赤いぬりえ
犬屋小烏本部
第1話ケース1
ぼくのいえにはね。
パパがくれたぬりえがあるの。
まいにちまいにち、パパがかえってくるまでいいこでぬりえしてまってるの。
きょうもパパはおしごとでおそいけど。
ぼくはいいこでぬりえしてまってるの。
ちいさなおへやでひとりでずっとまってるの。
<ケース1>未成年誘拐、及び監禁事件
5才の少年を誘拐し、数ヶ月自宅にて監禁した30代男性。少年は無傷で保護された。
男性は少年に対し「自分は少年の父親だ」と言いくるめ、懐中電灯のみの明かりの中押し入れにて監禁を行った模様。
少年には食事・風呂・トイレ等の日常生活は与えていた模様。
ただし、これは当時の話である。
あれから20年以上経った。
あのときパパから貰ったぬりえは今でも机の上に置いてある。
パパはあの日からずっと帰って来ない。
こんなにぼくはいいこにしてまっているのに。
パパは赤いクレヨンしかくれなかったけど、ぬりえはきれいにキレイに真っ赤に塗られている。
寂しいなあ、寂しいなあ。パパがいなくて寂しいなあ。
そうだ。それならぼくが「パパ」になればいいんじゃない?
また二人で真っ赤なぬりえで遊ぼうよ!
5才の少年を誘拐し、数ヶ月自宅にて監禁を行った30代男性。彼は20年以上前の「未成年誘拐、及び監禁事件」の被害者であった。
被害者であった少年は、年月を経て加害者へとなってしまったのである。少年を監禁していた部屋には大量の赤いクレヨンと一冊の塗り絵が置かれていた。塗り絵はどれも真っ赤に塗り潰されていた。
警察は男性に精神異常の可能性も含めて調査を行っている。
これは現在の話である。
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