第5話 真一、一人で『出張する』…出雲と優香

真一はこの日の夜も、妻のみつきと床について、みつきはさっさと寝入った。


真一(さて、出雲の話が見れるんでしょうか…?)


ご期待通り、夢の中へいざなう。出雲のビジネスホテルの朝の場面からだった。




(夢の中)

真一はビジネスホテルを出発し、出雲大社へ向かった。


真一は出雲大社を参拝する。参拝後、真一は北川のことを知っているとされるお茶屋(甘味処)へ向かう。


店員「いらっしゃいませ」


真一が空いている席に座る。


店員「ご注文は?」

真一「ぜんざいください」

店員「かしこまりました」


その後、真一にぜんざいを食べた。

ぜんざいを食べ終わった後、真一は店員に尋ねる。


真一「すいません」

店員「はい」

真一「ちょっとつかぬことをお尋ねしたいのですが…」

店員「何でしょうか?」

真一「このお店に北川克也という男の子のお知り合いがいらっしゃると伺ったのですが…」

店員「店主かもしれません。少しお待ちいただけますか?」

真一「すいません」


しばらく待っていると、女性店主が店の奥から出てきた。


女店主「あの、克也のことで何か…?」

真一「僕、北川克也さんの知り合いから頼まれて来た堀川と申しますが、実は克也さんの知り合いから、『克也さんが消息不明や』と聞きまして、本人がいま体調不良で入院しています。代理でやって来たのですが、調べていましてこちらに克也さんをよくご存知の方がいらっしゃると伺ったので、あつかましく寄せていただきました」

女店主「そうですか…。克也は私の唯一の親族でして、克也の母親の妹になります」

真一「そうでしたか…」

女店主「あの、克也が何かしたのですか?」

真一「いえ、知り合いというのが、京都の山口丹に克也さんが小学生だった頃、仲良しやった同級生がいまして、その子が元々体が弱い子で、克也さんが長い目で見ていたそうでして、先日山口丹で会う約束をしていたそうなんですが、その子が体調不良で病院に運ばれて会えずじまいやったんです。それでこちらに来て会いたかったのですが、また体調不良で入院していまして…」

女店主「そうでしたか…。あの子、母親が松江の男のところへ克也連れて行ったのですが、男は毎日酒と博打に明け暮れて何度も克也の母親を説得したのですが、言うことを聞かなくて、遂には死んでしまって…。残された克也が不憫で…」

真一「そうやったんですか…。あの、ちょっとつかぬことをお尋ねしたいのですが、克也さんのお母さんは未婚の母親と伺いました。克也さんの実のお父さんは…?」

女店主「……………」

真一「僕も、こんなこと聞きたくはないのですが、実は昔小学生の頃、京都(山口丹)で克也さんと知り合いの女の子が出会っています。女の子が小学校で体調不良で、たまたま通りかかって違うクラスだった克也さんが、その女の子を助けて保健室へ連れて行ったところから、2人はとても仲が良いと聞いています。女の子は先日、克也さんと会う約束をしていましたが、出会う途中で倒れて救急車で病院に運ばれて会えずじまいでした。それで、彼女は克也さんのことで頭がいっぱいの状態で入院しています。彼女も克也さんが出雲で消息不明だと聞いています。彼女には克也さんの本当のお父さんの事とかは伏せますので…。そうでないと、克也さんと彼女はこれからも会えずじまいになってしまいます。彼女の為に教えていただけないでしょうか? 」

女店主「そうですか…。わかりました。でも本当の父親のことは勘弁していただけないでしょうか…。松江の男と克也の母親の事はお話しします」

真一「そうですか…」


真一は女性店主の話を真剣に聞いた。



その頃、北町では白木が村田と電話で話していた。


白木「堀川のことなんやけど…」

村田「堀川くん何かあったん?」

白木「それが…、昨日アイツに電話したけど、一週間留守にしてるって、おばちゃんから言われて…」

村田「一週間留守にしてる? どこに行っとってんや?」

白木「それが全くわからんのや」

村田「ゆうちゃんと気まずくなってからずっとやもんね、堀川くん…」

白木「…加島とは話した?」

村田「いや、春休みになってからは話してないよ」

白木「そうか…」


村田との電話を切った後、白木は加島と電話で話そうか迷っていた。

その夜、白木は優香の自宅に電話をかけた。


優香「もしもし」

白木「もしもし白木ですけど」

優香「うん」

白木「今少し時間ええか?」

優香「うん」

白木「堀川のことなんやけど…」

優香「…………」

白木「堀川をこんなことになったのは、オレのせいなんや…」

優香「白木くんが?」

白木「うん…」

優香「なんで白木くんが…?」

白木「この前、オレが加島に電話したやんか?」

優香「うん」

白木「それでその時オレが『堀川が加島に付き合ってほしい…って』言うて加島が『興味ない』って返事したやんか?」

優香「うん…」

白木「あれ、オレが堀川に入れ知恵したようなもんなんや…」

優香「どういうこと?」

白木「前に堀川と話してて、堀川が帰りの電車で一切話さなかったことがあったやろ?」

優香「うん」

白木「あの時、オレが堀川に『加島と付き合ったら?』って言うたんや。堀川はずっと『幼なじみや』って否定してたんやけど、アイツを無理強むりじいさせたのは、このオレなんや…。だから、堀川どころか加島まで困らせてしまったのはオレのせいなんや…。ホンマにゴメン」

優香「そうやったんか…」

白木「お前ら幼なじみで、めっちゃ仲良しやから、付き合うのも自然かと思ってたんや。この前、保健室で大川先生におお叱らいにあって、雷を落とされたんや。『あの子にはあの子の考えがあるし、あの子のペースがあるのに、あんたが無理強いしてどうするんや❗』って…。オレもやけど、坂本とかみんなお前らのことが心配やって、よかれと思ってやったら、余計なことをしてしまった格好になって…」

優香「そうやったんや…」

白木「それで堀川がここ2週間程、顔を見なくなって、避けてるんかなぁ…と思って、昨日堀川の家に電話したら『一週間留守にしてる』って、おばちゃんから言われて…。アイツどこに行ったかわからんのや…」

優香「そうかぁ…」

白木「傷心旅行してるんかなぁ…って…」

優香「……………」

白木「加島、もし堀川のこと嫌いになってるんなら、考え直してやってほしい。これはオレのせいやから」

優香「事情はわかった。でも私、もう森岡くんと付き合ってるから…」

白木「もう『幼なじみ』は終わりか?」

優香「ううん、それは事実なんやから。ただ、堀川くんがどう思ってるかやろなぁ…」

白木「加島は堀川のこと、今はどう思ってるんや?」

優香「堀川くんが『幼なじみ』やって言うてたら『幼なじみ』や」

白木「そうかぁ…。加島、でもお前、本当は堀川ではなかったんか?」

優香「堀川くんが『(恋愛に)興味ない』って言うてるんなら、興味ないんや」

白木「そうか…」

優香「白木くん、もう気にしなくていいよ。事情はわかったから…」

白木「本当にすまなかった、許してほしい」

優香「もういいよ。堀川くん次第やろなぁ…」

白木「オレ、堀川からは『もうほっといてくれ』って言われてるから…」

優香「そっか…」

白木「また何かあったら声かけてほしい。堀川のこと、オレ考えるから…」

優香「ありがとう」


白木は電話を切った。

優香は白木からの電話を聞いて、少し考えていた。


優香(しんちゃん、頭の中がパニックになってたんやなぁ…。不器用やから仕方ないけど…。どうしようかなぁ…。私もしんちゃんのこと、よく知ってるのにこんなこと(森岡とお付き合い)して、余計に傷つけたんやなぁ…。一週間留守にしてるって、どこ行ったんやろ…)



翌日、出雲にいる真一は、市街地をブラブラ歩いていた。何か手がかりになるものはないか探していた。香織から借りている北川の写真シールの写真を見ながら北川を探す。


あっという間に昼となり、真一は昼食に出雲そばを食べた。


その後も出雲、松江を歩き回ったが手がかりになるようなものは何も見つからなかった。時間だけが過ぎていく。


そして滞在からまもなく一週間が経とうとしていた。真一は宍道湖で途方に暮れていた。


真一「どこにおるんや、本人は? なんで消息不明なんや?」


高校の修了式から一週間が経った。真一は松江と出雲に滞在し北川を探し回っていたが、山口丹やまくちたん時代の話も聞いておくべきだと思い、山口丹に戻ることにした。


電車に乗って、山陰本線から乗り継ぎしながら福町まで戻ってきた。真一は福町から丹国たんこく行きの普通電車に乗った。

丹国行きの電車が停まっている向かい側のホームには北町行きの電車が停まっている。北町行きの電車には、森岡とのデート帰りの優香が乗っていた。


丹国行きの電車が先に発車する。ドアが閉まり丹国行きが発車した。それを優香が何気なく見ていると、真一の姿を見たのだった。


優香(え、真一くん? なんで丹国行きに乗ってるの? この一週間、どこにいたの?)


一人で少し不思議に思う優香だった。そうとは知らずに丹国行きの電車に乗った真一は、山口丹へ向かった。


丹国行きと北町行きは途中駅までは同じ路線を走る。途中駅から丹国行きの路線と北町行きの路線に分かれている。優香は真一が途中駅で北町行きに乗り換えてくるのでは…と考えていた。しかし、北町行きの電車が途中駅に到着しても、真一の姿はなかった。


優香(京都にでも行くんやろか…? 何かあったんやろか…)


真一の行動に皆目検討つかない優香だった。

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