史上最強の天才少女は、先輩を落としたい~プロ棋士vsフラグブレイカー~

D@ComicWalker漫画賞受賞

第1話 神武以来の怪物の悩み

 とある美少女は悩んでいた。


 彼女は、藤本アキラ。16歳の女子高校生。

 職業、プロ棋士。

 将棋連盟所属の七段で、棋戦優勝2回、タイトル戦挑戦1回の実績を持つ。


 史上最年少13歳でプロ入りし、テレビのドキュメンタリー番組「スペシャリスト」、「パトス大陸」で何度も特集された天才棋士。

 別名、神武以来じんむこのかたの怪物。


 彼女は、幼少期から将来を嘱望しょくぼうされた女性であり、史上最年少かつ史上初の女性プロ棋士になった逸材である。

 

 彼女は、つい先日、8大タイトルの一つ聖叡戦せいえいせんの挑戦権を獲得し、史上最年少タイトルホルダーを期待されている。

 彼女の美貌もあいまって、すでにアイドル的な人気を獲得しているのだ。


 そんな彼女にも悩みがあった。

 天才の悩み。それは、将棋界の未来を担う重圧かそれとも、次に戦う王者の対策か……


「なんで、タイトル戦がクリスマス当日なのよーーーーーーーーーーーーーーー」  


 そのどちらでもなかった!!


 彼女は自室の机に突っ伏した。美しい黒髪が芸術作品のように、机の上に散らばっていく。

 

 どんなに天才でも、彼女はまだ思春期真っただ中の女子高生。クリスマスは遊びたい!

 

 聖叡戦は、1日制のタイトルマッチで、すでに藤本七段は3勝2敗でリードしている。

 次に勝てれば、史上最年少タイトルホルダーなのだ!!


 12月25日は、将棋の歴史が変わるかもしれない運命の日。

 しかし、大事な対局が、彼女の初恋に立ちはだかる。


 そう、彼女は、気になる先輩をクリスマスデートに誘って、あわよくば告白しようと考えていたのだ!!


 1年かけて天才的な頭脳をフル回転させてプランを作り、対局の勝利を積み上げて、リッチなデートができるほど貯金もしたのに!!

 資金集めのためにやる気を出して、30連勝&タイトル挑戦という実績を作ったのが、今回だけは裏目に出てしまった。


 アイドル的な人気を持つ彼女のことを将棋連盟も期待していた。

 そして、偉い人は考えた。


「もしかして、クリスマスにタイトル戦すれば、盛り上がっちゃうんじゃない!? さらに、藤本さんみたいな強くてかわいくて性格もいい女子高生タイトルホルダーが聖夜に爆誕。世はまさに、大将棋時代!!」

 

 会長がルンルンで、その計画を発表した時、彼女は絶望に染まったのは言うまでもない。

 

 なら、クリスマスイブにデートをすればいいじゃない。そう思うかもしれない。だが、将棋のタイトル戦には、前夜祭というものがある。

 ファンやその対局がおこなわれる地域の市長さんや知事さんが集まって実施される大事なイベントだ。


 そう、詰みなのである。女子高生のわがままで、日程が変更できるほど軽いイベントではない。

 イブは前夜祭、本番はタイトル戦。


 はい、まじで詰みする5秒前。


 とりあえず、会長のことを絶対に許さないリストに入れて、彼女は次善策を考える。


 すべては、先輩を射止めるために!!



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