3.

契約ということで、謎ワードが山ほど出てくる説明を聞かされたが、すべてYESと答えた。まあ、インターネットでもその辺は同じだ。

「では、最後に消去光の放出機能をインストールするよ」

銀のネコがマサルの右腕に近づくと、装着したままの『フィットネスアベンジャー』のセンサーが七色に光り出した。

「ちょっ! あー! これ買ったばっかり! 高かったんだぞ!」

かすかな振動を残しながら元の色に戻るセンサーを見つめるマサルの目にはうっすら涙がにじんでいた。

「心配ない。放出機能をインストールしただけだ。元の機能は何ら失われていない」

「ほっ」

「ただ、契約期間中はそれを外すことはできない」

そんな重要な話は先に言っといてくれ、と思ったが、さっきの契約話の途中で出てきたかもしれない。

どっちみち手遅れなのだ。







深夜1時過ぎの住宅街をゲーム機のセンサーを腕に巻いた男がうろついている。

職質されるのが先か、ズィーなんとかを発見するのが先か?

「ズィーガッガは地球人の思考を集めに来ている。

 だから地球人のいるところを探すのが効率的だ」

マサルの傍らにはミニサイズとなった銀ネコが浮かんでいる。

「地球人ならこの辺の家全部 みんな寝てるとこだ。

 キミみたいに急に部屋の中に現れるんなら、探しようもないだろ?」

「ズィーガッガの伝搬体は物理的な制約を受ける。壁を通り抜けたりはできない。地球の重力の影響も受ける」

つまり、人を探してそこらをうろうろしてるということか。マサルと変わらない。


「でさ、そのズィーなんとかってのはどんな見た目なワケよ?

 キミみたいなネコっぽいやつか?」

「うーん、そうだな。

 あ、今 マサルの前方に見える生き物と同じで、毛に覆われて二足歩行で、、、」


「いたーーーーーーーーっ!」

「え゛ーーーーーーーーっ!?」

マサルの目の前をマンガのような2頭身のイヌが直立歩行でスタスタと通り過ぎていくところであった。


「どうすんの? どうすんの?どうすんの? 」

マサルはただうろたえた。

「消去光の放出体をあいつに向けるんだ」

「これを? 向ける?」

マサルはセンサーを巻いた右腕を2頭身のイヌの方へ差し向けた。

「それで? それで? 」

「光の筋が標的に向かって伸びていくのをイメージするんだ」

「光の筋が? こうやってアイツに、、、」

もう一方の手をひらひらさせて光の筋の出かたを確認しようとしたとき、、


「ズドーーーーーン!!」

「ぬをーーーーーっ!!」

マサルの右腕全体が光り、極太レーザーとなって、二足歩行のイヌを撃ちぬいた。


「ギャンっ!!」


パタリと倒れたイヌの全身がぼんやりと光を帯びると、やがて銀ネコ出現時と同じような六角形の粒子が浮かび上がり、マンガっぽい金色のイヌの姿になっていった。

「キミと似てるな」

「あれがズィーガッガの遠像体だ。あれだけでは地球人にとって害を及ぼすことはない」


「ふう〜〜〜〜〜っ

 これで完了?」

「ああ、伝搬体のすべての機能が消去された」

マサルは腰が抜けたようにへたりこんだ。


「なんか熱いな。汗びっしょりだ」

歩き回った疲労と興奮もあるだろうが、発汗は異常なレベルであった。

「帰って風呂でも入るか、

 って、のわーーーっ!!?」

マサルが立ち上がった瞬間ズボンがひざまでズレ落ちてパンツ丸見えとなった。

「こ、、これは・・・」

ベルトを持ってたくし上げたズボンの腰回りは拳が2つ入るほどゆるゆるになっていた。

「痩せた・・・のか?」

「ああ、蓄えられたエネルギーをほとんど放出してしまった」

「ふ、ふは・・・

 フハハハハッ!!!!」

「ど、どうした?」

「とりあえず、帰って風呂だ!」

住宅街でパンツ丸見えの男が通報される可能性は高い。

マサルはズボンを両手で吊り上げながらダッシュで自宅へと駆け出した。

「軽いっ! 軽いぞっ!! まるで月面のようだっ!!!!」



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