悪役令嬢と恋と聖剣
@lovemomo
第1話 悪役令嬢と恋
冬の日差しが差し込む渡り廊下で、彼とすれ違う。
鼓動が速くなる。
彼はイケメンの友人たちと談笑しながら、通り過ぎる。
彼はイケメンというよりも、美しいと言った方があっていると思う。
整った人形のような顔立ち。白い透きとおった肌に映える宝石のような青い瞳。サラサラの金髪。
天使というものが存在するならば、こんな容姿をしているんじゃないかと思う。
彼はこの国の第一王子で、私は公爵令嬢で彼の婚約者。ローズ•ド•フラン。父はこの国の宰相をしている。
彼、レオン王子のお母様は側室の為、我が公爵家の後ろ盾を得る為の婚約なので、完全なる政略結婚になる。
まあ、貴族で政略結婚なんて当たり前だけれど。
けれど、私は、なりたくなかった。
政略で婚約者になったとはいえ、私は彼の事が嫌いな訳ではない。それどころか、淡い恋心を抱いている。
でも、私は彼とは結ばれない運命なのだ。
そう、あらがえない運命。
この世界が、私の前世でのあの『聖剣の乙女』の世界であるならば、私は婚約破棄される悪役令嬢なのだから。
前世の記憶を思い出したのは、去年、12歳の春。いつものわがままで私は、周りが止めるのも聞かず、高いヒールにゴテゴテのドレスで騎士の訓練場に行った。王子が剣を振るう姿を一眼みてみたかったからだ。
そんな私が、高いヒールで飛んできた剣を避け切れるはずもなく。見苦しく尻餅をつき、僅かにそれ真横の地面に突き刺さった剣を見て青ざめ気絶。
起きて、心配そうに気遣って覗き込む金髪天使を見て一瞬天国かと思った、その時、走馬灯のように前世の過去を思い出して、また、気絶。
王子は何も悪くないのに、責任を感じた王子はそれから、何度も我が公爵家に訪れるようになった。
が、しかし、過去を思い出した私は、会いたくなかった。会ってこれ以上好きになってしまう事が怖かったのだ。
何とか逃げて、今日まで会う事がなく無事過ごしてきた。今年、学校に入学しても彼は学年が1つ上の為、会う事はなかった。彼から積極的に会おうとすれば会えただろうが、彼はそれをしなかった。やはり、私の事なのど政略結婚の相手としか思ってないのだ。
悲しいけれど、このまま、来年になれば、ヒロインが入学し、2人は結ばれ、私は婚約破棄されるのだから、これでいい。
そう、思っていたのに。こんな所で会うなんて。
私は、その日はたまたま授業後に、講師から声をかけられ、マナーの授業では私は完璧なので、来年からは講師の先生がいない時はかわりとして、講師をしてくれないかと頼まれていた。学友達は先に行ってもらっていた、為、友達の後ろに隠れる事もできない。
私は俯いて、小走りで横をドキドキしながら通り過ぎる。
瞬間、ドンッと正面から走ってきた誰かとぶつかって、後ろへこけると、思ったが。
ふわっと、バラの香りと共にがっしりとした腕に包まれていた。
その、香りで自分が誰に、抱きしめられているのか分かってしまうから、振り向けない。
「ローズ、大丈夫かい?」
声変わりか王子は少し声が、掠れていた。
久しぶりに耳元で聞いたらその、声にわたしは石のように動けなくなってしまう。
「俯いて歩くからだよ?考え事でもしてたの?」
掠れて甘い声が、また耳元でささやく。私の顔は真っ赤だとおもう。顔が熱い。
でも、王子は、はなしてくれなくて、それどころか、ギュと離れないようにきつく抱きしめられ、もう、気絶しそうだ。
そんな私を現実に引き戻すような、キンキンと耳につく声が目の前からした。
「ローズさん、ひどい!痛いです。私が平民だからと言って、わざと、ぶつからなくてもいいじゃないですか。」
ショッキングピンクの髪のソバカスの少女はそう言ってわめいていた。
え、ヒロインは、来年入学では?ん?
「君こそ、ローズを狙ってわざとぶつかったように見えたけど?しかし、彼女を名前で呼ぶなんて君は彼女の友達かい?そうでないなら不敬になるよ。いくら学校では、身分関係なくとはいえ、限度があるからね」
氷のように冷たい声がすぐ後ろから聞こえた。こんなに、冷たい王子の声を私は聞いた事がない。
「レオン、違う、違います!私は!」
彼女は必死で言い募る。レオン?呼び捨て?いくらなんでも。
「僕は君に名前で呼ばれる覚えはないのだけれど?ここが学校でなければ、君は不敬罪で捕らえられてるよ。それに、僕の婚約者に誤解されたくないからやめてくれないか?」
そう言って、王子はますます、私を強く抱きしめ、私の髪にキスをする。
もう、ダメ、気絶する。
そして、私は人生何度目かの気絶をした。
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