夢と幻想、高架下の奇跡プロット & 街の景色アイデアノート

春嵐

第1話 本編

 駅前から、大学のキャンパスまでを繋ぐ地下鉄路線。

 地下鉄だけど、普通に地上に出ている。

 そして、政令指定都市じゃないのに地下鉄がある。


 不思議な、街だった。

 特殊なアスファルトなどを使っているらしく、高架下なのに騒音も振動もしない。下は環状道路のジャンクションや駅前に繋がる道路の道筋になっているので、高架下なのに無駄に地価は高かった。


 地下鉄と車と、あとバスもあったっけ。交通の要所みたいになっている。街の外に出るなら駅前が便利だけど、街中を回ったりするなら高架下がいちばん住みよい。


 自分にとって、唯一誇れるものが、高架下だった。


 この高架下の、地価の高いところに住んでいる。

 それが唯一のアイデンティティで、これをなくしてしまえば、本当にわたしは、誰でもなくなる。


 普通の生活。

 普通の仕事。

 普通の人生。


 そんなものだった。


 でも。高架下に住んで、ちょっとだけ幸福感を味わう。そのためだけの、人生。


「ただいまっ」


 誰もいない部屋。今日も元気に帰ってきた。


 私の、愛しの高架下。


「今日も働いたっ」


 ごはんを作って。お風呂に入って。


 しあわせ。

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