4.
風呂上りのマサルは鏡の前で新しいボディをくまなくチェックしていた。
「痩せたはいいが、これじゃタダのヒョロだな」
脂肪はなくなったが、筋肉がつく理由はどこにもなかった。
しかし、動きやすくなった身体はトレーニングもやりやすくなったハズだ。
「よし明日から頑張るぞ」
「そうだな、戦いはまだ始まったばかりだ」
「ん?」
「ズィーガッガの残りは4体だ。
だいたいの存在領域は推定できるが、あとは現地で捜索するしかない」
「聞いてない・・・」
まあ、契約のときに聞いていなかったんだろう。
「それよりも、今のエネルギー充填量では何もできない。
まずは元の身体に戻すことだな」
「ええーーっ!?
元に戻せってのか、せっかく痩せたのに?」
「消去光が放出できなければズィーガッガの排除はできない。
カロリーの摂取はキミの役目だと契約時に説明しただろ?」
「カロリー摂取?」
「ああ、方法はキミに任せる。その右手のデバイスにはエネルギー充填を効率化する機能もインストールされている。とにかく急いで元のレベルまで戻して欲しい」
「カロリー摂取の方法っていうと、つまり 食べる ってことかな?」
「他に方法があるのか? 」
「じゃあ、ラーメンとかピザとか、食べないといけないってことだな」
マサルはこぼれおちる笑みを抑えきれずにいた。
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「豚次郎 環七通り店」
翌日、マサルは第二の戦場に立っていた。
環七といえばラーメン戦争。激戦区だ。
しかしマサルにとっては別の意味で戦争であった、なにしろ地球の平和を守るためなのだ。
「エネルギー源を入手するための経済的負担については契約時に・・・」
「オッケーオッケー! 人類のためだ。
今まで貯めてたのは脂肪だけじゃない。超過勤務をなめるなよ!」
ズィーガッガは残り4体。ということはエネルギーの充填は今回を含めて4回。それで終わりだ。1杯1杯おろそかにしてはならない。
マサルはカウンターに座り目を閉じた。ひさびさのラーメンだ。
「ニンニクマシ、アブラマシマシ、麺固めでお願いします」
背脂増量は避けて通れない。地球の平和がかかっているのだ。
「いただきます・・・
ズズッ
ぷはぁ〜〜
ゾゾッ ゾゾッ
ゴクリ
モシャモシャ
ズズッ
ふぅ・・・
ゾゾッ ゾゾッ
ズズッ」
激しい戦いだった。敵を最後の1滴まで飲み干したマサルは汗をぬぐいながら店を後にした。
「次はどこへ、、
うっ・・・」
腹部の締め付けに耐えられず、ベルトをゆるめズボンのボタンを外した。
右腕に装着したままのゲームのセンサーが鈍い光を放ちながら微かに振動している。
「こ、これは・・・?」
「エネルギーの充填が加速されているんだ」
センサーから銀ネコの解説が聞こえる。ようするに爆速で太っているというワケだ。下腹の肉をつまむと、いつもの感触が戻って来ていた。
「いや、こんなもんじゃない。オレには戦士としての責任があるんだ。
じゃ、次。いったんパフェで整えてから、ピザ食べ放題だ」
マサルの目には忘れていた輝きが戻ってきていた。
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