第55話 薬草栽培ですね
国王との約束通りレイナは薬草を作る事となる。
与えられた区画はレイナ専用の畑であり特別に設けられた。
以前の畑より圧倒的に広い、この場所で薬草を作らなければならない。
いい条件だと思っていたけれど大変な事を引き受けてしまったのだろうかと、レイナは少し後悔する。
「でも、これぐらいなら楽勝よね」
レイナは自分を奮い立たせ、どういった薬草を作るかに頭を切り替えた。
レイナの作った薬草で回復薬が精製される。
それはこの王宮の兵士達に支給され実際に使用されるのだ。
手始めとして魔物討伐に向かうバレン率いる第二騎士団に投入されることが決定した。
下手な物は作れない、レイナは気を引き締める。
先ずは森に向かい栄養塊を精製しなければならない。
以前と同じ様に地面に手をかざし【拒絶と吸収】を発動させる。
「【吸収】!」
この時に吸収だけを言うのがポイントだ。
拒絶と吸収を別々に分けた方がイメージがしやすいし威力も上がるような気がしたのでレイナはそうしている。
実際のところ威力も上がっているので、信じる気持ちというのは大切な事なのかもしれない。
地面の光が収まり発動が終わる。
【インベントリ】内を確認してみると栄養塊(吸収)と表示されたので成功だ。
レイナの能力も上がったのか塊の量は多い。
魔力循環の訓練により扱える魔力量も増えたので、この様になったのだろうとレイナは推察する。
「これって土を耕さないといけないよね?」
支給された土地はまだ土が硬く耕されていない場所。
今までは面積も狭かったし元々畑だったので労力は少なかった。
今回は広いので簡単にはいかない、とは思うのだがこの世界には魔力がある。
魔力を土に行き渡らせ土を掘り起こす事が出来る。
「魔力があるって便利よね」
ただこれだけの広さに魔力を行き渡らせるのは熟練者でも難しい。
この事をイーサンはいつも近くでレイナを見ているニコラに相談したところ、今のあいつなら問題ありません、との事でこの土地を与える事にした様だ。
ニコラの予想通りレイナは数分でやってしまうのだから、それを普通だと思っているレイナも大概だ。
本来持っていた魔力量の多さと、魔法の天才ニコラにより鍛えられたレイナの魔力制御能力は格段に上がっているという事を本人は分かっていない。
これだけでも国の幹部達が騒ぎ出し取り込もうとする程だ。
しかしこの事は国王とイーサン達の胸の内に留めている。
そうでなければレイナは今頃のんびりと薬草なんか作っていられないだろう。
とりあえずレイナは注文を貰った薬草の種を植えていく。
前回と同等の物が必要なので同じ様に植えて栄養塊を撒く。
これだけの広さならかなりの数が出来るだろう。
そして一区画は別の物を植える。
別の物といっても薬草の種も栄養塊も変わらない。
イメージの違いと言うべきか魔力の込め方と言うべきか、いつもより力を込めて薬草に栄養を与える。
レイナ的には大きくなってね、と言うぐらいの感じだ。
気持ち的な問題なので特別な事はしていない。
これで変化があればいい程度のお試し的な意味合いでレイナは魔力を込めた。
実際には成長を見てみないと分からないと言うところだろう。
「明日には収穫出来るかしら」
こうして薬草作りは順調に進んだ。
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