乾いた心
一色 サラ
01 保海 健太①
朝の9時過ぎ。窓から鉄格子の隙間から、差し込んだ拘置所にある部屋。机の上に真っ白な置れている。ボールペンは全く動く気配はない。頭の中に、何かが、浮かんでくることはない。15分経っても、文字を書くことは何もない。便箋は真っ白な状態のまま、机の上に置かれている。
「君には謝罪の気持ちを感じられない。遺族である我々に謝罪の誠意が伝わるまで、書いてほしい」と勝手に決められて、毎週のように、1時間ほど、この作業が続いている。ただの苦痛でしかたがない。顔を上げると、僕の作業を看守が睨んいる。
数ヶ月前に『申し訳ございません。これから先、償えるように努力します。』的な文章を書いていたことがあった。このどうでもいいと思える作業を、いち早く終わらせたかった。でも、弁護士から、まだ書くように言われた。こんなことをしても、死んだ人間など、生き返るわけもない。殺したんじゃない。勝手に死んだだけだ。
机と椅子しかない部屋の乾いた冷たい時間が、全く進んでいる気配がしない。早く1時間が経たないかと願い続ける。
僕には遺族という人を満足させる義務などない。この作業は僕にとって、何の意味もない
毎週のように、拘置所のある部屋に入れられ。この作業は繰り返されている。僕の時間を奪っていく。何も感じない。僕の気持ちに何も分からない人に、何を言われようと、乾ききった脳内には、何も浮かんでは来ない。
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