第65話 制約があるんですね

「まあ、簡単にはいかないだろうな」

「やっぱりそうかな?」


 開口一番イーサンはそんな事を言う。

 何が駄目かと言えば薬草を使ったクリームの件だ。

 まあ、レイナとしても予想はしていた。


 強力な回復薬の元となる薬草を使ったクリームなど異常な効果が出るのは容易に想像できる。

 そんな物が簡単に許可されるとは思えない。

 先ずは実験、検証が必要だろう。

 しかもそれには国に関与される事は目に見えている。


「でもイーサンが関わっていれば許されるんじゃないかな?」


 謁見の際に国王もそんな事を言っていたのでレイナは提案してみる。

 強力過ぎない物なら市場を乱す事もないはず。

 回復薬用の個人的な薬草作りを封じられたレイナは自立の為の新たな主力商品を生み出さなければならない。


 そんな希望と決意に満ちた目でレイナに見られればイーサンとしては断り辛い。

 好意を寄せている女性なら尚更だ。

 王子のくせに甘いのではと言うのは酷な事かも知れない。

 

「まあ、そうだな。やり過ぎない程度に頼むよ。勿論、完成品は一番初めに確認させてもらうよ」

「うん、ありがとうイーサン!」


 イーサンの眩しい笑顔にも慣れてきたなとレイナは思うが、今のはただの苦笑いなので威力が落ちただけであり本気の笑顔ならレイナとて直視出来ないで、もじもじしてしまうだろうなと護衛のラウルは横で思う。


「ん? どうかしたのかラウル?」

「いえ、何も問題ありません!」


 そんなラウルの気持ちを察したのかイーサンは声を掛けた。

 いい加減二人がくっ付いてくれないかとラウルは思うが言葉にはしない。

 ラウルはイーサンとは同い年だが温かく二人を見守る姿は、まるで父親の様だ。

 いつも周囲に気を配りイーサンやレイナを守っている影の功労者であるがレイナの作るクリームに興味を示す。


「レイナはどんな効果がある物を作るのですか?」

「ええ、クリス様とも話したのですが……」


 それからレイナはイーサンとラウルにクリスティーナと考えた事を熱く語ったのだが、そのどれもが強力過ぎる物であり今までにない物だった。

 

 これは摺り合わせしないと大変な事になるとイーサンとラウルは思う。

 しっかりと吟味して市場に出す物を選ばなければ混乱する事は目に見えている。

 イーサンはレイナに許可なく勝手に売ったり譲ったりしては絶対に駄目だと口を酸っぱくして言う。

 ラウルもレイナを守らなければならない理由が増えてしまい護衛方法の調整に頭を悩ます事になる。


 しかし女性の美への追求は凄い物だとイーサンは感心する。

 女性は若く美しい姿のままで老衰するのが理想なのかと本気で思っているのではないのか。

 そんな風に疑いたくなってしまうのだった。

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