第8話ほな!
「くっ!あの時と同じだぜ!」
「ああ、体が動かない!」
「余も動くことが出来ぬ。間違いない。あの『神』と名乗っていた女であろう」
「あ、本当だ。僕も動けない。すげー」
「いやいや、君ねえ。すげーとか言ってる場合ちゃうで」
「体動けないけど『会話』出来るんですね?」
「ごほん。その辺はあれだ。『神』だから気を利かしておるのだろう」
そして地上に降り立つ美しいあの『神』と名乗っていた女。魔王と勇者たちと異世界転生者を前にして口を開く。
「そのものが私の言っていた『とてつもない力を持つもの』です。正確には『これからとてつもない力を持つもの』です」
「え?僕が?やっぱりぃ!やったー!その『チート』能力をあなたがくれるんですよねえー。『神』様なんですよね?いや『女神』様ですよね。美しい方ですねー」
「まずは魔王。あなたは私の言葉を信じ、これまでよくこの勇者たちと協力しようと頑張りました。それは褒めましょう。『えらい!』」
「(え?)」
ちょっと違和感を覚えている違う意味でも固まっている魔王と勇者たちに構わず続ける『神』と名乗る女。
「それにこの短期間で勇者たちを成長させようと頑張りました。『えらい!』」
あー、そういうキャラ設定なのねー、と思う転生者。そのまま続ける『神』と名乗る女。
「そして私の言うことを信じ、勇者たちを成長させ、また、『チート』、『無双』、『俺つえええ』、『ハーレム』、『ざまあ』の意味も知りましたね。『えらい!褒めてつかわすぞよ!』。ただし…」
そう言って『神』と名乗る女が女賢者の方に顔を向け、厳しい表情を見せる。
「そこのあなた!先ほど『盛ってんじゃね?』と言いましたか?しかも『あの女』とも」
「え?あたし?いや…、言って…ないよなあ…。なあ?」
急に振られた勇者が言う。
「え?えーと、あのですねえ。うーん、ちょっとバタバタしてましたのであんまり覚えてないです。すいません」
「そちらの方は?」
「え?わい?ええええーーと。勇者と同じくです。すいません」
僧侶もとりあえずごまかせと思いながら言う。
「そちらの方は?」
「あ、あああ、なんか言ってたかなあー?『持ってる』って言ってた気がしたような。でしょー?」
「そうそう!あの人、持ってるねえー、生まれ持った才能かなあーって意味だよー」
女戦士と女賢者が苦しい言い訳をする。
「いや、僕には『盛ってる』って聞こえましたね。大袈裟的な感じ?」
「ですよね?私は『神』です。嘘は通じません。それにこの転生者に『とてつもない力』を与えるのも私の役割なのです」
「ふん。どちらにしろそういう展開も余は予想しておった」
「嘘つけえ!後出しじゃんけんなら誰でも言えんだよ!このムッツリがあ!」
「だからそういうのは二千年前にだな」
「で?『女神』様!いな、美しい『女神』様ぁ!僕にはどんな『チート』能力をいただけるのでしょうか?」
ワクワクしながら『神』と名乗る女に固まったまま尋ねる『とてつもない力を持つもの』と思われていたもの。
「そなたにはありとあらゆる『チート』を授けましょう。そうですね。あなたはこの世界へ来る前にいろんな『チート』能力を見てきたと思います。特別に今回は例え『ご都合主義』なものであろうとそなたにすべてを授けます」
「やったー!本当ですか?『女神』様?」
「本当です。ではさらばです。『ほな!』」
え?と思う魔王と勇者たち。そして喜んでいる転生者。『神』と名乗る女はそのまま空に浮かんでいき、
「皆さんの戦いを天界から見守っています。『ほな!』」
体の自由を取り戻す魔王と勇者たち、そして『とてつもない力を持つもの』になった転生者。
「えーと。じゃあ、とりあえず試してみますね」
『神』と名乗る女の力で『とてつもない力を持つもの』となった男がこれから『とてつもない力』を見せつける。
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