名前のスキルどんな時に使うんだよ……。


 常時発動スキルなのか特別な時に使えるものなのかそれすら分からない。


 まぁいいか。その辺を詳しく考えるのはまた後だ。それより今はイリス達の所へ帰るのが先決だろう。


 俺が城を出ると、街のあちこちで黒煙が上がっていて、それなりの被害があった事が分る。


 少しだけ不安になりながら街を進むと、あちこちで魔物の死体が転がっていた。

 人間の死体も転がってはいたが、ある程度城の兵士が仕事をしてくれたらしく、ほぼ戦闘は終了しているようだった。


 被害は……無い訳じゃないが、明らかに人間のものより魔物の死体の方が多いのでぼちぼちってところだろう。


 俺も通りがかりでまだ息のある人間は回復魔法をかけてやった。


 そしてローラ達の家が近くなってきた頃、大きな広場に兵士たちが群がっていた。

 そして、その中心にはイリスの姿が。


 面倒な事に巻き込まれていないといいんだが……。


 兵士たちをかき分け、イリスの元へたどり着くと……。


「この度はご協力感謝いたします! 我々だけではここまでスムーズな討伐は出来なかったでしょう。貴女の事は王へ報告し、然るべき褒美を……」


「えー、そういうのはいいよぉ……あっ、ぱぱ! おかえりーっ♪」


 どうやらイリスは兵士たちの戦いに協力していたらしい。

 一番偉いっぽいキラキラした鎧を着た奴がイリスに頭を下げているところだった。


「おう、ただいま。イリスもお疲れ様……どうやら頑張ったみたいだな」


「あれ、まぱまぱだっ! まぱまぱになってるーっ!」


『あらあら、イリスには私の事がちゃんと分かるみたいね。嬉しいわ♪』


「いろいろあってな。こっちも城の方は大体片付いたよ」


「あの、貴女はこの少女の親なのですか?」


 キラキラ鎧の人が兜を外してこちらに向き直る。

 兜から綺麗な銀髪が零れ落ち、風になびいた。

 こいつ……女だったのか。


「あぁ、イリスは俺の娘だが……?」


「そうでしたか。随分貴女が若く見えた物で申し訳ありません。彼女には本当に助けられました。我々だけでは倒せぬほど強い魔物もいたので……本当に感謝しております。騎士団を代表して礼を言わせて下さい」


「仰々しいのは苦手なんだ。俺もイリスも魔物退治は慣れてるから気にしなくていい」


「しかし……そう言えば先ほど貴女は、城の方と言いましたね? まさか城にも魔物が……?」


 あーめんどくせぇな……。どうやって切り抜けよう……。


「まぱまぱは城にきた魔物を退治してきたんだよね♪ おつかれさまーっ♪」


 そう言ってイリスが俺の腕にぎゅっとしがみついた。可愛い奴め。


 イリスの頭をくしゃくしゃと撫でまわしていると、銀髪のキラキラ鎧女がさらに頭を下げてきた。


「そ、そうでありましたかっ! 我々騎士団は城から離れてしまっていたので……それで、王は? 王は無事なのでしょうか!?」


「ああ、王様は無事だから安心しな。それに俺は大した事はしてない。城に来た魔物はきちんと兵士たちが頑張って倒したさ。俺は偶然王の所で一匹始末しただけだから」


「ではやはり王を助けて頂けたのですね! このダリル王国騎士団長アリア・レイウェル。貴女に心より感謝を……! 皆、このお二人に頭を下げろ!」


 騎士団長アリアの言葉にその場に集まっていた兵士たちは全員頭を垂れた。

 兵士たちの三分の一くらいはしっかりした鎧を身に着けていたのでおそらくそいつらが騎士団員なのだろう。


「お、おいやめろって。俺達はそんな大した事してねぇから」


 王様を脅してきたなんて言えねぇなこりゃ……。


「ミナト殿ぉぉっ!!」


 その時、どこからか大声が聞こえ、兵士たちの群れがざぁっと割れた。

 その割れ目を突き進んできたのは……王を守っていた騎士。


 また面倒な事になってきたぞ……。


「ミナト殿! 探しましたぞ! アレを厳重監視付きで閉じ込めて王の所に戻ればもう帰ってしまったというから慌てて追いかけてきたのです!」


「あ、兄上! いったい城で何があったのですか!? しかも、ミナト……? ミナトって、あのミナト・ブルーフェイズですか?」


 一瞬でその場の兵士、騎士団員、そして騎士団長の視線が俺に突き刺さる。


「い、いや……言いにくいのだがあの手配書は我々の間違いだったのだ! このお方は確かにミナト殿だが、本当はこの国の救世主であらせられるのだ!」


 あらせられるってお前……あんまり持ち上げないでくれよ。この騎士と王への態度が申し訳なくなってくるだろうが……。


「間違い……? 兄上、どういう事なのです? いったい何がどうなっているのやら……詳しく聞かせて頂けませんか?」


「うむ。ではお前にはきちんと話をしておこう……皆聞くがよい! お前らの中にはミナト・ブルーフェイズと聞いて不審に思う者もいるだろうが、このライル・レイウェルの名においてこの方々の身の潔白は保証する! それどころか王を命がけで守って下さったのだ。誤解の無いように! 街中の手配書を直ちに剥がし、国中へその旨速やかに通達するように! 詳しい事は後程通達する。では解散っ!」


 ライルとかいう奴は騎士団長アリアよりも権力があるのか、彼の言葉に皆ビシっと敬礼して速やかにその場を後にした。


「ではアリア、お前には本当の事を話そう。しかし……ここでは人目に付くな」


「あっ、それならローラの家に一緒にいこうよ♪」


 イリスがそんな提案をして、二人は目を丸くする。


 こんな騎士団の偉い人達連れてったらローラたちも驚くだろうけど、もう面倒だから口を挟むのをやめた。


 それに、そこにいるであろうネコにも早く会いたかったし。


『あら? あらあら?』

 なんだよ……。


『いえいえ~♪ いろいろ心境の変化があったんだな~って思ってね♪』


 ……うっせぇ。

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