異世界転生した僕が魔王を倒すまでの、よくある物語。
クサバノカゲ
第一章「転生」
僕の名前は佐々木ツトム、高校生だ。趣味はスマホゲームとアイドルと、それからええと…… うーん、自分語りは省略させてもらってもいいかな。
どう考えても僕のそれにはなんの面白みもないし、何よりめんどくさいじゃあないか。
そうさ、僕はめんどうなことは何もしたくない、好きなことや楽しいことだけしていたい、でもそのために頑張りたくもない、そういういちばんダメなタイプの人間なんだ。
そんな僕はある日のこと、コンビニで立ち読みでもしようと歩いている途中、何もない場所でつまづいて(よくある)、バランス崩してつんのめり、勢いあまって小学生くらいのちいさな女の子をどんと突き飛ばしてしまう。
これはさすがに(よくある)では済まない、下手すれば通報の事態だが、タイミングよく暴走運転の高級車が歩道につっこんできて、僕は通報されるどころか子供の身代わりで死んだ
まあ、即死で痛みもなかったし、幸運ということにしておこう。
しかも幸運は重なるもので、なんと死んだはずの僕の前に可びっくりするほど可愛くて優しそうなお姉さんが現れ、ラノベなんかでよくあるあの異世界転生の勧誘をしてきたのだ。
もちろんすごく便利なチート能力も付けてくれるという。いやあほんとにあるんだなあ、こういうの。
なにより、魔王を倒せるのはあなただけですとささやく長濱ねるちゃん似のお姉さんの優しく甘い声に、いままで一度も女性から期待されたことのない僕が抗えるはずもないじゃないか。
というわけで僕は、二つ返事で彼女の願いを聞き入れたのだった。
そうして剣と魔法のファンタジックな異世界に産まれ直してから、もう三十年ぐらい経ったのかも知れない。こちらでは一年の周期が異なるから正確なところはわからないけど、まあ、そんな細かいことはこの際どうでもいい。
何せいま僕はついに魔王城の最奥、あまたの勇者が志半ばに命を散らしてきたという玉座の間に至り、聖剣の切っ先を魔王の喉笛に突きつけているのだから。
「――なぜなんだ、転生者よ!?」
そこで追い詰められた魔王が絞り出したのは、虚勢でも憎悪でも命乞いでもなくて、純粋な疑問の言葉だった。
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