女の子が血を分け与えるお話とその後のお話

音夢威(ので起こさないでください)

1. 緊急通報の仕方は知っていて損は無い、出来れば使いたくないけど

 それは私、溟路 美唄うみみつ みうた夏花ひまわり高校に初めて登校する朝であった。これから始まる新たな生活に胸を膨らませながら、友人はこれから出来るだろうかという不安をも感じる期待感と不安感のごちゃ混ぜになる通学路。


「………………!?」


 分からない、私は何が起こったのか咄嗟には理解がつかなかった。目の前を歩いていた私とを着た少女に、向こうから走ってきた男がぶつかった。それと同時に何か赤く少し黒い液体が地面にポタポタと垂れるのが見えた。

少女が力なく崩れると男は嗤って少し離れる。

男の手は赤く染まりその手には銀色の輝きを紅い色に変化させた包丁凶器がチラついていた。そしてうずくまる少女の生命を刈り取るべく腕をおおきく振り上げた。


「何をしているッ!!!!!お前!!!やめろぉ!!!!!」


 その怒声に私は現実に戻ってきた。近くにいたガタイのいい男達がその男通り魔を取り押さえるのが見えた。

私は弾かれるように少女のもとへ向かうと声を掛ける。


「だいじょうぶ……!?いま救急車を呼ぶから……っ!」


 一生涯使うことは無いと思っていた緊急通報のボタンから119を叩くと泣きそうになりながら応答を待った。


『火事ですか?救急ですか?』

「救急車をおねがいします……っ!夏花高校前で女の子が刺されました……っ!」

『わかりました。直ぐに救急車を向かわせます。あなたの名前と今お使いの電話番号を教えてください。』

「溟路美唄です……っ!番号は070695342※6です……っ!」

『あなたは大丈夫ですか?危険が無いよう気をつけてください。』

「わかりました……っ!」


 改めて少女を見る。腹部から溢れる血が恐らく下ろしたての新しい制服を現在進行形で赤く染めていく。少しでも出血を抑えれればと私はブラウスの袖を伸ばし少女の傷口に押し当てた。


「だいじょうぶ……!救急車呼んだから……!すぐ来るから……!がんばって……!」


 少女を膝枕するような体勢で傷口を抑え必死に励まし続ける。救急車が来るまでの数分が久遠の時間に感じる。



警察と救急が現場に到着し、私は救急隊員に少女を引継ぐ。


「出血の量が多い……緊急輸血が必要だが……この子の血液型は……どなたかRh陰性型の血液の方はいらっしゃいませんか!?」


 吃驚おどろいた。だって、私Rh陰性型だもの。ここまでしたなら最後まで付き合わなきゃ嘘よね。


「私、Rh陰性型です。良ければ使ってください!」

「……っ、ありがとうございます。ご協力感謝します。」


私は救急車に乗り込み一緒に病院へと向かったのであった。

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